section6:Foggy Day---THORN

The fog comes
on little cat feet.

It sits looking
over harbor and city
on silent haunches
and then moves on.

霧はやってくる、
小さな猫足で。

そっと腰を下ろして、
港と町を
見渡すと、
また静かに歩き出す。

   Carl Sandburg "Fog"

夕刻になり、調査を終えた一同が拠点の一号室へと集まった。リリスだけがまだ戻って来ていない。
「そう言えば、リリスは午後はどこに行ったの?」
リーファスの質問にゲーリーは少々きまり悪そうに答えた。
「まあ、そんなに危険のない所へ行く、とだけ言っていたよ」
「また調査先言わずに出て行ったのかい?」
ため息混じりにコメットが言う。
「初日だし、彼女も無茶はしないんじゃないかな」
「そうだね」
ゲーリーの言葉にケインが頷く。リリスの調査が突拍子もない方向になるのは大抵は調査が長引いた時だけではあるが、こうして度々黙って飛び出していくのは心配の種である。

30分程して、そのリリスが拠点に戻ってきた。
「ただいま」
一旦部屋に戻ってコートを置いて来たらしい彼女は、一号室の扉を開けて満面の笑顔でそう言った。
「お帰り」
と、ケインが暖炉の前を空ける。
「あら有難う、ケイン」
リリスは暖炉に手をかざしながら、一同を見て言った。
「調査は順調だった?」
「うん、まあまあだね。僕とリーファスとケインの調査は大体話が一致してるよ。事件は霧の深夜近く。それから目撃者の中には「鉄仮面」と被害者が言い残したって証言があった」
リリスが顔を上げた。表情からは笑みが消えている。
「ゲーリーはどう?」
「まあ、たぶん君の予想通りだろう。傷は全てやや高い位置から大型の刃物を使い、上から下に向けて斬られているそうだ。バイロンはサーベルかソードの傷のようだと言っていた」
「そう、有難う」
リリスは一度視線を床に落とし数回瞬きをした後、再び話を続けた。
「私の方もほぼ同じね。ホーリー・フリッペンを最初に発見した人に会ってきたのだけれど。彼は即死だったそうよ。その時に石畳の向こう、霧の中に背の高い影が見えたと言っていたわ」
一旦言葉を切り彼女は視線を一同に向けた。
「それから、現場近くで誰か馬の鳴き声や蹄の音についての話は聞かなかったかしら?」
コメット、リーファス、ケインの三人が顔を見合わせる。
「馬?」
「そう馬よ。例のゴシップコラムに死神の馬車という表現が残っていたなら、何かしら馬に関する証言があったはずよ。目撃証言が全て霧の夜だったとしたら、馬を連想する"蹄の音"や"いななき"でしょうね。残念ながら私の調査ではそんな物は出なかったのだけど。あなたたちもその話をまだ聞いていないのなら……」
窓へと目を向けてリリスは笑った。先のようなにこやかな愛想の良い笑顔ではない。
「こちらから出向いて、相手の尻尾を掴むしかないわね」
やや伏せ目がちな暗い瞳で、唇の端だけを持ち上げた表情だ。

「舞台は整ったみたいよ?」
彼女の視線の先、窓の外に見える景色は夜霧で鉛色に霞み始めていた。

「うん。もう少しばかり説明が欲しい、かな?」
ゲーリーの言葉にリリスは答えた。
「昼間言ったじゃない、『あなたの絵は良い線付いている』ってね。身長10フィートに見えたのは、相手が馬上にいるから。片手でサーベルやソードを使い、馬上から斬りつけたなら傷は下半身にまで至らない。そして鉄仮面という言葉。ここから連想出来る物は、一体何だと思う?」
「そうか。謎掛けの答えは、"甲冑を着た騎士"だね?」
やや笑い含んだ声でそう言ったコメットに、リリスは暗い笑みのままで頷いた。
「現代社会に有り得ない物だから、想像で歪められた証言だけが残っていた。でも心霊調査機関の仕事には、常識なんて一切通用しない」
「んーと、つまりこれから突貫作業での調査になりそうって事だよな。すぐに出掛ける準備しなきゃな」
ケインの言葉にリーファスが少し考えて言う。
「そうね。でも、お夕飯を取るくらいの時間ならあるかしら?」
「事件は全て深夜に起こっているから、たぶん大丈夫だろう。でも出来るだけ急いだ方が良いな。被害者をこれ以上増やしたくはない」
ゲーリーの言葉に一同は頷いた。

