其の一
寄る辺さえなくば見上げて寒北斗
上着から 羽毛顔立す 睦月かな
吾子と見て もやと言ひしは 寒昴
日脚伸ぶ髪に椿の油さし
待つや春 蝋梅と見て 君を知る
寒夕焼 木菟の二羽 添ひし影
帰り花 迷ひ迷ひし 日をおもふ
風邪ひきて ときの名画に 気もそぞろ
新春のことほぎも過去 中山道
あらまほしき塩大福 雪だるま
二次元の 霜柱踏み 夜の明ける
年明けの うどんも半額 もう二月
山眠る 明けの明星 腹に秘め
うしろ髪ひかれし郷愁冬の果て
甘酒も やはりぬる燗 猫の舌
冬了る 猫も杓子も 恵方巻
季重ねも知らず呟く春の風邪
文眺め 浮いつ沈みつ 春浅し
ひさかたの月不見の池に眠り藤
さかさまつ毛をなおしてやり春隣
寒いなあ ラニーニャ現象恐るべし
寒いとき きちんと寒いとほっとする
みだれ髪束ねて寒し冬の果て
碧き火で煩悩を焼く節分祭
ラードが固まったままで春隣
釈然とせずとも春は やってくる
焚き染めし 香も微かに 春浅し
絵空事いだきて眠る春の猫
立つ春に座り爪弾く楫枕
立春にカレー蕎麦を喰い月を見る
触れること叶わぬ道理 春の月
初春や 楽の音をもて会話せり
春めいて唄えど越せぬ大井川
尾の長き鳥見て笑ふ猫柳
鶏肉は恐竜の味 春時雨
春時雨 目明き気づかぬ詩歌かな
進化論 嘘かまことか 春霞
春泥や ただで転べぬ石頭
春時雨 傘のあるじは今いずこ
シナモンと蜂蜜で煮る 春林檎
春時雨あがりてさみし 仮寝の世
腹下し肉体に還る春小町
下手な鉄砲乱射事件春数句
空に青 木々早春賦 風やさし
凍て返り 釜あげうどんの薬味かな
窓にうつりし太陽を海苔に巻き
春浅し ふるさとの母の身を案じ
文眺め 浮いつ沈みつ 春浅し
ひさかたの月不見の池に眠り藤
さかさまつ毛をなおしてやり春隣
寒いなあ ラニーニャ現象恐るべし
寒いとき きちんと寒いとほっとする
みだれ髪束ねて寒し冬の果て
碧き火で煩悩を焼く節分祭
ラードが固まったままで春隣
釈然とせずとも春は やってくる
焚き染めし 香も微かに 春浅し
絵空事いだきて眠る春の猫
立つ春に座り爪弾く楫枕
立春にカレー蕎麦を喰い月を見る
触れること叶わぬ道理 春の月
初春や 楽の音をもて会話せり
春めいて唄えど越せぬ大井川
尾の長き鳥見て笑ふ猫柳
鶏肉は恐竜の味 春時雨
春時雨 目明き気づかぬ詩歌かな
進化論 嘘かまことか 春霞
春泥や ただで転べぬ石頭
春時雨 傘のあるじは今いずこ
シナモンと蜂蜜で煮る 春林檎
春時雨あがりてさみし 仮寝の世
腹下し肉体に還る春小町
下手な鉄砲乱射事件春数句
空に青 木々早春賦 風やさし
凍て返り 釜あげうどんの薬味かな
窓にうつりし太陽を海苔に巻き
春浅し ふるさとの母の身を案じ
過去へ過去へと枝の伸び 雪柳
春の風 維摩も酒をくらいたり
泪舐め春の海の潮おもひけり
靴の紐 新しくして春の気分
しのぶれば シャコンヌひとひら梅が宿
牡丹雪 旗本奴の煙管断ち
春浅し 格子の柄を 夢にみて
自分は誰なのかと問う春ふしど
あわざればかぐこともなし えんの梅
冷や飯も すぐ旨くなる 海苔茶漬け
コーヒーを飲めばざわつく春の闇
みなぞこで ながめてみたい 春の月
ガンジスの河に浮き沈み落椿
春の耳鳴り 山びこの寝言かな
夢のしじまに公魚の泳ぎけむ
ふきのとう 芽は旨いけど 育ちゃ毒
春の風邪 夢もうつつも微熱持ち
春時雨 喉が湿りて具合良し
〆張の鶴帰りばな 雨宿り
下萌えて 麒麟山降り里めぐり
越乃宿 寒空に梅 縮みけり
春の川 ドブロク流して酔い鯨
ひとつとせ 幾阿僧祇の 春の宵
馬馳せて 月稜稜たる春の嶺
ギンガムのチェックで浚う 春の風
タータンのチェックに包む 沙の梅
