第二章 首飾りと情報屋 12
「隠蔽をわざと解除していただと?」
月影の拠点に帰ってきて聞かされた事実。流夏の言葉に月影はうなずいた。
「一度、盗まれる、必要が、あった。そうすれば、首飾りは、奪われた、ことに、して、もう、妖宇香は、襲われない」
「なるほど。ですが、それならもっと前に出来たんじゃないですか?」
「やるわけには、いかなかった。俺、一人、だと、妖宇香を、助けられるか、わからない」
「そんなことなかっただろ?お前は十分強い」
流夏がそう言うが、月影は首を横に振った。
「万が一、という、ことも、ある。さっき、言った、だろ?流夏を、待って、いた、と」
「何故、流夏が来るとわかったんです?」
「俊輔に、情報が、いくように、した」
「それもあなたの仕業だったんですか」
俊輔は悔しそうに笑う。やられた、というように。
「お前、本当に何者なんだ?一体どうやって」
「企業、秘密だ」
「ですよね」
それから月影は申し訳なさそうに妖宇香のほうを向いた。
「危険な、目に、合わせた。すまない」
「ううん。月影君は、私のためにやってくれたんだもの。気にしないよ」
「ありがとう」
それを聞いて、月影は嬉しそうに笑った。
「では、解決したところで帰りましょうか。俺と麗羅は明日も学校ですし」
俊輔の言葉に麗羅も同意した。
「では失礼します。流夏さん、月影さん」
「あ、見送ります」
二人に続いて妖宇香も見送るために外へ出た。
「今日は本当にありがとうございました」
「いいえ。大したことはしてませんよ」
「またね、妖宇香ちゃん」
「はい!」
妖宇香に見送られて二人は歩き出した。中に戻ると、流夏
床に置いていた剣を拾い上げた。
「俺も行く」
「もう、行かれるのですか?」
「後日、お前の家に行く。今日は疲れただろ?」
「このまま、一緒に住みませんか?兄様」
妖宇香にそう言われると流夏は少し迷ったが、首を横に振った。
「暇なら週に二回、行く。忙しくても一回は行く」
「過保護だ、な。シスコン、か?」
「うるせぇよ!情報屋!」
二人のやり取りに妖宇香はクスクス笑う。
「わかりました。来て下さいね、兄様。なんでしたら、麗羅さんと一緒に」
「は?麗羅?なんでアイツなんだ?」
「流夏は、麗羅が、好き、だろう」
「は?」
「流夏は、麗羅が、好き、だろう」
思わず二回言う月影。そう言われて流夏は固まった。
「月影君、言っちゃダメだよ」
「焦れったい」
「わかるけど、ダメだよ」
「すまない」
そんな二人のやり取りも流夏の耳には入らなかった。
俺が、麗羅を?
「兄様、顔真っ赤です」
「う、うるさい!帰る!」
慌てて窓から飛び出す流夏。慌てすぎて頭をぶつけながら流夏はいなくなった。
流夏がいなくなると妖宇香は声をあげて笑い出した。
「兄様、動揺しすぎです」
大声で笑う妖宇香に月影は驚いていた。
「そんなに、笑う、お前を、見た、のは、初めて、だ」
「え?」
「やはり、再会、したし、な。お前の、問題は、なくなった」
「なくなってないよ」
「え?」
「月影君の探し物が見付かるまでは、私も終わりじゃないよ」
「そう、か」
ありがとう、と月影は呟いて妖宇香は笑った。