二号室のジェーンの部屋へ夕食のために向かう一同の背中をぼんやりと見詰めながら、表情のない目でリリスは呟いた。
「むしろ難しいのはこの先だ。例え犯人が分かったとしても、現れた原因が分からない。相手を倒して解決しても、元を絶たなければたぶん意味はない。切っ掛けになった事が何処かにある。そして恐らく……」
一度目線を床へと落とした後、リリスは真っ直ぐに顔を上げる。そして仲間の後を追って二号室へと向かった。

ロンドンでは気温の高い夏季は霧はあまり出ないが、秋から冬を経て春頃までは霧が出る事が多い。
ただし、この時代に謳われていた「ロンドンの霧」の正体は工場や車の排気ガスによって空気汚染されたスモッグである。そんな夜霧なのでロマンの欠片もない訳だが、闇と霧に身を隠して鎧を着た騎士が徘徊しているとなると、別の意味でのロマンがある。
ただ残念ながら、相手は恐怖の殺人鬼だ。中身がただの狂人だろうが、幽霊だろうが迅速な対処が必要だった。

夜間調査であり更に霧も濃くなっているため、ゴーストハンターたちは二組に分かれてイーストエンド付近を巡回する事になった。霊能力者のリーファスとコメット、そして幽体感知器を持っているケインが視認の難しい町の中の様子を伺いながらの進行となる。

「納得いかないわ」
無表情でリリスが呟く。彼女は強制的にゲーリーとコメットと行動を共にさせられていた。
正確に言うならば、拠点から出る時点で闇に紛れてこっそりと仲間から離れようとしたのをゲーリーに見咎められて、その場でコートの襟首を掴まれて引っ張って来られたのだが。
「あなたたち二人でも十二分に調査は出来るでしょう?私がわざわざ同行する必要なんて無いじゃない」
「ああ、確かに俺たちはそれでもいいんだがな。君はそういう訳にもいかんだろう」
ゲーリーが白い息を吐き出しながら言う。
リリスは人間相手の場合は駆け引きに長けているのだが、物理攻撃が効かない相手に関しては全く対処が出来ない。もし本当に鎧を着た相手が出た場合は、例え相手が人間であっても彼女の携帯した銃は役に立たないだろう。ましてこの霧だ。とんでもない事でも平気でやろうとするリリスを"迂闊に放置するわけにいかない"というのがゲーリーの本音だった。
「そうだね。リリス一人で放置してたら、きっとそこら辺で死んじゃうだろうしさ」
普段なら女性に前を歩かせたりはしないゲーリー。しかし油断すれば行方をくらませかねないので、先程からリリスが前を歩かされる事になっている。
こんな調子で珍しくゲーリーにイニシアチブを取られてしまった様子がおかしいのか、コメットはひたすらニヤニヤしながら二人のやり取りを聞いている。
「簡単に死体にしないで下さいな」
コメットを軽く睨んだ後、リリスは諦めたように周囲に意識を集中し始めた。

