十一月三十一日
 ジャパ子の誕生日は九月三十一日である、だが彼女の周りの者達はその誕生日についてすぐに気付いて言うのだった。
「いや、嘘だろ」
「何で九月三十一日なのよ」
「そんな日あるか」
「九月は三十日までよ」
「そんな日ないわよ」
「仕方ないでしょ、設定なんだから」
 ジャパ子は彼等に煽る笑顔で言うばかりだった。
「私の誕生日はね」
「実際は何時なんだよ」
「何時生まれたのよ」
「そんな有り得ない日じゃなかったら」
「何時生まれなのよ」
「さてね、ちなみにね」
 さらに煽るジャパ子だった、煽りに余念がない。
「私お父さんが二人、お母さんが三人いるのよ」
「どういう家庭なんだ?」
「再婚したとか?」
「いや、それでもおかしいだろ」
「普通実の母親は一人だろ」
「再婚し合ったにしてもどうしてそうなる?」
 皆このことにも有り得ないと思った。
「何が何か」
「わからない設定ね」
「本当に何者なんだ?」
「生年月日といい」
「おかしな設定の方が目立つのよ」
 身も蓋もないことを言い続けるジャパ子だった、そうしつつ周りをどうして煽り続けるか考えてもいる。
「それで人気が出るのよ」
「その性格でか?」
「煽ってばかりなのに」
「人を不幸にもするし」
「人気が出るどころか」
「嫌われるだろ」
「どう考えても」
 皆こう言うがジャパ子はひたすら周囲をとりわけクレクレ厨をそのイラストで絶望のドン底に落として煽って笑い続けていた、その彼女がだ。
 ある日だ、友人達に笑ってこんなことを言った。
「今度パーティーするつもりなの、お家でね」
「それで俺達に来いってか」
「そう言うのね」
「というか俺達こいつの友達だったのか」
「今はじめて知ったわ」
「そうよ、私が友達って思えばね」
 それでというのだ。
「皆友達になるのよ」
「強引な友達の成り方だな」
「というか私達を勝手に友達にしないでよ」
「しかもパーティーに呼ぶのか」
「強引に決めるのね」
「そうよ、それでパーティーだから」
 それでというのだ。
「酒池肉林するから、色々なお菓子とジュースで」
「それは酒池肉林じゃないからな」
「大量のお酒とお肉用意するって意味だから」
「お菓子とジュースは酒池肉林じゃないだろ」
「また違うでしょ」
「違うけれど」
 それでもとだ、相変わらず悪びれず言うジャパ子だった。
「いいのよ、美味しい食べものと飲みもの一杯出すのは同じだから」
「それでか」
「酒池肉林になるのね」
「それでその酒池肉林のパーティーをか」
「私達を招待してくれるのね」
「そう、そしてその日はね」
 さらに言うジャパ子だった。
「十一月三十一日よ」
「そうか、十一月三十一日か」
「わかったわ」
「じゃあその日に行くな」
「皆でね」
 ジャパ子に勝手に友人にされた彼等はまずは素直に頷いた、だが頷いてからすぐに気付いて言うのだった。
「いや、待てよ」
「十一月三十一日って」
「そんな日ないだろ」
「十一月も三十日まででしょ」
「これがあるのよ」
 ジャパ子は自分の言った日にクレームをつけた彼等に即座に答えた。
「昔日本のプロ野球選手が言ったのよ」
「それ何処の誰だよ」
「だから十一月は三十日まででしょ」
「それで何で三十一日なんだよ」
「それが有り得ないでしょ」
「契約の日だったけれどすっぽかして」
 そうしてというのだ。
「それで十一月三十一日があると言ったのよ」
「十一月三十日の契約すっぽかしてか」
「それでそう言ったのね」
「それ契約するフロントの人怒っただろうな」
「もう怒り心頭だったでしょうね」
「それこそ有り得ない位に怒って」 
 実際にそうなったというのだ。
「厳罰にしたらしいわ」
「そりゃそうだろ」
「大切な契約の日にそんなことしたら」
「どのチームのフロントだって怒るぞ」
「下手したらクビでしょ」
 皆流石にそれはと思って話した。
「それこそね」
「怒って当然だろ」
「どんな厳罰でもおかしくないわよ」
「というかそうするのが普通だろ」
「その日にしようと思ったけれど」
 ジャパ子はまた言った。
「皆駄目だっていうし三十日にしようかしら」
「十一月三十日な」
「普通の日でお願いね」
「そんな有り得ない日にパーティーなんかするな」
「他の日にしなさい」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 皆はジャパ子が開いた美味しいお菓子やジュースが沢山出るパーティーに参加することにした、その日はというと。
「じゃあ十二月三十一日ね」
「大晦日か」
「というか三十一日は一緒ね」
「そこは変わらないな」
「誕生日もそうだし」
「いいでしょ、ネタになるから」
 その日もというのだ。
「大晦日だからね」
「やれやれだな」
「じゃあ大晦日にね」
「こいつの家でパーティーするか」
「そうしましょう」
 彼等も何だかんだで付き合うことにした、そうしてだった。
 皆大晦日にジャパ子の家でパーティーを楽しんだ、この日ばかりは彼女も煽らずに彼等を素直に歓迎してもてなした。


十一月三十一日   完


                   2018・9・23

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