東の不思議なお土産
 リーナは自分を助けてくれるキャリーバッグロボットのカインと共に冒険を続けていた。その中で。
 カインにだ、大陸の海の向こうにあった島国の北にある島に着いてこんなことを言った。
「ちょっとここはね」
「寒い島だね」
「ええ、何かね」
 その寒さを身体で感じてすぐにコートや帽子、そしてミトンの手袋で武装をしてからカインに応えた。
「オーロラが出る国に来たみたいよ」
「あそこまで寒くないけれどね」
「けれどこの島国の中ではね」
「一番寒いっていうのね」
「そう感じたけれど」
「そう言われると僕もだよ。だからね」
「寒さには気をつけないとね。カインもね」
 リーナはカインにこうも言った。
「寒さには気をつけないと」
「いやいや、僕はロボットだから」
「それでっていうのね」
「うん、寒さや暑さはね」
 そういったものに対してはというのだ。
「全く平気だよ」
「そうした造りだしね」
「内部で温度を自動に調整出来るから」
 それ故にというのだ。
「寒さにも平気だよ」
「だから心配はっていうのね」
「大丈夫だよ、じゃあね」
「ええ、この島でもね」
「旅をしようね」
「そうしましょう」
 こう話してだ、リーナはカインと共にその島での旅をはじめたが。
 港町で鍋を食べてだ、思わずこう言った。
「こんな美味しいお鍋って」
「ないっていうんだ」
「ええ、はじめてよ」
 ここまで美味しい鍋はというのだ。
「鱈がね」
「鱈は普通にあるじゃない」
「いえ、お野菜や茸やお豆腐とも合っていて」
 その味がというのだ。
「それでだしもね」
「お味噌入ってるね」
「このお味噌がなのよ」
 まさにというのだ。
「凄くね」
「いい味を出しているんだ」
「ええ」
 実際にとだ、リーナは食べつつカインに話した。
「これ以上はないまでにね」
「そんなになんだ」
「さっき食べたジャガイモも美味しかったけれど」
「ああ、上に烏賊の塩辛を乗せた」
「あれも美味しかったけれど」
「そのお鍋もなんだ」
「美味しいわ。身体もあったまるし」
「素敵な鍋みたいね」
「このお鍋を食べられただけでも」
 それこそというのだ。
「この島に来た介があったわ」
「ううん、そこまで凄いんだ」
「ええ、何か他にも美味しいものがあるっていうし」
「色々とだね」
「食べたいわね。それにこの鍋って」
「ああ、鱈だけじゃなくてね」
「帆立も入れられるから」
 見ればもう入れる具として用意されている。
「これも入れてね」
「楽しむんだね」
「そうしましょう」
 こう言って実際にだった、リーナは鍋に帆立貝も入れてそれで食べたがこちらも美味くて満足出来た、その他にも。
 スープカレーを食べてだ、またカインに話した。
「このカレーもね」
「いいんだね」
「この国カレー凄く食べるけれど」
 このカレーもというのだ。
「いいわ」
「ルーが他のカレーとは違うね」
「実際にスープみたいよ」
「カレースープだね」
「ええ、そのカレールーとね」
「御飯が合わさっていて」
「美味しいわ。それにお外が寒いから」
 このこともあってというのだ。
「お鍋の時もそうだったけれど」
「あったまって」
「余計にいいわ。寒い場所は」
 そうした場所ならというのだ。
「やっぱりね」
「熱いものが美味しいんだね」
「これは何処でもだけれど」
「この島でもそうで」
「素敵な味よ」
 そうなっているというのだ。
「本当にね」
「それは何よりだね、何かこの島でリーナは」
 カインはスープカレーにもにこにことしているリーナの向かい側から言った、彼はロボットなので食べていない。ただいるだけで周囲の粒子を吸収しそれがエネルギーになるので食事も充電も必要ないのだ。
「普段以上に楽しそうだね」
「他の場所でも旅を楽しんでいるけれど」
「実際にだね」
「ええ、楽しんでるわ」
 リーナ自身このことを認めた。
「本当にね」
「そうだよね」
「だって食べものが美味しいから」
 それでというのだ。
「他の地域よりも私に合っている感じで」
「ジャガイモと塩からもお鍋も」
