性格美人
 持田千香子の外見は顔立ちはともかくそのスタイルを見て世の外見だけで女性を判断している男達からは避けられていた。
「ああ、駄目だ駄目だ」
「アウトだよ」
「デブじゃないか」
「服装もださいしな」
「ああした女はどうでもいいな」
 そうした男達はこう言うか心の中で思って千香子を即座にスルー対象にした、それで千香子は自然とそうした男達とは縁がなかった。
 だが彼女がアルバイトをしているところで一緒に働いている男達は誰もが確かな声で言い切っていた。
「あんないい娘はいないよ」
「しっかりしていてな」
「素朴で優しくて穏やかで」
「今時あんな娘がいるなんてな」
「うちに来てくれてよかったよ」
 そこにいる男達で彼女を嫌う者はいなかった、仕事がしっかりしているだけでなくむしろそれ以上にその性格が好評だった。
 それは女子特に小さい女の子達からは尚更であまりにも人気があってしかも勉学もスポーツも実は能力が高くてだ。
 多少嫉妬を買ってもいた、だがその嫉妬もだ。
 千香子本人に会うとその和やかな雰囲気と優しい性格にほぐされてそれでだった。ついつい彼女に笑顔を向けてしまっていた。
 そんな中でだ、ある友達が他の友人達に言った。
「あの娘って男の子からはもてないのよね」
「ええ、あの外見だとね」
「ちょっと男の子受けはしないわね」
「本人もそんなこと言ってるけれど」
「どうしてもね」
「もてはしないわね」
「そうよね、本人は恋愛に興味あるけれど」
 実際にそうなのだ、千香子も年頃の女の子で恋愛自体には興味があるのだ。だがそれでもその外見故になのだ。
 やはりそういう手の男にはもてない、それは千香子が誘われて出た合コンでも同じことでだ。
 彼女に声をかける軽い感じの男はいなかった、誰もが周りの如何にももてるというスタイルや顔立ち、ファッションの娘達に声をかけてその場だけでもそれから暫くでもカップルになっていた。だが千香子はだった。
 相手が出来ない、それでだった。
 千香子自身もだ、困った顔で言っていた。
「彼氏欲しいのよ」
「そうよね」
「もち子自身もそう思ってるわよね」
 千香子の仇名で呼ぶ子もいた。
「私達も欲しいって思ってるしね」
「いない娘は」
「やっぱりこのスタイルのせいかしら」
 自分でもこう思っていて言うのだった、顔にもそうした感情が出ている。
「太ってるから」
「ううん、それでもね」
「やっぱり女の子も顔だけじゃないでしょ」
「男は顔じゃないっていうけれど」
「勿論スタイルだけじゃない」
「あともち子顔立ち自体は悪くないから」
 見れば実際にだ、穏やかで優しい顔立ちは整っている方で何よりも白い肌はかなりきめ細かく奇麗なものだ。
 それでだ、友人達も言うのだった。
「やっぱりダイエット?」
「痩せてスタイルよくなったら違う?」
「今一六〇センチで六三キロだけれど」
「十キロかそれ位痩せたらね」
「結構違う?」
「そう言われるとやっぱり甘いもの食べないことかしら」
 スイーツ大好きでその誘惑に勝てない自分に困りつつ思ったことだ。
「そうすべきかしら」
「いや、それだけじゃなくて」
「食べてもいいけれど」
「やっぱり運動よ」
「あと食べても九時以降食べない」
「それと間食も控えることでしょ」
 スイーツは食べてもいいがそうしたことを忘れないことだとだ、友人達は悩む千香子にアドバイスをした。
「それで全然違う筈よ」
「後はもち子運動自体は出来るから」
「水泳とかカロリー消費いいわよ」
「身体動かしたら健康にもいいし」
「泳いだりしてみたら?」
「それじゃあね」
 素朴で人の言うことを素直に聞く方である千香子は友人達のアドバイスを受けてだ、実際にしてみようと思った。それでだった。
 千香子はスイーツを食べる時間を変えた、間食を避け食事の後にデザートとして食べる様にして九時以降は食べなくしてだった。
 水泳をはじめた、元々運動神経は結構あり身体を動かすことも嫌いではなかったのですいすいとかなりの距離を毎日泳げてだった。 
 気付けば十キロ以上痩せていた、そして。 
 スタイルはかなりよくなった、すると即座にだった。
 そうした男達が千香子に注目しだした、すると彼女の友人達はこれまでの千香子への心配が一気に変質した。一体どう変質したかというと。
「変な男が見る様になったわね」
「もち子のスタイルよくなったから」
「だからね」
「もう変な目で見る様になって」
「あからさまに狙ってるのもいるし」
「これは危ないわね」
 すぐにこのことを察して言うのだった。
「あの娘まだ恋愛経験ないから」
「いきなり変な奴に引っ掛かるかも」
「そうなったら大変だし」
「いい子紹介しないと」
 こう思ってだ、それでだった。
 彼女達の間で話をしてこれはという相手を千香子に紹介することにした、その彼は外見は冴えないが性格はかなりよかった。
 それでだ、友人達は彼の外見を見てまた心配した。
「性格はいいんだけれどね」
「この外見で大丈夫かしら」
「今のもち子に釣り合う?」
「もち子がいいっていうかしら」
 外見のことから交際になるかどうか不安だった、だがそれでもだった。
 その性格を買って千香子に紹介することを変えなかった、それで二人を合わせて話をさせると。
 千香子は彼と交際することを決めた、その訳を友人達に話したがこうした理由だった。
「性格凄くいいから。とてもいい人だから」
「それでなの」
「あの人と付き合うの」
「そうするのね」
「ええ。あんないい人いないから」
 千香子は痩せても性格は変わっていなかった、もっと言えば喋り方もだ。それで彼の性格を見てだった。
 彼と付き合うことを決めた、そういうことだった。
 その彼女を見てだ、友人達は思った。
「もち子の性格がそのままだとね」
「相手の外見よりも性格よね」
「性格を見て決めるわね」
「じゃあこのことは私達の杞憂だったわね」
「いらぬ心配だったわね」
「悪い男にかかる前にって思ってたけれど」
 このことは成功したがというのだ。
「それでもね」
「そうね、彼を選ぶかどうかは」
「もち子ならもう最初から選ぶって決まっていたわね」
「あの娘の性格なら」
「なら本当にいらない心配だったわね」
 このことを自覚した、そしてだった。
 二人の交際を見守ることにした、千香子のはじまったばかりのそれを。千香子はこの恋愛から多くのことを知りそこから人間としても多くのことを学んだ、それは彼女にとって非常に素晴らしいことであり彼女の人生を非常に素晴らしく実り豊かなものにしたものの一つとなったがそれはまた別の物語である。


性格美人   完


                   2018・8・26

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