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 俺は警察官の目を欺き、八田建築の工事現場へと向かうことにした。

 あの金髪ピアス野郎には悪いことをしたとは思うが、あんな成りをしているのだから悪い奴に違いないとーー自分の愚行を棚に上げて、凛花と合流することにした。

 俺は周りに気づかれないようーー家宅侵入罪を犯す犯罪者のように細心の注意を払いながら、八田建築の工事現場に潜入してはみるが、誰の姿もなく無人だった。

「あいつ、嘘を言った訳じゃねーよな……」

 こっちは警察官一人を騙してまで、駆け付けたというのに誰の姿もなく、徒労感が全身を支配した。

「ったく。戻って警察官に謝るしかねーな、これ」

 深いため息をした俺は、そそくさと工事現場を出ようとするとーーーー

「お兄さん。人探してるの、かな?」

 いきなり声を掛けられたせいか、背筋が凍るような悪寒が全身を支配した。

 あまりにも突然の事で驚きはしたが、目の前にいるのは髪色こそ藤色をしていて珍しいが、それ以外は仮装をしている中学生の双子にしか見えなかった。

 このまま一人で警察官の元に戻り、親を呼び出される事態になるよりはーーこの子達を見つけたから逃げ出したと、嘘を言って自分の愚行をなかったようにしようとーーーー

「君達、お兄さんが警察官の所に連れて行ってあげるから、お兄さんと一緒に来ない?」

 ぎこちない笑顔ながら、彼女達を警察官の元に行かせることした。側から見れば不審者と間違われて仕方ないが、状況も状況なので、今は気にしてはいられない。

「ソノ達はね、お姉ちゃん来るの待ってるから問題ない、なのー。それより、お兄さんは誰か探してるの?」
「うん、探してるよ。でもね、お兄さんが探してる人は、ここには居なかったからさ。
 きっと、お兄さんを騙して帰っちゃったんだよ」

 子供が嘘を吐くような仕草で、俺は事情を説明した。もっとも、今までの経緯を説明することに意味を見出せなかったのが一番の理由だった。

 潔く謝りに行こうと、俺はパトカーの方に向かおうとした。

 だが、少女に制服の裾を掴まれるとーーーー

「待って、お兄さん。もしかして、それって紅いコートを着てる女の人、かな?」
「あぁ、そうだけど。どうして知ってるんだい?」
「さっきね。そのお姉ちゃんが変なストラップを付けた携帯で電話してたの。そしたら、誰かを追いかける為に電話をやめてた、なのー。
 それでね。あっちの奥の方にお姉ちゃんは走って行ってた、なのー」

 それを聞いた瞬間、俺は走り出していた。

 凛花が追い掛けた相手が志奈なのか、それとも志奈を連れた誰かなのかはわからないけれど、もし志奈が一人になりたいとしたらーー昔の記憶に思い当たる部分があったからだ。



 少年を見送った少女達は怪奇的な仮面を外すなりーーーー

「お姉ちゃん。これでよかった、なの?」
「いいのよ。二人とも良くできたから、“ご褒美”あげちゃうわ」
「やった! なのー」
「楽しみ! かな」

 後ろに隠れていた女に、少女達は純真無垢な天使のような笑顔を向け、先程の警察官が通ったであろう道を進んで行くのであった。

真口 祐輔
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真口 祐輔

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