時折立ち止まりコメットが周囲に透視や霊体感知を使う。その間ゲーリーはリリスから目を離さないようにしながら周辺を調査していた。当のリリスはぼんやりした表情で辺りを見ていたが、いきなり地面にしゃがみ込んだ。
「何かあったのか?」
ゲーリーが問いかけたが、リリスは心ここにあらずといった表情で呟く。
「もし馬が走って行ったとしたら……」
地面から拾い上げたのは長さ4インチ(約10cm)程の半ば潰れた草だ。
「きっと石畳の上で草はこんな風になるわね」
周囲にそんな草が生えた場所は見当たらない。リリスは数歩前に移動して、石畳の上に幾つか残っていた土の跡をそっと指でなぞった。そして、再び立ち上がって真っ直ぐにある方向を見た後、逆方向へと視線を向ける。
「こちらから来て……あっち、かしら」
やたら抽象的に紡ぎだされる言葉に首を傾げているゲーリーに向け、リリスはふと現実にかえったような表情で前方を指した。
「あっちにはリーファスたちがいるのかしら?」
「ん?そうだな方向としてはそういう事になる」
リリスは口元に手を当てながら小さく呟いた。
「あの二人なら無理はしない。でも応援に行った方が良いかも知れない」
再び要領を得ない言葉になってしまったのでゲーリーが対応に困っていると、霊視を終えたコメットが戻ってきた。
「かなり離れているけれど、向こうに霊体反応があったよ」
つい今リリスが指さした方向である。ゲーリーはリリスを見て言った。
「君には霊能力はなかったよな?」
「私にその才能が全く無いから、今ここにいるんでしょう?」
リリスは軽く息をついて言った。

「なになに?何かあったの?」
コメットが二人の様子に興味津々で問いかけてくる。リリスは黙って先程拾った草をコメットに見せた。未来の名探偵は眉を寄せて言った。
「これはよくある雑草の一種だな。何かに押しつぶされているようだが。ここで拾ったのかい、ワトスン君」
(本当のシャーロック・ホームズならロンドン中に生えている雑草の生息地と種類も把握していそうだな)
ゲーリーはそう思いながら、ワトスン=リリスの答えを待つ。
「その通り。でもこの付近にこんな草は生えていない。そっちに幾つか残っている土と一緒に、何処からか運ばれてきた物だとしたら、ミスター・ホームズ?」
さすがにロンドン中の雑草までは分からないコメットだが、「ホームズ」と呼ばれた以上は一応の推理を試みる。
「つまり相手は草のある場所、公園や空き地、庭園なんかを抜けてここまで来たって事だ」
「同感。では、もう一つ。今これがここにあるって事は?」
一瞬答えに詰まった後、コメットの表情と顔色が変わった。
「それがもし犯人だとしたら、とっくにこの界隈を通過して行ったって事じゃない!!さっきの霊体反応か!?」
リリスの唇の端が上がり笑いの形になる。
「Excellent. 名探偵さん。急ぎましょう」
二人のやり取りを見ていたゲーリーはため息をもう一つ吐き出した。
「急ぐのなら、もう少し簡潔に話して欲しいもんだがな」
「本業の探偵さんに、証拠を手にして『This is elementary(これは初歩的な事さ)』とでも言えと?」
リリスの言葉にゲーリーは肩を竦めた。

ケインとリーファスの二人は、拠点の前で他の三人と別れた後は比較的西寄りの通りを巡回していた。コメットと同じようにリーファスが時折霊視を行い、その間にケインは別の方向を幽体感知器の『霊魂君』を使って探っていた。この二人だと二方向の調査になるため、効率良く回れるのが利点だ。ただし、戦闘能力という点に置いては若干もう一方の三人よりは劣るのが欠点ではある。
「この辺は袋小路も多いし、異常がある方向は分かっても道がどう繋がっているかよく分からないわね」
リーファスが少々不安そうに呟いた。
「んー、俺は大体分かるから大丈夫。でも道を間違えそうなくらい霧が深いよな。街灯も少ないし、トーチの光も届かないしさ」
ケインは機器の波長を少し変えながら妻の言葉に答える。自作の対霊体の機材を手にしている時のケインはほとんど無敵レベルの度胸の良さになる。これはリーファスから見ると「頼もしい」というよりも、無茶をしかねない「不安の種」でしかない。
しばらく『霊魂君』のモニターを見ていたケインだったが、いきなり「あ?」と妙な声を上げた。
「どうかしたの?」
「ちょっと待ってくれ。波長変えてたら今、一瞬何か映った!」
ケインが再び『霊魂君』の波長をあれこれいじっていると、いきなりヨンヨンと調子っ外れな音が鳴り始めた。
「これは結構近いぞ!あっちだ」
今まで調査していたのとはほぼ逆に向かって走り出た夫を、リーファスは慌てて追った。ここではぐれたらお互いに厄介な事になりそうである。

