ギャル巫女
 新深江友美は肌をわざと日焼けさせて髪の毛は伸ばしたうえで金色に染めそこに赤のメッシュも入れている、メイクは実に派手である。
 所謂ギャル系の外見だが案外身持ちは固くしかもお菓子をはじめとした料理も出来て友人達からの評判はいい、だが。
 今友美が話したことについてへだ、その友人達は全員驚いて言った。
「えっ、あんたが巫女さんになるの!?」
「嘘でしょ」
「アルバイトでも」
「そうなるって」
「いや、私部活しないしね」
 友美は外見からは想像出来ない落ち着いた口調で友人達に答えた。
「アルバイトしようって思って」
「それで神社の巫女さんのアルバイト募集したら」
「採用されたの」
「そうなの」
「その格好で」
「そう、この格好で面接に行ったけれど」
 ギャルそのもののそれでだ。
「見事採用されたの」
「友美ちゃんの内面見て?」
「友美ちゃん外見はこうだけれど中身はいいからね」
「結構真面目で身持ち固いし」
「普通の娘よりもむしろだから」
 それならとだ、友人達も頷いた。
 だがここでだ、こうも言った彼女達だった。
「けれどね」
「その外見でだからね」
「友美ちゃんの場合は」
「それで巫女さんに採用されるって」
「ちょっと有り得ないけれど」
「まあね、けれど今日からね」
 早速というのだ。
「アルバイトに入るから」
「その神社でなのね」
「そうなるのね」
「そう、アルバイト頑張るから」
 言う言葉は至って普通の感じだった。
「そうするからね」
「本当によく採用されたわね」
「ガングロ金髪にそのメイクで」
「本当に」
 友人達はどうにもという顔で言う、だが友美が巫女になったのは事実で学校の帰りにその神社に入ってだった。
 すぐに巫女の服に着替えた、すると若い神主さんが友美に笑顔で言った。
「じゃあ今から宜しく頼むよ」
「どんなお仕事ですか?」
「それはね」
 神主さんは友美に巫女の仕事を細かく話した、それは主に雑用であり友美も聞いて仕事の内容を細かくメモをしてから言った。
「じゃあメモしましたし」
「メモを見ながらね」
「やらせてもらいます」
「そうしてね、お掃除が一番多いね」
「そうですね」 
 メモを見ると神社の何処を掃除してくれだのそうした話ばかりだった。
「見れば」
「半分そうだね」
「神社のお仕事はお掃除ですか」
「うちは広いからね」
「余計にですか」
「うん、お掃除の人手が欲しくてね」
 それでとだ、神主さんは友美に話した。
「新深江さんに来てもらったんだ」
「そうだったんですか」
「そうだよ、だからね」
「メインはお掃除ですね」
「それで宜しく頼むよ」
「わかりました」
 友美は神主さんの言葉に素直に頷いて神社の境内の掃除をはじめた。アルバイトをはじめたその日にだった。
 神社にお参りに来たおばさんにだ、いきなり言われた。
「うわ、派手な巫女さんだね」
「はじめまして」
 友美はそのおばさんに境内を掃きつつ笑顔で応えた。
「アルバイトに雇ってもらいました」
「そうなのかい」
「はい、宜しくお願いしますね」
「ふうん、派手な外見だけれど」
 それでもとだ、おばさんは友美と話してすぐに気付いた。
「礼儀正しいし真面目な娘だね」
「そうですか?」
「うん、あたし毎日この時間に参拝してるからね」 
 この神社にというのだ。
「だからね」
「これからもですね」
「宜しくね」
「こちらこそお願いします」
 友美はおばさんと笑顔で挨拶を交えさせた、そして境内に遊びに来た子供達、女の子達とも仲良くなってだった。
 何かと話した、子供達は友美にこう言うのだった。
「友美さんっていい巫女さんですね」
「明るくて真面目で」
「私達に色々教えてくれて」
「外見は派手なんですけれど」
「うん、ファッションはね」
 それはとだ、友美はその派手な外見で話した。
「好きだからしてるの」
「ガングロ、パツキンにメッシュ入れて」
「メイクも派手にしてるんですか」
「派手な風にしたくて」 
 それでというのだ。
「こうしたの」
「そうなんですね」
「お好きだからその格好ですか」
「けれど外見に似合わず真面目ですよね」
「礼儀正しくて」
「そこはね、お母さんは外見は派手でも」
 それでもとだ、友美の母は実際に彼女に言ったのだ。
「中身はしっかりしなさいってね」
「そう言われたんですか、友美さんに」
「そうだったんですか」
「それで友美さんはですか」
「真面目なんですか」
「それで礼儀正しいんですね」
「そこはお母さん厳しかったから」
 だからだというのだ。
「私もそうなの」
「ううん、凄いギャップですね」
