おもちゃは素敵
 支倉千沙都は街に出てまずは驚いた、それで家でも言った。
「凄いよね、もう何ていうか」
「ビルが一杯建っててね」
 妹が笑顔で応えた。
「それでお家もね」
「新しいお家ばかりでね」
「それで色々なお店があってね」
「凄いよね」
「本当にね」
「何ていうか都会ってね」
「噂に聞いたよりもね」
 さらにとだ、妹も言うのだった。
「凄いよね」
「お店の中には色々なものが売ってて」
「楽しそうな物事が一杯あって」
「素敵よね」
「これからここで住めるなんてね」
「最高よね」
「ずっとここに暮らしていたいわ」
 姉妹で話すだけではなくだ、両親も言ってきた。
「ああ、これからはな」
「ずっとこの街で暮らすのよ」
 千沙都達に笑顔で話した。
「お父さんのお仕事の関係でね」
「ずっとこの街で暮らすからな」
「色々なものがあるから」
「楽しんで暮らせるぞ」
「何かね」
 千沙都がここで言った。
「おもちゃ屋さんに行ったら」
「おもちゃ屋さんか」
「そこに行ったらなの」
「物凄く楽しそうなものが一杯あって」
 それでというのだ。
「あのおもちゃ達で遊べたら」
「いいか」
「そう言うのね」
「働ける様になったら」
 その時はというのだ。
「おもちゃ屋で働きたいわ」
「じゃあアルバイトすればいい」
 父はまだ幼い千沙都に笑って話した。
「働ける様になったら」
「その時はなの」
「そうだ、高校生になったらアルバイト出来る」
「高校生になったら」
「その時にお店に行って働きたいと言ってな」
 そうしてというのだ。
「働けばいいぞ」
「じゃあそうするね」
 千沙都は父に笑顔で答えた。
「高校生になったら」
「働くことはいいことだ」
「だからなのね」
「そうだ、おもちゃ屋で働きたいならな」
「おもちゃ屋で働けばいいのね」
「そうだ、頑張れよ」
 娘にエールも送った、そして千沙都は高校生になるとすぐにだった。街のモールにあるおもちゃ屋に行って願書を出してだった。
 その店の店員になった、レジ等にいるが。
 そこでだ、千沙都はよくこう言われた。
「あの、中学生?」
「高校生です」
 千沙都は大学生位のお客さんにすぐに答えた。
「一年生です」
「そうなんだ、小さいから」
 それでとだ、その御客さんは言うのだった。
「そう思ったよ」
「そうですか」
「うん、それじゃあね」
 そのお客さんは自分が買いたいものを買って帰った、このお客さん以外にもだった。
 多くのお客さんが千沙都を見て中学生酷い時は小学生とさえ言った。千沙都もこのことが気になっていてだ。
 それでだ、時折店長にこのことをぼやいた。三十代の女性の店長だった。
「私子供に見えます?」
「それを言うとね」
 店長はこうした時いつも千沙都に困った顔になって答えた。
「千沙都ちゃん小柄で童顔だから」
「それで、ですか」
「悪いけれどね」
 これが返事だった。
「ここから先は言わないけれど」
「そうですか」
「けれどね」
「けれど?」
「仕事はしっかりしてるから」
 だからだというのだ。
「私はいいと思うわ」
「子供に見えてもですか」
「別にね」
「そうなんですね」
「大事なのはね」
 店長は千沙都にさらに話した。
「千沙都ちゃんがどういった娘かよ」
「外見よりも」
「子供に見ても性格いいし」
 それでというのだ。
「接客もいいしお仕事も出来るから」
「だからですか」
「私としてはね」
 店を預かる者としてはというのだ。
「別にいいのよ」
「そうですか」
「千沙都ちゃんがいい娘だから」
 そしていい店員だからだというのだ。
「それでいいわ、それでおもちゃね」
「またカード入りましたね」
「最近色々あるけれど」
 カードゲーム、そしてカードの種類もというのだ。
「全部ね」
「覚えないといけないことは覚えて」
「店員は売るだけじゃないから」
 カードについてもというのだ。
「子供さんが聞いてくるでしょ」
「よく聞かれます」
 実際にとだ、千沙都は店長に答えた。
「だからですね」
「そう、私達もね」
 店で働く人間もというのだ。
「ちゃんとね」
「覚えてですね」
「売っていかないといけないから」
「覚えていきます」
 こう店長に答えたのだった。
「そちらも」
「女の子でもね」
「カードは商品だから」
「覚えてね、ゲームソフトもあるけれど」
「スマホのゲームがかなり増えてますけれど」
「今もおもちゃ屋の主力商品だから」
 それでというのだ。
「そちらもね」
「勉強してですね」
「覚えておいてね」
「わかりました、本当にですね」
「覚えることはね」
「多いですね、おもちゃ屋も」
「プラモデルもあるし」
 こちらもというのだ。
「こっちもやっぱりね」
「主力商品ですよね」
「うちはプラモデルもかなり扱ってるから」
 それでというのだ。
「アニメモデルもスケールモデルもね」
「あの、アニメモデルはわかりますが」
 千沙都は店長にそちらはと答えた。
「私も。ただ」
「あっ、スケールモデルはね」
「そっちは」
 どうにもと言うのだった。
「わからないんですが、まだ」
「そっちは実際にあった戦車とか戦闘機よ」
「あっ、零戦とか」
「そう、ああしたののプラモデルがね」
 まさにというのだ。
「スケールモデルなのよ」
「そうなんですね」
「こっちも色々あるけれど」
 売り場のスペースもかなりのものだ。
「それでもね」
「そちらもですね」
「ちゃんとね」
 それもというのだ。
「覚えてね、プラモはちゃんと係の子がいるけれど」
「それでもですね」
「やっぱりね」
 どうしてもというのだ。
「お客さんに聞かれることもあるから」
「それで、ですね」
「覚えておいてね」
「わかりました」
 千沙都は店長にプラモのことについても答えた。
「後でコーナーに行ってきます」
「時々でもいいからね」
「勉強してきます」
「そうしてね、ぬいぐるみもあるしお人形も。赤ちゃん用のおもちゃも」
 そうしたものもというのだ。
「どんなのかね」
「頭に入れておく」
「それがおもちゃ屋よ」
 その店員だとだ、店長は千沙都に話して千沙都も頷いてだった。
 そうして学んでいった、そのうえで。
 千沙都は立派な店員になっていった、そうして家で両親に言うのだった。
「おもちゃ屋の店員さんって凄く面白いわ」
「そうか、そんなにか」
「千沙都にとっていいのね」
「色々な種類のおもちゃがあって」
 それでとだ、両親に笑顔で話した。
「それを見て覚えるだけでも楽しいから」
「そうか、じゃあな」
「明日も楽しんで行って来てね」
「そうさせてもらうわ」
 是非にと言ってだ、そのうえで。
 千沙都は笑顔で次の日も店に行って笑顔で働いた、彼女にとっておもちゃ屋での仕事は素晴らしいものだった。それが彼女の街での生活をこの上ないまでに輝かしいものにもしていた。


おもちゃは素敵   完


                 2018・9・23

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