霧で視界5フィート程(1.5m)しかない上に、街灯の少ない暗い道。あまり全力で走るとどこかにぶつかりそうではあったが、それでも二人は出来る限りの速度で走って行く。その時だった。 前方から女性の悲鳴が聞こえた。
「間に合え!」
肩に掛けていた怪光線銃を走りながら降ろしたケインは、迷わず前方に向けて撃った。
「ちょ……!」
リーファスが止める暇さえなかった。
(霧で前が見えないのにそんな物を撃ったら悲鳴の当人に当たってしまうんじゃないか?)
リーファスは心配になる。しかしケインは身につけていたゴーグルを熱源感知(いわゆる赤外線サーモグラフィ)カメラのモードへと切り替えていたらしい。地面に倒れた人影を避けて、すぐ前にある温度のやたら低い大き気な物体に向けて光線を発射する。バリバリと派手な音を立て、緑色の光は霧の向こう側へと吸い込まれていった。

馬のいななく声が辺りに響き渡った。
ようやく現場に駆けつけたケインの目に、古典馬術のクールベットでも行うかのように後ろ足で立ち上がった真っ黒な馬に跨った甲冑姿が見えた。手には抜身の剣がある。そして、馬の足元近くには倒れている女性の姿があった。
「リーファス、その人を頼んだぞ!!」
ケインが叫んだ。
そこでリーファスにも現場の状況が見えてきた。

興奮した馬は半実体化なのか黒く朧げに霞んでいた。だが馬上の鎧を着た者は完全に実体だ。
手にした剣の周囲にはどす黒い靄が絡みついているようにも見える。刃が40インチ程(約1m)の長さのいわゆるロングソード。柄の部分が十字架を模した形で中世騎士の持ち物のようにも見える。全身鎧は15世紀前後、100年戦争の頃の物だろうか。詳しい事は調べなければ分からない。ともあれ、今は目の前のこの騎士を何とかしなければ。
彼女の夫はアタッチメントをガチャガチャ取り付けた怪光線銃を構え、前方に撃とうとしている所だった。
「もう一発喰らえ!!」
この状態で馬が暴れ続けると側に倒れている女性が危険だ。リーファスは一旦足を止めて、意識をハイヤーセルフの加護へと集中して女性の周囲に保護ためのオーラバリヤーを貼る。
「せめてちゃんと狙って!」というリーファスの願いも虚しくケインは腰だめのままで、怪光線銃が二発目の光線を吐き出した。今度の光線はバチバチ火花を散らしながら鎧を着た騎士らしき相手の体に当たった。

「ケイン、リーファス、無事かい!?」
女性が倒れている近くの角からコメットが走り込んできた。側に人がいる事に気づくと、コメットは急いで彼女を少し離れた場所まで移動させた。 女性は斬りつけられる前だったようで、さほどの怪我は負っていない。しかしショックのあまり意識を失っている。お陰で妙な怪光線や霊能力を見ないで済んだのは不幸中の幸いとも言うべきか。

コメットに続いて角から姿を現したリリスが、トンと地面を蹴った。すぐ横の建物の外階段の数段上がった位置に一旦着地した後、彼女は馬上の騎士に向けて体を半回転させながら落下する。そして暴れる馬の上でバランスを取りながら剣を振る騎士に向けて、至近距離から発砲した。
既に次の攻撃準備に入っていたケインは、慌てて狙いを騎士の顔面辺りに変更した。リリスのすぐ脇で光が騎士にぶつかり、大きな音を立てる。それを聞きながらリリスは馬上で騎士が顔を背けたのを不思議そうに見ていた。

