派手な水着は
 まだ三学期だ、しかし八尾彩は友人達にこう言われた。
「新しい水着買いに行かない?」
「今年の水着ね」
「百貨店にでも行って」
「そうしない?」
「水着ってまだ春になったかどうかよ」
 彩は友人達の言葉に眉を顰めさせて返した。
「寒いじゃない」
「いや、夏近くになったら高いし」
「今は買う人少ないから安いの」
「安売りもしてるし」
「だからなのよ」
 季節でないのでかえって安いというのだ。
「それで言ってるのよ」
「いいお店見付けたし」
「そこに行ってね」
「水着探しましょう」
 それで買おうというのだ、そう言われてだった。
 彩のだ、少し考えてから友人達に答えた。
「それじゃあね」
「ええ、買いに行くわね」
「百貨店に行って」
「そうするのね」
「そうするわ」
 皆と一緒にとだ、こう答えてだった。
 彩も水着を買いに行くことにした、それで春休みのある日部活が終わってから友人達と一緒に百貨店の中にあるその店に行った。
 するとだ、実に色々な水着が安く売っていた。まりかもその水着達を見て言った。
「確かに安いわね」
「そうでしょ」
「今の時期は水着も安いのよ」
「特にこのお店はね」
「殆ど半額で売ってるのよ」
「だからお買い得なの」
「そうよね、じゃあ今からね」
 彩は友人達の言葉に頷いてそうしてだった。
 皆と一緒に水着を選びに入った、だがここで。
 友人達は今は制服姿の彩にこう言った。
「彩ちゃんスタイルいいしね」
「そうそう、胸もお尻も大きいし」
「しかも色白だし」
「色々な水着似合いそうよね」
「それも派手な水着がね」
「派手って。私水着は別に」
 彩は友人達にどうかという顔で返した。
「普通に可愛くて気に入ったのでいいわよ」
「いや、そこは冒険しないと」
「折角スタイルよくて色白だから」
「もうここはね」
「派手な水着選びましょうよ」
「男の子が見て仰天する位の」
「そうしたのをね」
 是非にと言うのだった、そうしてだった。
 普通の赤いワンピースの水着を買おうとしたが。友人の一人が黒ビキニを持って来て言ってきた。見れば下は普通に穿くものではなく紐になっている。
「これ着てみて」
「えっ、それ黒の紐ビキニじゃない」
「試着でいいから」
「そんな派手な水着買わないわよ」
 彩は顔を真っ赤にして言った。
「とても」
「買わなくてもいいから」
「試着だけでもっていうのね」
「してみて」
 彩に無理に言ってだ、そうしてだった。
 その友人は彩を半ば強引に試着室に入れてそうしてだった、彼女にその黒の紐ビキニを着させた。そのビキニ姿を見てだった。
 その友人も他の友人達も唸って言った。
「うわ、これは」
「胸もお尻も大きいからね、彩ちゃん」
「ボン、ボン、ボンって感じで」
 ウエストはあまり引き締まっていないがというのだ。
「何かそのスタイルがかえってね」
「肉感的でいい感じで」
「これはぐっとくるわね」
「女の子でもそそられるわね」
 黒の紐ビキニはというのだ、ここで別の友人が今度は赤いワンピース、それ自体は彩が買おうとしたものと同じだが臍の部分が丸出しで胸も背中も異様に出ているビキニ並に露出のある水着を出してきてだ。
 彩に着てもらった、するとこの水着を着てもだった。
「うわ、彩ちゃんこんなの着てプールかビーチに行ったら」
「もう注目の的よね」
「男の子の目釘付けよ」
「絶対声かける男の子出るわよ」
「それも何人も」
「下手したら襲われそう」
「彩ちゃん強いけれどね」
 そこまで刺激的だというのだ、そしてこれまた別の友人が。
 青い競泳水着を出して彩に着させたがこれもだった。
「体形びっしり出てね」
「露出なくてもエロいわね」
「お尻のところが急に」
「この格好もかなりよ」
「ぐっとくるわね」
「ええ、これもね」
「やばいわね」
 友人達全員で言う、だが。
 肝心の彩は彼女達にむっとした顔で言った。
「だから私はね」
「派手な水着はなのね」
「注目される水着は駄目」
「そうだっていうのね」
「そうよ、ビキニとか派手なワンピースとか競泳水着とか」
 そうした水着は全てというのだ。
「アイドルのグラビアじゃないんだから」
「アウトっていうのね」
「どうしても」
「そうだっていうのね」
「そうよ」
 絶対にと言うのだ。
「どれもね」
「じゃあ普通の水着にするの」
「ワンピースに」
「さっきのにするの」
「そうするわ、まあ冒険してよ」
 それでというのだ。
「ビキニもあるけれど」
「そんな派手じゃないビキニね」
「露出少なめの」
「それにするの」
「ええ、というか高校生でビキニってね」
 それこそと言う彩だった。
「あまりいないでしょ」
「いえ、結構いるわよ」
「私今ビキニ選んだし」
「私もよ」
 友人達の反論は彩の予想とは全く違ったものだった。
「結構いいわよ」
「だからね、彩ちゃんもね」
「ビキニ位いいでしょ」
「それ着てみたら?」
「そうしたら?」
「まあビキニ位なら」
 彩も自分で言ったしと思って友人達に応えた。
「いいかしら、それじゃあね」
「水着選ぶのね」
「これから」
「そうするのね」
「ええ、あらためてね」
 こう友人達に答えてだ、彩は自分の水着を本格的に選びはじめた。そうして選んだ水着は一体何だったかというと。
 黄色いビキニでだ、友人達は笑って話した。
「黄色のビキニも多いわよね」
「そうそう、ビキニの中でもね」
「白、黒、赤、青ってあってね」
「黄色も多いわよね」
「アイドルのグラビアでもね」
 さっき彩が言ったこれと、というのだ。
「一緒よね」
「結構以上に多いわよね」
「しかも彩ちゃんが買った黄色のビキニって」
 これ自体もというのだ。
「露出そんなに多くないけど」
「普通のビキニだけれどね」
「ビキニはビキニだから」
「露出が多いことは事実よ」
「水着としてはね」
「下着と同じ位あるじゃない」
「だから冒険したの」
 彩はその黄色のビキニ姿で友人達に言った、試着をした後なのでどの娘もそれぞれが選んだ水着を着ている。
「あえてね、ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「赤いワンピースも買うから」
 そちらの水着もというのだ。
「ちゃんとね」
「そっちもなの」
「買うの」
「そうするの」
「ええ、そうするから」
 こう言うのだった。
「安いからね」
「そうなのね」
「安いって有り難いわよね」
「こうした時もね」
「沢山買えるから」
「そう、じゃあ二着買って」
 水着、それをというのだ。
「それで帰りましょう」
「いや、水着の後もあるわよ」
「たこ焼き食べよう」
「そうしよう」
「ここの屋上のスナックコーナー色々なお店があるじゃない」
 食べものを出す店もだ、所謂喫茶コーナーがあるのだ。
「だからね」
「あそこでたこ焼き買って食べましょう」
「そうしてから帰ればいいじゃない」
「あとあそこでちょっとゲームもして」
「そうしてね」
「ええ、じゃあね」 
 彩も友人達の言葉に頷いた、そうして私服に着替えて水着を買ってだった。
 友人達と共に百貨店の屋上に向かった、そのうえでたこ焼きを食べて少しゲームをしてから家に帰った。


派手な水着は   完


                   2018・3・25

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