アイドル好き
 日本橋郁美は女の子であるがアイドル好きだ、それでカラオケで歌う曲も携帯の着信音もダウンロードする曲も全部女性アイドルのものだ。
 その彼女にだ、友人達はよくこう言っていた。
「郁美ちゃんってアイドル好きよね」
「それも女の子の」
「色々なグループも知ってるし」
「地下アイドルやろこドルもチェックしてるし」
 地域それぞれのアイドルもというのだ。
「完全にアイドルマニアね」
「本当にアイドル好きね」
「うん、実際ね」
 郁美自身もこう答える、この時彼女は自分の席で雑誌を開いてアイドルのスケジュールをチェックしていた。
「大好きよ」
「何かもう趣味というか生きがい?」
「アイドルのおっかけとか曲聴くのが」
「カラオケだってそうだし」
「女性アイドルばかりだから」
「というか何でそうなったのかしら」
「どうしてかしら」
 好きになった理由を聞かれるとだ、郁美もだった。
 微妙な顔になってだ、こう友人達に答えた。
「どうもね」
「自分ではわからないの」
「そうなの」
「これがなのよ」
 実際にというのだ。
「わからないの」
「どうしてアイドル好きになったか」
「それはわからないのね」
「そのことは」
「子供の頃から好きだったから」
 そして今もというのだ。
「何か気付いたらというか物心ついたら」
「アイドル好きで」
「それがどうしてかまではわからない」
「そうなのね」
「そうなの、けれど今もね」
 今現在もとだ、アイドルのスケジュールをチェックしつつ言うのだった。
「こうしてね」
「アイドルのこと見てるしね」
「それも真剣に」
「スケジュールまでチェックして」
「それは変わらないわね」 
 こう言ってチェックを続ける郁美だった、だが自分でもどうしてアイドルが好きになったのかが気になった。
 それでだ、家でアイドルもののアニメを観ている時に家事をしている母親に対してこんなことを聞いた。
「私アイドル好きよね」
「女の子のね」
 葉青やも娘の趣味は知っているのでこう返す。
「大好きよね」
「どうしてこうなったのかしら」
 こう聞くのだった。
「お母さん知ってる?」
「知ってるも何も」
「何もって」
「お母さんもそうだし」
「あれっ、そうなの」
「そう、お母さんもね」
 家事をしつつ娘に笑って答えるのだった。
「そうだしね」
「そうだったの」
「今もそうだし」
「じゃあ私がアイドル好きなのは」
「お母さんの影響よ」
 今度ははっきりと言ってきた。
「そうなのよ」
「そうだったの」
「あんたが物心つく前から一緒にアイドルが出てる歌番組観てたしアニメもね」
「今みたいになの」
「そう、観てたから」
 そうしていたからだというのだ。
「アイドル好きなのよ」
「そうだったのね」
「赤ちゃんの頃から見てあんたきゃっきゃって言ってたのよ」 
 そうしてはしゃいでいたというのだ。
「そうだったのよ」
「ううん、じゃあ赤ちゃんの頃から観てて」
「好きだったのよ」
「その頃からアイドル好きだったのね」
 自分で言う郁美だった。
「そうだったのね、私って」
「私よりはしゃいでいたし」
 赤ん坊の頃の郁美はというのだ。
「ダンスとか歌とかね」
「あの衣装も」
 アイドルのステージ衣装、独特の派手さを持つそれもとだ。郁美は自分から言った。
「好きだったのね」
「本当にね」
「ううん、何か」
 母の話を聞いてまた言う郁美だった。
「私のアイドル好きは筋金入りだったのね」
「英才教育ね」
「そうよね」
「もっとも私のアイドル好きはね」
「それはどうしてなの?」
「八十年代だから」
 母が子供の頃はというのだ。
「その時は聖子ちゃんや明菜ちゃんで」
「あの人達の最盛期でなの」
「そう、本当にね」
 それでというのだ。
「観ていて痺れて」
「アイドル好きになって」
「あんたに受け継がれたのよ」
「ううん、アイドル好きも遺伝するのね」
「歴史があってね」
「そのことがわかったわ」
 しみじみとして言った郁美だった。
「私自身ね」
「それで今もよね」
「ええ、わかったからっていってね」
「あんたのアイドル好きは止まらないわね」
「好きになった理由はわかったからそれでいいわ」
 それはそれでというのだ。
「じゃああたらめてね」
「アニメ観てそうしてよね」
「実際のアイドルも観ていくわ」
「それでこそ私の娘よ」
 母はアニメでのアイドルを観続ける娘に笑って言った、アニメのアイドルも派手な衣装を着て歌って踊っていた。そしてそのアニメを観てだった。
 郁美は次の日カラオケボックスでそのアニメの主題歌を歌った、そのうえで一緒にいる友人達にこんなことを言った。
「私がアイドル好きな理由もわかったし」
「いや、お母さんもそうで」
「赤ちゃんの頃から観ているからだったのね」
「それで好きだったのね」
「そうだったのよ、学校で話したけれど」
 それで放課後の今はカラオケボックスで歌っているのだ。
「よくわかったわ、じゃあこのままね」
「アイドル好きの理由はわかった」
「それならそれでよね」
「このまま応援も続けていく」
「そうするのね」
「ええ、アイドル大好きなのは変らないから」
 好きになった理由はわかったがだからといって大好きであることは決して変わることがないというのだ。
「だからね」
「応援していって」
「楽しんでいく」
「そうしていくのね」
「そうしていくわ、じゃあ次に私が歌う曲入れるわね」
 自分の順番の時にというのだ、その曲を入れてだった。
 郁美は友人達と共に笑顔でアイドルのことを楽しんでいった、まさに根っからのアイドル好きとして。


アイドル好き   完


                   2017・9・24

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