「それでスープカレーもね」
 これもというのだ。
「とても美味しいから」
「満足してだね」
「楽しんでるわ、あと景色も奇麗だし」
「港町の夜景もこの街の時計塔もね」
「素敵よね、あと湖にも行くから」
「湖にも?」
「何か不思議な生きものがいる湖があるらしいの」
 リーナはこうカインに話した。
「この島にね」
「ああ、あの湖だね」
「カインも知ってるのね」
「だって僕はバックパックロボットだから」
 それでというのだ。
「だからね」
「旅のことならなのね」
「知っているよ、その湖に行く場所もね」
 そこもというのだ。
「行くのならね」
「道、案内してくれるのね」
「いつも通りね、それじゃあ」
「ええ、この街の後はね」
「その湖に行こうか」
「そうしましょう」
 リーナはスープカレーを食べながらカインに応えた、そしてだった。
 彼と共にその湖に向かった、そして湖のほとりに来たがリーナは湖を見てカインに残念な顔になって言った。
「ここにね」
「うん、不思議な生きものがだね」
「いるって聞いたから来たのに」
「姿を見せないね」
「いるのよね」
 カインに心配そうな顔になって尋ねた。
「そうよね」
「そう言われているけれどね」
「けれどね」
「今は影も形も見えないね」
 カインもこう言った。
「本当に」
「湖の中に隠れているのかしら」
「どうだろうね、ただね」
「ただ?」
「姿が見えないなら」
 それならというのだ。
「仕方ないよ」
「諦めるしかないのね」
「それに湖の景色自体がいいから」
 それでというのだ。
「そちらを楽しもう」
「そうね、それじゃあね」
 それならとだ、リーナも頷いた。そうしてカインと共に湖とその周りの景色を楽しんだ。そうしてだった。
 リーナは趣味である土産もの集めに入った、この島のこれまで行った場所でもそうしたがここでもそうした。
 しかしだ、その土産ものを見てだった。
 湖に出るという生きものから造ったという置きものを見てだ、リーナもカインも。
 どうかという感じにだってだ、二人で話した。
「恐竜よね」
「この置きものはね」
 見れば首長竜である。
「どう見てもね」
「そうよね、けれどね」
「この湖の辺りというか島全体がね」
「寒いのに」
 それでというのだ。
「この寒さで恐竜のいるかしら」
「無理だよね」
「あの、それでもなの?」
「恐竜の置きものお土産なのかな」
「おかしいわよね」
「僕もそう思うよ」
「ううん、変よね」
 リーナはこう思わずにいられなかった。
「これは」
「この湖の生きものは恐竜っていうのかな」
「そうなのかしら」
「そんな筈がないのにね」
「夢?」
 考える顔になってだ、リーナはそうではないかと述べた。
「これって」
「ああ、土産屋の人達の」
「そう、それでね」
「恐竜であって欲しい」
「そう思ってね」
 それでというのだ。
「恐竜にしてるのよ」
「そういうことかな」
「まあ恐竜だとね」
 リーナもそれならと考えて述べた。
「確かにロマンあるわよね」
「そうだね、本当に」
「もういないってされているから」
「その恐竜がいたら」
「夢があるから」
「そういうことだね、じゃあどうするのかな」
 カインはリーナに問うた。
「このお土産は」
「買うわ」
 にこりと笑ってだ、リーナはカインに答えた。
「是非ね」
「そう、それじゃあね」
「一個買ってお家に送って」
「それでだね」
「お部屋飾るわね」
「このお土産でもだね」
「ええ、じゃあ今から買うわ」
 こう言って実際にだった、リーナはそのお土産を買った。そのうえでこの北の島での旅をさらに続けた。そして家に帰った時に。
 恐竜のお土産を部屋のここにという場所に置いて飾った、そうしてにこりと笑ってカインにまたあの島に行きましょうと言った。カインもそうしようと応えた。


東の不思議なお土産   完


                  2018・8・30

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