「ガングロキンパツですし」
「アクセサリーも一杯ですし」
 見ればネックレスにイヤリングにブレスレットと実に派手だ、指には指輪があるがピアスはしていない。
「それでもなんですね」
「内面は真面目に」
「お母さんに言われてるんですか」
「お母さん厳しくて怖いから」
 このことは少し苦笑いで言う友美だった。
「お祖母ちゃんもそうだしお姉ちゃんもね」
「だからなんですね」
「友美さん外見はそうでも中身はですか」
「真面目なんですね」
「そう躾けられたの」
 こう話すのだった、とにかく友美は外見は派手であったが内面は真面目で礼儀正しくまさに巫女に相応しかった、それでだった。
 神主もだ、友美に笑顔でこう言った。
「いや、友美ちゃんの性格を見てね」
「採用してくれたんですね」
「人は外見で判断するなっていうし」
 この言葉もあってというのだ。
「そうしたんだ」
「そうでしたか」
「そして採用してね」
「よかったですか」
「そう思うよ、ただね」
「ただ?」
「ここによく来る子供達が言ってたけれど」
 友美と仲のいい彼女達からだ。
「友美ちゃんお母さんとお祖母さんに躾けられたんだよね」
「はい、そういうのには厳しくて」
「それでなんだ」
「こうした性格になったと思います」
「その外見はファッションだね」
「それは好きにしていいって言われて」
 それでというのだ。
「中身はです」
「あくまでなんだ」
「真面目にしろって言われてまして」
 そうして躾けられてというのだ。
「こうした性格になったと思います」
「そうなんだね、どんなお母さんなのかな」
「普通のお家ですよ」
「普通の?」
「はい、本当に」
「どんな普通のお家かな、よく見たら爪は奇麗だし」
 ネイルアートはしていない、見れば。
「一体」
「これは家事とかの時邪魔なんで」
「お家じゃ家事もするんだ」
「お料理とか。お母さんとお祖母ちゃんに教えてもらってます」
「本当にどんなお母さんとお祖母さんなのかな」
 神主さんはこのことがどうにもわからなかった、だがこの時はこれ以上聞かなかった。
 友美は学校でもそのメイクで制服も派手な感じで着こなしている、スカートはかなり短く折っていてスタイルのよさも目立つ。
 その格好で雑誌を読んでいるがその雑誌はというと。
「料理雑誌読んでるの」
「ひょっとして友美ちゃんのお母さんのお料理出てるの?」
「そうなの、それで読んでるの」
 友美もこう答えた、友人達に顔を向けて。
「こうしてね」
「そうなのね」
「友美ちゃんのお母さん料理研究家だからね」
「時々東京にも出て雑誌に出るお料理作ってるしね」
「それでその雑誌にもなのね」
「作ってるの、お祖母ちゃんも食べものの家だしね」
 そちらの生まれだというのだ。
「うちもね」
「そのお祖父さんが居酒屋の旦那さんでね」
「お家も昔からの居酒屋で」
「それでよね」
「色々厳しいのよね」
「ファッションは何も言わないけれど」
 それでもというのだ。
「居酒屋って接客でしょ」
「そうそう、礼儀正しくないとね」
「それで真面目なところは真面目でないと」
「やっていけないわね」
「私もお店に入ったら」
 普段は違うがというのだ。
「髪の毛まとめて三角巾付けてね」
「アクセサリーも全部取って」
「そうしてるわね」
「邪魔だし衛生のこともあるから」
 家の仕事の時はというのだ。
「そうしてるの」
「それで躾も厳しいのよね」
「結構大きな居酒屋さんだしね」
「しかも繁盛してる」
「しっかりしたお店だから」
 友美の家が経営している居酒屋はというのだ。
「だからね」
「実は礼儀正しい」
「そういうことね」
「真面目で」
「そうなの。しっかりしないと」
 それこそというのだ。
「お母さんに怒られるわ」
「あの厳しいお母さんに」
「そうされるのね」
「お祖母さんにも」
「そうなの、自由なところは自由でいいけれど」
 その母の言葉だ。
「締めるところは徹底的に締める」
「例えギャルな外見でも」
「そういうことよね」
「そうなの、私もそれでいいと思うしね」
 友美自身もというのだ。
「アルバイトもしていってね」
「このままでっていうのね」
「やっていくのね」
「そのつもりよ」
 笑顔で言う友美だった、そのうえでだった。
 ギャルメイクのままアルバイトを続けていき学校での生活を楽しんだ、外見は確かに派手だが中身は全く違うままで。


ギャル巫女   完


                   2017・9・27

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