2ー3
「ストラ様、お茶をお持ちしました」
アインは丁寧にテーブルを片づけるとカップに角砂糖を二つ添える。
ストラは横目でそれを見て「ご苦労」とだけ呟いた。
アインがいきなり現れてから一週間。
彼女は従者の承諾を得ることをすっかり諦めて、毎日身の回りの世話をしだすようになった。まあ、不便ではないが納得がいかない。
仕事とはいえど、相手にされなければ城へ帰るかと思っていたが、そうはならないらしい。
父上は昔よりも厳しい方になってしまったか?俺が必要ないというのだから要らないだけなのだが…。
「また、御用がありましたらなんなりとお申しつけを」
世話役には慣れているらしい。動きが的確だし、目障りな感じもない。
肩から剣を掛けているのは、彼女が戦える証拠なのだろうか?
「おい」
「なんでしょうか」
「お前は戦えるのか?」
アインは小さく礼をして「少しだけではありますが…」と答える。魔族ではないから魔法は使えないのだろう。不便なものだ、とストラは頷くだけして また本に目を落とした。
薄暗く、埃っぽい書庫からアインが出ていくとストラは大きくため息をついた。
「おかしいぞ」
これは望まぬ主従関係ができてしまった。
ある本にあった。仲良くなるためにはたくさん話をするのが良い、と。初日に戦争と自らが理想とする主従について語ったのだが、話に乗ってもらえなかった。
自論を持つことは良いとも本で読んだはずなのだ。