あらすじ
天正3年、今浜から長浜と名を変えた地に、秀吉によって新しい城が築かれた。
長浜城である。
今、一人の青年武将が、長浜の城へ入って行く。
名を田中久兵衛吉政。26才。
後に関白秀次の筆頭家老となって、近江八幡の城と町を造った男。
家康関東移封の後、家康先祖伝来の三河岡崎と西尾を治めた男。
関ヶ原で戦い、古橋村で三成を捕らえた男。
最後は、三十二万五千石の初代筑後国主となった男。
秀吉の家臣となってまだ間もない、若き日の田中吉政の目を通して物語は進む。
吉政は厩で、一人の中年の女性と出会う。秀吉の母なかである。
後に大政所となる秀吉の母その人だった。
十三才の市松(後の福島正則)や十二才の虎之助(後の加藤清正)悪童たちが放り出した、なかの畑作りを手伝うことになる。
なかの陽だまりのような人柄に心を開き、吉政の心は満たされていく。
二年前の姉川の戦の後、信長は比叡山焼き討ちを断行する。同じ年、秀吉は湖北の小土豪を調略する。
中心となる宮部継潤を落とすため、秀吉は当時三歳だった冶兵衛(後の関白秀次)孫七郎を、継潤の養子として差し出していた。
秀次の傅役に選ばれたのが、田中吉政だった。
だが、浅井、朝倉が滅び、湖北は秀吉の所領となった。
孫七郎を秀吉に返す日が来たのだ。
五歳になった孫七郎を自分の馬に乗せ、吉政は長浜城へ向かって進む。
- 作品更新日 :
- 2018-11-27
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