第三章 妹と目利きと名もなき鳥 5
「玲花がモテないの納得いかないんだけど」
昼休み、玲花と仲良くなった万里は二人で屋上にいた。
あの派手な女子達はそのまま帰ったらしい。そのことに、クラスの全員が喜んでいた。そして、みんな玲花に謝りに来た。いじめこそしないものの、庇わなかったことを詫びに来たのだ。
万里は何を今さら、と思ったが玲花は気にしないでと笑っていた。みんなもいじめられてたから、と。
確かにクラスには気弱で大人しそうな人が多かった。
「万里のほうが可愛いよ。美少女って感じだもん」
「それでも、玲花がこんなに可愛いのにモテないのは納得いかないよ」
「自分が美少女っていうのは否定しないんだね」
「しないよ。だって私はあんなに可愛い麗羅の双子なんだから!」
万里が当たり前だと言わんばかりに胸を張るので玲花は笑ってしまった。
「麗羅ちゃん、可愛いもんね」
「でしょ?あ、あとで麗羅のとこ行こうね!多分二人は仲良くなれるよ」
「うん!」
玲花が嬉しそうに笑うのを見て万里も笑う。そして、話が変わりつつあることにハッとした。
「それよりさ、本当に告白とかされたことないの?」
「もう、しつこいなぁ。ないってば!」
恥ずかしそうに言ったが、玲花はすぐに悲しそうに目を伏せた。
「だって、私が気味悪いのは本当だから」
「え?」
玲花は少し考えるようにすると、万里を真っ直ぐ見た。というより、万里の後ろに何かを見ているかのようだった。
「笑ってくれて、いいよ。あのね、私にはその人が能力者かどうか見えるんだ」
「能力、者?」
玲花から聞くとは思っていなかった単語に万里は驚いた。
「万里にも、見えるよ。万里は、違うの?」
玲花の桃色の瞳がわずかに輝いているように見えた。万里は驚いて玲花を見つめた。それを見て玲花はハッとした。
「ごめんね、気味悪いこと言って。わからないよね」
そう言って玲花は苦笑した。しかし万里は突然その玲花の肩を掴んだ。
「気味悪くなんかないよ!当たってるもん!」
「え?」
「私、能力者」
万里はニッコリ笑って指を鳴らした。その途端、万里の指先から小さい爆発音と共に火花が飛び散った。
「なるほど。玲花は目利きなわけね」
玲花はポカンと目を見開いて固まっていた。
「だから玲花は気味悪くなんてないよ!」
万里がまた肩を掴んでニッコリ笑うと、玲花は座り込んだ。
「これ、小さい時に笹間君の後ろに何か見えるって言ったらみんなに気味悪がられちゃって。それから、今まで誰にも言わないようにしてたの」
「能力者と目利きくらいしかわからないからね」
「万里が初めてだよ。受け入れてくれたの」
玲花は力が抜けたらしく、しゃがみこんだまま笑った。
その玲花を見て万里は、やっぱりなんで玲花がモテないのかを不思議に思った。
「こんなに可愛いのになぁ」
「ん?」
玲花はそんな万里を見て首を傾げた。