スポーツ推薦の為には
 柴田宙丸はスポーツつまり体育以外の科目は殆ど駄目だ、その為試験ではいつもだ。
「御前またか?」
「また赤点か?」
「そうなのか?」
「そうだよ、二十点台だよ」
 そうだったとだ、宙丸は友人達に答えた。
「この教科もな」
「これで今回の期末何科目赤点だよ」
「三科目位赤点じゃないのか?」
「追試大変だぞ」
「下手したら留年するぞ」
「いや、追試は全部何とかクリアーしてるしな」
 留年の心配はとだ、宙丸は友人達に答えた。
「出席は無遅刻無欠席だしな」
「それで留年はないか」
「その成績でも」
「そうなんだな」
「そうだよ、けれどこれだとな」
 自分でもわかっていて言うことだった、宙丸は友人達に首を傾げさせつつこうも言うのだった。
「進学どうしようか」
「いや、普通の入試じゃ駄目だろ」
「こんなのだとどの大学も合格しないだろ」
「この前の模試で相当低い大学Eだったんだろ?」
「一番レベルが低い様な大学」
「そうだったよ、これじゃあ本当にな」
 また自分から言う宙丸だった。
「進学どうなるだろうな」
「それ先生と相談しろよ」
「御前スポーツあるけれどな」
「それでもこの成績だとな」
「絶対にどうするってなるぞ」
「そうだろうな」
 それは間違いないとだ、宙丸もわかっていた。それで本当に進路のことはどうしたものかと考えていた。
 そんな中で担任の先生にも難しい顔で職員室に呼び出されてこう言われた。
「御前大学進学はな」
「受験ではですか」
「正直無理だぞ」
 はっきりと言われた。
「本当にな」
「そうですよね」
 宙丸もわかっているという返事だった。
「俺の成績だと」
「殆ど追試だからな」
「はい、これで大学に進みたいなら」
「スポーツだ」
 それだというのだ。
「スポーツ推薦だ」
「それしかないですね」
「それで大学行くか?」
 先生は宙丸に真剣な顔で問うた。
「大学行きたいよな」
「はい、やっぱり」
「御前が一番得意なマラソンだとな」
「この前大会で優勝しました」
「これまで結構優勝してるな、だったらな」
「マラソンで、ですか」
「大学に行ける、もうこれならな」
 マラソンでというのだ。
「結構な大学にも行ける、もう決まりだな」
「マラソンでのスポーツ推薦ですか」
「これで大学に行け、ただな」
「ただ?」
「怪我はするなよ」
 先生は宙丸に強い声で告げた。
「いいな」
「怪我はですか」
「ああ、するな」
 絶対にというのだ。
「大学に入ってもな」
「怪我には気をつけていますけれど」
「今以上にだ」
 それこそとだ、先生は宙丸に強い声で言った。
「注意しろ、さもないとな」
「怪我をしたら終わりですか」
「それでな、だからな」
「怪我には気をつけて」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「やっていけ、いいな」
「大学にもいられなくなりますか」
「将来就職してもな」
 やはりマラソンで選手としてそれが出来てもというのだ。
「そうなるからな」
「だからですか」
「身体には気を使えよ」
「怪我をしない様に」
「そこはいいな」
「俺牛乳好きですが」 
 これで身体、具体的には骨をしっかりさせているというのだ。
「それじゃあ駄目ですか」
「まだ足りない、ストレッチもしっかりしてだ」
 身体をほぐすこともというのだ。
「練習の後、そして前にも準備体操をして」
「身体をいつも柔らかくして」
「ウォーミングアップも忘れるなよ、マッサージも受けてな」
 それも忘れずにというのだ。
「食事にも気をつけて」
「食いものもですか」
「やっぱりバランスよく食うとな」
 それでというのだ。
「怪我をしないからな」
「とにかく色々気を付けないといけないですか」
「そうだ、体調管理だ」
 ストレッチも食事もというのだ。
「それは忘れるな、それで怪我をしないでだ」
「やっていくことですね」
「そうしろ、大学に入って終わりじゃないからな」
「わかりました」
 宙丸は先生の言葉に頷いた、そうしてスポーツ推薦で大学進学を決めて両親にも言うと両親も反対せず。
 それでだ、実際にスポーツで有名な大学に入り選手として活躍した。彼は食事にはいつも気をつけて練習前の準備体操と練習跡のストレッチを欠かさずマッサージも定期的に受けた。そうするとだった。
 怪我をせずに大学生活を送ることが出来てオリンピックでもメダルを獲得出来た、それでインタビューの時にメダルを獲得出来た理由を話した。それは大学入試を決めた時に先生に言われたことをそのまま守ったからだと答えた。
「ストレッチも準備体操も忘れないでマッサージも受けて」
「そしてですか」
「はい、そして食事もしっかりと考えて」
 バランスよくというのだ。
「牛乳を飲んで野菜食べて他のものも色々食べて」
「色々ですか」
「身体にいいものを適度にです」
 マラソンという競技や体力のことを考えてというのだ。
「食べることです」
「沢山じゃないんですね」
「あまり食べ過ぎると」
 これは常に満腹ということだ。
「よくないんです」
「それは身体が重くなるからですか」
「このことは自分でわかりました」
 ある日トレーニングの時に気付いたのだ、昼にかなり食べた後で走ってその時は身体がかなり重かったからだ。
 それでだ、その次の日からは宙丸は本格的な練習の前はあえてあまり食べない様にした。広岡達郎監督の頃の西武ライオンズを参考に昼はクラッカーや野菜スティック、トースト等軽食にしてまた炭酸飲料ではなく野菜や果物のジュース、豆乳で水分だけでなくビタミンやカロリーも補給する様にしたのだ。
「ですから練習前は食べ過ぎないで夜遅くも食べない」
「節制ですね」
「まあ食べる時は食べますが」
 朝にそうする様にしているのだ、朝早く起きて練習をした後でだ。
「ですが練習前にはです」
「食べ過ぎない、ですね」
「そうしています」
 まさにというのだ、宙丸はさらに話した。
「そうすればです」
「メダルを獲得出来ますか」
「怪我をしたら終わりですから」
 だからだというのだ。
「本当にです」
「まずはですね」
「怪我をしないことです」
 こう言うのだった、実際に怪我をせずにここまで来ることが出来たが為に。


スポーツ推薦の為には   完


                   2018・8・26

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