宇宙生物の日本語
 宙学星苺々の存在を知っている地球人はごく僅かの者達だけだ、それは宇宙に関わっている者達の中で宇宙飛行士と彼等の周りそして上層部ばかりだ。
 日本の首相もだ、苺々のことをはじめて聴いた時に驚いてこう言った程だ。
「そんな宇宙生物が本当にいるのかい」
「はい、実は」 
 日本人の宇宙飛行士が首相に自分が見たものを話した。
「私がこの目で見て画像もありますし」
「各国の宇宙飛行士達もだね」
「存在を知っていて会話もしています」
「会話もなんだ」
「スペースシャトルも会ったとか」
「ううん、それはまたね」
 そのことも聞いて言う首相だった。
「凄い話だよ、宇宙人だの宇宙生物はいるとは思っていたにしても」
「彼女の様な宇宙生物はですね」
「想像もしていなかったよ、しかし別に敵対的ではないんだね」
「むしろ友好的です」
 宇宙飛行士は首相にこのことも話した。
「ですから」
「そのことは安心していいんだね」
「むしろ友好的に話しかけてきたりします」
「それならいいよ。では君がまた宇宙に行った時はね」
「彼女とですね」
「行くといいよ」
「わかりました」
 飛行士も答えた、そしてだった。
 また宇宙に行った時に苺々と会って実験として宇宙に建造中であるスペースコロニーの窓から首相に言われたことを話すとだ、苺々は飛行士に窓の向こうから笑って話した。
「それってベリグな感じ?」
「うん、凄くいいっていう意味だよ」
「そう、ナウい言葉でしょ」
「それ僕が子供の時の言葉だよ」 
 飛行士は苺々に苦笑いで答えた。
「新しいとはとても言えないよ」
「そうなの」
「うん、だからね」
 それでと言うのだった。
「僕より若い世代には日本人でも通じないよ」
「それって超いけてないけれど」
「そう言われても言葉って時代によって変わるからね」
「同じ日本語でも?」
「変わるよ、それでね」
 飛行士は彼にさらに話した。
「君の今の言葉はね」
「今のヤングな日本人にはわからない感じ?」
「そうなんだ、僕みたいな口調だとわかるけれど」
「けれど時代によって変わるなら」
 それならとだ、苺々は飛行士に答えた。
「今飛行士さんの口調を覚えても意味なくない?」
「そうなるかな」
「じゃあどの言葉使えばいい訳?日本語は」
「そうだね、じゃあ普通の日本語教えようか」
「普通の?」
「うん、君のそうした砕けているけれど古い言葉じゃなくてね」
 一九九〇年代のそれでなく、というのだ。
「何時の時代でもまあ通じる様な」
「そんな言葉教えてくれるの」
「そうさせてもらうよ」
 ここで実際にだった、飛行士は苺々に彼が考えている普通の日本語を教えた。既に日本語を喋ることが出来ている彼女は簡単に覚えることが出来た、それで彼女が覚えたその言葉で暫く日本語を喋っていたが。
 別の日本人の宇宙飛行士が彼女にこんな言葉を教えた、その言葉はというと。
「違います、はなのね」
「ちゃうねん、ってなるねん」
 若い女性の宇宙飛行士だった、その生まれは大阪だったのだ。
「そうなるねん」
「そうなる、はよね」
「そう、そうなるねんになるねん」
「ちょっと口調が違うけれど」
「ええ喋り方やろ」
「そうね、面白い喋り方ね」
「これは日本語の方言でな」
 大阪出身の飛行士はさらに話した。
「関西弁っていうねん」
「関西弁やねんな」
「あんたが今喋った言葉もや」
「そうか、ほなうちこれからもな」
「関西弁使ってくか?」
「面白い言葉やし」 
 それでとだ、苺々は早速関西弁で喋りだしていた。
「これからあの男の人にもこれで喋っていくわ」
「関西弁でやな」
「そうしていくわ」
「そうか、やってみるんや」
「それやったらな」 
 二人で話してだ、そしてだった。
 苺々は実際にその飛行士に関西弁で喋ってみた、するとその飛行士はすぐに察してこう言った。
「彼女に教えてもらったんだね」
「わかるんやな」
「わかるよ、上手だけれど」
 それでもと言うのだった。
「変なこと教えたね」
「ええことやないん」
「関西弁なんだ、それだったら僕も教えるよ」
「どんな言葉やねん」
「生まれ名古屋だから名古屋弁になるけれど」
「名古屋弁ってどんなのやねん」
「それはね」
 彼は彼で苺々に名古屋弁を教えた、そうしてだった。
 何時しか苺々は名古屋弁まで喋られる様になりそちらも使う様になった、首相は飛行士達からその話を聞いてこう言った。
「宇宙生物も人間と変わらないところもあるね」
「むしろ彼女は極めて人間的です」
「面白いですよ」
「そうだね、じゃあこれからも彼女ともね」
「交流を続けて」
「宇宙開発も続けていくことですね」
「そうしよう、宇宙に出ても色々な生命体と衝突するより仲良くする方がいいからね」
 その方が人道的にも政治的にも楽だからだ、衝突すればその分強い力を使うことになるからである。
「このままね」
「いきますね」
「彼女とは」
「そうしこう、そして各国にも話して」
 そのうえでと言うのだった。
「彼女とはね」
「融和してですね」
「宇宙開発を進めていく様にですね」
「人類全体でやっていこう」
 首相は誓いそのうえで各国の首脳達にも実際に話した、そうして人類は苺々と仲良く宇宙開発をしていくのだった。愛すべきこの宇宙生物と共に。


宇宙生物の日本語   完


                 2018・9・26

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