地面に落ちたリリスは馬に踏まれないよう道の端に転がった。だが当の騎士は馬を反転させて霧の中へと駆け去って行く。
この霧では追跡は難しそうだ。
「ったく何て事するんだよ!!」
「危ないじゃないの!」
「あーびっくりしたぁ」
三人三様の仲間の声を聞くともなしに聞きながら、身を起こしたリリスは言葉もなく騎士の去った方向を見ていた。

「血が出てるわ。治療するからこっちに来て」
リーファスの言葉に、ようやく現実に戻ったようにリリスは視線を戻して首を振った。
「そっちの人が先。怪我はともかく、ショックを受けてると思う。精神治療が必要かも」
淡々と答えるリリスにリーファスは頷くと、被害者女性の元に行った。
その時、やっと追いついたゲーリーが現場に姿を現した。
「よお、今度は何をやった?」
三人の様子とコートの埃を払っているリリスを見て、ゲーリーが尋ねる。銃声は聞こえたので、リリスが発砲した事だけは彼も把握している。
「時代錯誤の騎士様に発砲しただけ」
「ちょっとゲーリー、このじゃじゃ馬に何とか言ってやってよ。ホント心臓に悪いんだから」
コメットが訴えて来たので、ゲーリーは彼から話を聞く事にしたらしい。

リリスは腑に落ちない表情で怪光線銃のアタッチメントを外しているケインに話しかけた。
「ねぇケイン、その武器には何か特殊な効果があるのかしら?」
「ああ、これ?ただのプラズマにエーテルエネルギーを追加しただけの物なんだけどな」
それを「ただの」と言えるのかはよく分からないのだが、リリスは小首を傾げる。
「さっきあなたが撃った時に、あの騎士は嫌がるような仕草をしたように見えたのだけど……」
「あー、確かに何か顔を仰け反らせてた気がするなぁ。何だろう?何か弱点にでもなるエネルギーが含まれてるのかな?」
リリスは首を振った。製作者のケインにも分からないのだから、彼女に分かるはずもない。

しばらくして意識を取り戻した被害者の女性を、ケインとリーファスが家まで送っていく事になった。
その間にリリスは、コメットの告げ口を聞いたゲーリーの苦言をたっぷりと聞かされながら拠点に戻る事になる。しかし、当人は何か考え込み黙ったままだ。 ほぼ拠点に着く頃、リリスは小さな呟きを漏らした。
「一体何と戦っているのかしら?」
唐突過ぎる言葉に、同行する二人は即座に反応が出来なかった。
「あのなぁ、俺の話聞いてたか?」
額に軽く指を押し当てながらゲーリーが尋ねる。リリスはきょとんとした表情で彼を見返した。
「私が無茶ばかりする、というお話かしら?でも、だから、私にどうさせたいのかがさっぱり分からないのだけれど」
そう言われるとゲーリーもコメットも大した具体案はあまり出てこない。
「そうだな。とりあえず仲間の射線に入るのは極力避けようや。誤射は困るからな」
ゲーリーがそう提案すると、リリスは素直に頷いた。
「じゃあ今回はセーフでしょう。コメットは銃を使っていなかったし、ケインの射線には入っていないもの」
「アウトだよ、アウト!あの時、ケインが気がついて避けてくれたんじゃないか!もし気付かずにあのまま撃ってたら、君に直撃で当たる所だったんだよ?」
これは現場を目の前で見ていたコメットの証言。
「……よく吠えるスピッツね」
ほぼ声に出さずリリスが呟いた。
「それなら、さしずめ君は山猫だな。出来る事なら首に鈴でも付けたいもんだが」
先の言葉はゲーリーにはきっちり聞こえていたようである。拠点の外付け階段を上がり始めたリリスは、背後を振り返って言った。
「試してみる?」
後にいた二人は、完全に逆光で見えないはずの彼女の口元が笑っているような気がした。

nyan
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nyan

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