生ものには注意
 長居史奈はスーパーでバイトをしている為か生もの特に海鮮ものの新鮮さにはよく気がつく。それで家族で買いものに行ってもだ。
 母よりも気付いてだ、こう家族に言うのが常だ。
「こっちの秋刀魚の方がいいから」
「新鮮なのね」
「そう、だから買うならね」 
 こう母に言うのだった、この時はスーパーで秋刀魚を買おうとしていたが史奈が目利き役になっている。
「こっちの秋刀魚よ、あとね」
「他の秋刀魚も」
「選んでいい?」
「ええ、じゃあね」 
 史奈が言うならとだ、母もだ。
 史奈の言う魚を選んで買った、とかく史奈は魚の新鮮さを見極める目ははっきりしている。それでだった。 
 所属しているテニス部の部活の合宿の昼食の時にバーベキューを焼いている時にだ、ここでも魚達を見て言った。
「ちょっと火を通した方がいいわね」
「バーベキューにしても」
「焼くにしてもなのね」
「少しね」
 然程ではないにしてもというのだ。
「古いから」
「別にそうは思わないけれど」
「鮮度が落ちてるっていうのね」
「そうなのね」
「だから生焼け状態だと」
 その状態で食べると、というのだ。
「危ないわよ、この魚介類は」
「食中毒になったら怖いし」
「特に今の季節はね」
「それじゃあね」
「史奈ちゃんの言う通りにね」
「よく火を通して」
「それで食べましょう」
 こう話して実際にだ、皆バーベキューの魚介類は念入りに火を通してそれから食べた。すると誰も食中毒にならなかった。
 史奈は少しでも鮮度が落ちた魚介類はよく火を通していて生ものは極めて新鮮なものだけ食べている。
 その彼女にだ、史奈が母の実家で海沿いの街に来た時に従妹の娘が聞いてきた。
「お姉ちゃんってお刺身も好きよね」
「ええ、好きか嫌いかっていうと」
 どうかとだ、史奈も答える。二人で夕食後に縁側で西瓜を食べて涼みながらこうした話をしているのだ。
「好きよ」
「冷奴も好きでね」
「お刺身もね。お素麺程じゃないけれど」
 それでもというのだ。
「好きなのは事実よ」
「それでかなり新鮮じゃないと」
「食べないわ」
 実際にというのだ。
「それでね」
「それで?」
「他のお魚もね」 
 刺身で食べる以外もとだ、史奈は従妹に話した。
「新鮮かどうかをね」
「見てるわよね」
「それで少しでも鮮度が落ちると」
 その時はというのだ。
「火を通していて酷いと」
「食べないわね」
「そうしてるの」
 そうだというのだ。
「気をつけてるの」
「どうしてそんなに気をつけてるの」
「いや、実はね」
 西瓜を食べつつだ、史奈は従妹に話した。二人で西瓜を食べながら外に見える星空を見てその輝きも楽しんでいる。
「一回あたったことがあって」
「そうだったの」
「中学校の時ね」
 その時にというのだ。
「ちょっと冷蔵庫に置いておいたお刺身をね」
「食べたの」
「夏に大丈夫と思って」
 そう考えてというのだ。
「食べてそうしてね」
「あたったの」
「それで学校休んで」
「苦しんだのね」
「そうなったから」 
 だからだというのだ。
「私はね」
「お魚の鮮度についてはなのね」
「注意してるの」
「もう二度とあたりたくないから」
「あたるときついから」
 その時はというのだ。
「お腹壊して蕁麻疹出て痒くて腫れもして」
「うわ、そうなるの」
「だからね」
 それでというのだ。
「私はね」
「気をつけてるの」
「そうなの」
 実際にというのだ。
「今もね」
「そんな理由があったの」
「そうだったのよ」
「ううん、だからお姉ちゃんは今も」
「これからもね」
「気をつけていくのね」
「食べもの、特にね」
「お魚のことは」
「そうしてくわ」
「ずっと」
「さもないと」
「またあたるから」
「そうなの、他の食べものも」
 そちらもというのだ。
「気をつけていくわ」
「わかったわ、そのこと」
「西瓜もね」
 今食べているそれもというのだ。
「やっぱりね」
「新鮮さが大事なの」
「そうなの」
 これがというのだ。
「とてもね」
「そうなのね」
「若しもよ」
「古いと」
「西瓜もあたるから」
 そうなるからだというのだ。
「気をつけないとね」
「食べものは何でもなの」
「気をつけるべきよ」
「ううん、そう言われると怖いわね」
 その西瓜を食べつつだ、従妹は史奈に言った。
「食べものも」
「そうよ、あんたもあたりたくないでしょ」
「ええ」
 従妹も答えた。
「そのお話聞いたら」
「あたったら地獄よ」
 史奈は従妹に真顔で話した。
「だからね」
「そこは注意して」
「そうしてね」
「やっていくわ」
 こう言ってそしてだった、史奈は従妹と食べた。そして西瓜を食べるだけでなくだ。史奈は従妹にそっと囁いた。
「お酒飲む?」
「飲んでいいの?」
「私お家では結構飲んでるから」
「お姉ちゃんの家そういうの大丈夫なの」
「こっちでもそうでしょ。というかあんた飲んでないの」
「ううん、そういうのは」
「少しならいいから。ビール飲みましょう」
 笑って従妹を誘った。
「少しね」
「じゃあ」
 従妹は史奈のその言葉に頷いた、そしてビールを一缶飲んだが彼女の家族にも史奈の家族にも何も言われなかった。二人でそちらも楽しんで夜を過ごした。


生ものには注意   完


                   2017・8・29

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