野球をしてみた
 西淀川猛虎の武器はバットだ、そしてそのバットで大阪を護っている。
 そのバッドでの素振りと練習は欠かさない、そのうえで大阪の街を護っている。その彼に大阪の市民達は尋ねることがあった。
「打率何割なんや?」
「ホームラン何本打てるんや?」
「打点がどれ位や?」
「いや、わしは野球はな」
 阪神のユニフォームを着ているがだ、猛虎は大阪市民達に答えた。
「せんからな」
「あっ、そうなんか」
「野球はせえへんのか」
「そういえば猛虎さん戦士やしな」
「戦う人であってな」
「野球選手やないな」
「そやからな」
 それでとだ、猛虎自身も答えた。
「野球をするかどうかは」
「せんか」
「そやねんな」
「ほな打率とかホームランとかもか」
「打点も」
「実は考えたこともないわ」
 そうだというのだ。
「これがな」
「そやねんな」
「ほな実際に野球してもか」
「実はあかんとか」
「そうかも知れんか」
「どやろな、やってみんとな」
 そこはとだ、猛虎は大阪市民達に答えた。今彼等は西淀川区の居酒屋にいてそこで飲み食いをしつつ話している。
「わからんわ」
「ほな実際やってみるか?」
「バットはいつも持ってるしな」
「阪神のユニフォームも着てるし」
「そうしてみるか」
「実際にな」
 猛虎も面白そうだと思って市民達に応えた、そしてだった。
 彼は次の日大阪市にあるある球場に入ってそこで実際に野球をすることにしてみた。協力は大阪市民達が愛する阪神タイガースの選手達だった。
「わざわざすいません」
「甲子園から来てもらって」
「ほなよろしゅう頼みます」
「猛虎さんの野球の相手して下さい」
「今はシーズンオフやしええですよ」
 阪神の監督は市民達に気さくな笑顔で答えてくれた。
「ファンの人達との交流喜んで、しかも」
「しかも?」
「しかもっていいますと」
「大阪の人達にはいつも応援してもらってますし」
 それで恩義があるからだというのだ。
「猛虎さんはいつもその大阪の人達を護ってくれてますし」
「そやからですか」
「今回喜んで協力してくれますか」
「猛虎さんの野球の腕がどんなのか」
「そうしてくれますか」
「はい、ほな今からやらせてもらいます」
 監督はチームを代表して言った。
「これから」
「よろしゅう頼みます」
 猛虎自身も監督にこう言った、そのうえで猛虎の野球の腕前がどんなものかを阪神の選手達が相手をして確かめることになった。
 するとだ、猛虎は。
 何とマッハ三の剛速球を何百球も投げ変化球は大小合わせて五十種類も投げられて打つとこれがだった。 
 打率十割、しかも全ての打球が数キロメートルの飛距離を見せた。監督もこれには驚いてこう言った。
「凄いなんてもんやないです」
「こんなに凄いなんて」
「流石大阪を護る戦士ですね」
「いや、凄いですわ」
「わし等も驚きました」
「もう人間の能力ちゃいますで」
「超人ですわ」
「大阪二十六戦士の力はこれだけですか」
 監督だけでなく市民達も驚くばかりだった、それでだった。
 監督は思わずだ、猛虎にスカウトをかけてしまった。
「あの、よかったら阪神に」
「入団してですか」
「阪神優勝させてくれますか?」
 こう言ってスカウトをかけるのだった。
「ここは」
「有り難い申し出ですが」
 猛虎は自分をスカウトした監督に申し訳なさそうに答えた。
「それは出来ません」
「大阪を護る戦士やからですか」
「はい」
 その通りという返事であった。
「そうですさかい」
「阪神の為には戦えませんか」
「これからも大阪を護る為に戦います」
 それが猛虎の、大阪二十六戦士の務めだというのだ。
「そうしていきます」
「そうですか、ほな」
「はい、阪神はお任せします」
 監督、そして選手達にというのだ。
「わしは大阪を護って」
「阪神を応援してくれる人達も」
「そうしていきますから」
「わかりました、ほな今年こそは」
「阪神を日本一に」
「しますわ」
 監督は猛虎に熱い声で約束した、そうしてだった。
 猛虎が先に手を差し出してだった、彼と監督は熱い握手をした。そうして阪神タイガースは日本一になる為に猛練習を行いに甲子園に戻って行った。
 猛虎は残った大阪市民達にその手にあるバットを掲げて誓った。
「これからも大阪の為に戦うで」
「頼むで!」
「やっぱり猛虎さんは戦士やしな」
「大阪の為に戦ってな」
「そのバットで」
「そうしてな」
「ああ、そうするで」
 このことを約束する猛虎だった、そうしてこの日も大阪を護ることを誓うのだった。だが阪神の試合についてはこう言った。
「今日もええな」
「そやな」
「巨人フルボッコにしてるわ」
「一回で十五点取ったわ」
「今日も圧勝や」
「そうなるわ」
「そや、阪神に負けん様にわしも頑張るで」
 同じ虎として笑顔で言っていた、彼は戦士であると共に阪神を愛する大阪市民でもあった。


野球をしてみた   完


                  2018・1・21

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