三本尻尾の力
 阿倍野狐は大阪二十六戦士の一人、狐なので性格には一匹である。安倍晴明の母親であった狐の妹の子孫であり妖力を備えている。
 だが普段の彼は人間に化けて普通に大阪市長を助けて大阪の交通安全特に子供達のそれに目を光らせていて悪戯も楽しんでいる、そんな狐であるが。
 人間に化けて、とはいっても細長く髭も狐のそれの彼に対してだ、大阪の市民達はよく笑って言っていた。
「あんたも頑張ってるね」
「今日もきつねうどん食べてか」
「また元気にだな」
「交通安全守るんだな」
「そうするさ」
 笑顔でだ、狐も彼等に答える。大阪のある商店街の食堂に入ってそうしてそこの美味いきつねうどんを食べながら。
「やっぱりおいらはな」
「きつねうどん食べてだよな」
「それで子供達の安全を守るんだな」
「特に交通安全を」
「それをな」
「そうさ、子供なくしてどうするんだよ」
 それこそと言う狐だった。
「子供は国の、当然大阪の宝だよ」
「その通りだよな」
「子供が大人になっていくんだからな」
「子供が無事でしっかりしてこそな」
「大阪もよくなるよな」
「まずはそこからだな」
「おいら力はないさ」
 このことは狐自身がよくわかっている、今の彼の外見はひょろ長いスーツ姿だがどう見ても腕っぷしはない。
「喧嘩はからっきしだよ、けれどな」
「三本尻尾だからな」
「それだけの妖力があるよな」
「九本尻尾程じゃないにしても」
「それでもだよな」
「そうだよ、だからな」
 それなりの妖力があるからだというのだ。
「その妖力を使ってな」
「子供達を護ってくれるか」
「特に交通安全だな」
「そっちをだな」
「そうさ、おいらがいるところは任せてくれ」
 まさにそこではというのだ。
「子供達を護らせてもらうさ、悪い奴等にもな」
「手出しはさせないんだな」
「悪い奴等が出て来ても」
「力がなくても」
「そうするな、勇気はあるんだ」
 例え力はなくとも、というのだ。
「だからな」
「ああ、じゃあ頑張ってくれよ」
「大阪も色々あるけれどな」
「あんたにしてもな」
「そうさせてもらうさ、市長さんも頑張ってるんだ」
 大阪の為に身を粉にして心を砕いて働き戦っているこの人もというのだ。
「大阪二十六戦士の皆も。だったらな」
「あんたもだよな」
「どんどん戦って」
「そして子供達も護る」
「そうするんだな」
「それをやっていくよ」
 大好物のきつねうどんを食べつつだ、狐は大阪の市民達に約束した。そして実際にいつも大阪の街を見回ってだった。
 子供達を悪い奴からそして特に交通事故から護っていた、ある日狐がいつもの朝のパトロール、登校中の子供達の無事を護るそれの時にだ。
 見回っていると不意にだ、小学校の正門に向かって不審な車が向かっていた。
「あれは!?」
「!?あのタンクローラーは」
 子供達の交通、信号のところで旗を持ってそれを守っていたボランティアのお爺さんも思わず声をあげた。
「動きがおかしいぞ」
「まさか」
 お爺さんの隣にいる狐も言う、今は三本尻尾の本来の姿で服はこうした時の神主の服で頭にも冠がある。
「居眠り!?」
「だとしたらまずい、あんなのが学校の中に突っ込んだら」
「子供達が轢かれる!それだけじゃない!」
 狐はさらに言った。
「転倒でもしてオイルに引火したら」
「大爆発を起こすぞ!」
「小学校はどうなるんだ!」
「これは大変だ!」
「よし、こうした時こそ!」
 まさにとだ、狐は印を結んでだった。
 そこから即座にだ、妖術を繰り出してだった。
 彼はすぐにだ、その妖術でタンクローラーを停めた。ここで運転手も何とか目を覚ましてことなきを得た。
 狐の妖術で大きなタンクローラーは道路のところで停まって事故にはならず誰も怪我もしなかった。まさに彼の功績だった。
 しかし彼はこのことについてだ、商店街を共に歩く大阪の市民達に対して明るいがこう言うだけだった。
「いや、子供達が助かってね」
「よかった」
「そう言うんだな、あんたは」
「あんたが助けたんじゃなくて」
「子供達が助かった」
「そのことがよかったって言うんだな」
「そうだよ、本当によかったよ」
 あの時のことを思い出して胸を撫で下ろしているのが顔にも出ていた。
「一時はどうなるかって思ったからね」
「だからか」
「心からそう思うからか」
「それでいい」
「あんたが助けたって誇らないんだな」
「誇ってどうするんだよ」
 それがと返す狐だった。
「おいらは大阪を護る戦士なんだよ、だったらな」
「これは当然のことでか」
「誇らずにかい」
「その三本尻尾の力でこれからもか」
「子供達を護っていくのかい」
「そうさ、それがおいらのやるべきことだからな」
 大阪二十六戦士の一匹だからこそというのだ。
「これからもな」
「やっていくか」
「流石は大阪二十六戦士の中にいるだけあるな」
「あんた凄いよ」
「立派だよ」
「立派じゃなくて当然なんだよ」
 やはりこう返す狐だった。
「若しあそこでおいらが何も出来なかったらな」
「その時はな」
「考えるだけでも怖いな」
「タンクローラーの運転手さんもびびってるしな」
「ついつい居眠りをして、って」
「何もなくてよかったよ」
 また心から言う狐だった。
「じゃあまたこうしたことがあったらな」
「妖術を使ってか」
「子供達を助ける」
「そうするんだな」
「ああ、そうするさ。じゃあ今からな」
 ここまで話して笑顔になった狐だった。
「和菓子屋さん行ってな」
「和菓子買って食うか」
「そうするんだな」
「うちのかみさんと息子の分もな」
 自分だけでなくというのだ。
「買ってな」
「そうしてか」
「家族で和菓子食って楽しむか」
「そうするんだな」
「ああ、たまにはそうしないとな」
 笑顔でこうも言う狐だった。
「家族なんだからな」
「そうだな、じゃあそっちも頑張りなよ」
「お父さんの仕事もな」
「そっちの方もな」
「そうするな」
 狐は商店街を共に歩く大阪の市民達に笑顔で応えた、そうして彼の馴染みの店の一つである老舗の和菓子屋に行ってだった。美味い和菓子をしこたま買って家に帰った。そのうえで家族で和菓子を楽しんだ、大勢の子供達と運転手を救ってほっとした後で。


三本尻尾の力   完


                   2017・12・23

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