深海生物を試食
 フートは資源保護組織探索科の人にある任務を与えられた、その任務は一旦どういったものかというと。
「えっ、今度はですか」
「そうだ、深海生物を片っ端から口にしてだ」
「食べられるものを探せというんですね」
「新資源を探してもらいたい」
 こう言うのだった。
「それが今回の君の任務だ」
「そうですか」
「食料資源の探索は重要だ」
 このことは言うまでもないとだ探索科の人はフートに話した。
「そのことは君もわかっているな」
「はい、食べられるものが多ければ」
 それだけだとだ、フートも答えた。
「人類は沢山そして長く生きられます」
「ジャガイモがそうだな」
「ジャガイモが欧州に入ってですよね」
「人々の腹を満たしてだ」
 その結果だというのだ。
「奥州の人口は増えたのだ」
「食べられる人が増えて」
「食べられることを一つでも多く見付けることだ」
「それが人類を救うことになりますね」
「だからだ、君は今度はだ」
 まさにというのだ。
「いいな、深海生物を片っ端から食べてだ」
「食べられるものをですね」
「探してもらう、美味しい食べ方もな」
「わかりました」
 それならとだ、フートも頷いてこの任務を受けることにした。そうして実際に彼の前にすぐにだった。
 彼がこれまで見たこともない様な深海魚や深海生物が並べられた、彼はその一言で言うとグロテスクな外見の生物達を見て探索科の人に言った。
「どうも」
「凄い外見のものばかりだね」
「はい」
 まさにとだ、彼はその生物達を見つつ探索科の人に話した。
「アンコウも深海魚ですが」
「あれも深海魚だがね」
「普通に食べられているからですね」
「そんなものは出ないよ」
 そうだというのだ。
「君は今回はあくまでね」
「これまで誰も食べたことのない」
「そうしたものを食べてもらうよ」
「凄い形の海老や蟹もいますね」
 それこそ嘘みたいな、誰がこんなものを創造したのかわからない位までのものだ。
「お魚だけでなく」
「ダイオウグソクムシもあるね」
「あの話題の」
 何年も何も食べなかったというその生物もいた。
「これもですか」
「食べてね」
 そしてというのだ。
「食べられるかどうかをね」
「確かめるんですね」
「そうしてね」
 是非にと言うのだった。
「これからね」
「はい、食べさせてもらいます」
「事前に毒のチェックはしているから」
 それはというのだ。
「安心して食べてね」
「毒がある種類もいるんですか」
「いるよ」
 深海生物にもというのだ。
「だからね」
「そうした生物のチェックはですか」
「もうしてあるよ」
「それは有り難いですね」
「うん、河豚やスベスベマンジュウガニみたいなものもいるから」
 こういった生物は猛毒がある、だから下手に食べると死ぬ可能性が極めて高い。このことはフートも知っている。
「だからね」
「事前にですね」
「どけたからね」
「わかりました、それじゃあ」
「うん、安心して食べてね」
 毒はないからだというのだ。
「本当に」
「そうさせてもらいます」
 フートも頷いてそうしてだった。
 彼は食べはじめた、巨大な口を持っていたり目が異様に大きかったり頭に突起物がある魚に幾何学模様を思わせる形の蟹や海老にグソクムシ等をだ。
 生で食べるだけでなく焼いたり煮たり揚げたり鍋にしたりして食べた、そして一通り食べてからだった。
 彼は探索科の人にこう言った。
「殆どがですね」
「まずいかな」
「はい、食べるには」 
 隙好んでそうすることはというのだ。
「どうにも」
「よくないんだね」
「養殖とかは」
「まだ考えていないよ」
 どの種類もとだ、探索科の人は答えた。
「まだね」
「そうですか、この味ですと」
「大抵の種類はだね」
「そのまま出しても」
 市場にだ、そうしてもというのだ。
「売れないと思います」
「そうしたものばかりなんだ」
「外見の悪い海産物は美味しいことは多いですが」
「しかしだね」
「今回はどれもでした」
「食べても美味しくないんだ」
「仲にはとんでもない味のものもありました」
 フートだから食べられるが他の人なら食べられない様なもものもというのだ。
「どうにも」
「そうなんだね」
「はい、ですから」
 それでと言うのだった。
「深海生物は僕がお話するもの以外は」
「普通には食べられないね」
「残念ですがそうなりました」
「わかったよ、今回もお疲れ様」
 食べ終わってすっかり肥満した身体になっているフートにだ、探索科の人は笑顔で労いの言葉を贈った。
「報酬は口座に振り込んでおくからね」
「有り難うございます、たらふく食べさせてもらってお金まで貰えて」
「いや、それはね」
「それは?」
「食べられる美味しいものを見付けてもらっているんだ」
 それならとだ、探索科の人はフートに笑顔で話した。
「これ位のことはね」
「当然のことなんですか」
「だから受け取ってね」
「わかりました、それじゃあ」
「また頼むよ」
「その時も食べさせてもらいます」 
 満面の笑顔でだ、フートは係の人に応えた、そうして凄まじい量の深海生物を凄まじい勢いで食べた結果肥満しきって動きにくくなった身体を苦労して動かしながら家に帰った。美味しいものは殆ど食べられなかったが満足して家に帰ったのだった。


深海生物を試食   完


                    2018・5・21

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