夢見月 小夜更けてなお 暖かし
雛人形 右と左を間違えた
春の雪 溶けて戻りし水瓶座
弥生来て 笑み交わしあった人想い
もとの水にあらず 恋も春景も
退けば寄せ 触れて散りぬる 梅の香や
わからない心さておく春の雨
東風吹きて 字をしたためし わが子かな
春風や 遠い記憶のむせかえり
赤点も十枚足せば二百点
げんにびぜつ どれもよしなに宵柳
満月のおもてにうつる梅の影
引き算ばかりの愛じゃあ身がもたぬ
慈雨に候へばこの身も春じみて
波風が立てど立たねど咲く桜
唇に 梅ふれにけり 兼六園
雨の日に 花の居眠り春知らず
幻氷や 昨日と明日のごとくなり
年度末 雑巾レース よういどん
苺食べ 熊曾のくにの火をおもう
水飴でべとべとになり 春鍵盤
おぐしを耳にかけてやりたし 夢見月
春彼岸 日にち薬も期限切れ
春時雨 車窓に横の線を引き
夢うつつ 架け橋なりや 春霞
名残雪 古里を覆いし 夢の蓋
飽きもせず 子らの夜更かし 春夜長
春の雪 ジンジャーエールの泡の中
鈍痛をかかえし頭と晴れ春日
雪解けの水で浄めし 脚の泥
春吹雪 心凍みても鳥の鳴き
センバツを 極寒の地にて視聴せり
春雷の轟きし里 夢のあと
早春の山陰山陽 ネガとポジ
春時雨 帽子のつばを濡らしてく
彼岸明け エプロンをして野菜茹で
夢の渡り廊下に ソラ 東風の吹き
寒桜 ほっこりしてるフライング
得意技 紆余曲折と春朝寝
情熱も 解けしほどけし 弥生かな
ピザを食み チーズ伸びけん春夕げ
子に習う 喧嘩上手に仲直り
わが道をふりかえみれば よもぎ萌ゆ
暗き戸も 春が霞めて暖かし
小夜曲をまといし胡蝶 夢に咲き
咲き様は生き様なりけり 春深し
庚申の塚もごきげん 朧月
母からの荷物の中に 春でこぽん
春ひなたぼっこでひるね まろい夢
春の嵐はお茶の間の狂詩曲
髪乱す東風も嫌いではない夜
寒太郎 春呼ぶいとこは暖之介
夢見草 咲くまでおどろの気配なし
ステロイド 火傷に塗りし 春の宵
コーヒーに揺れし梅影飲み干して
木蓮はもくもくれんのお友だち
夢に喰われし夜叉の棲む 桜坂
春の酒は尽きせじ と小鳥詠み
タンポポや 無利子無担保咲きにけり
春一番 絶賛暴風警報中
春二度寝 短くて長い 夢日和
たらの芽をはやし惑わす仇な山
弁当の表紙にも蝶が舞ってをり
桜を髪にさして笑顔する吾子
チューリップ 芽の出ぬ球根 土の中
ただひたすらにアイロンかけ 春昼間
満月の皿にうつせし花の影
咲くや花 もろびと知るや その儚きを
愛叫ぶ 春の匂いと一ノ糸
ご近所の バブバブがもう 入園式
お隣の ランドセルもはや リクルート
白き鳥 ゆく先の枝 花ざかり
利根川に ボート 菜の花 釣りのひと
それにしたっていい宵だな 朧影
花見酒 ウコンドリンク飲み忘れ
風邪ですか 酒焼けです と花見あと
花揺れる 散るすぐ前の 並木かな
電光石火 桜の下 淡い恋
春外套 想い出もなお 袖通し
風光る 夢観覧の指定席
歯みがくと 雀鳴く声 窓聞こゆ
春雨や 衣手濡らす 嘘まこと
花濡らす涙飲み干す地球かな
とんび啼く 我ここにありと呟いて
気の急いているうち 花の散りにけり
花見れば 恋しやと思う 何度でも
葉桜を枝に残して消える夢
花あたり 昼寝するだけの日曜日
百千鳥 雨音聞いて羽休み
影さして 凛も朧も胸のうち
陽光を背負ひて燕 飛びにけり
浮かんでは消えする某 春の空
毒される間もなく咲き散る桜かな
見る前に翔べや唄えや呑めや蜂
ふうわりと台所の泡 春の宿
朧月 吾子の寝息に寄り添いて
鳥の巣や 誰ぞ帰らん胸の内
春雷や 空を切り断ち土に入る
花冷えて 忘れし過去を思い出し
夢見草 儚く消えて魂戻り
菜の花の 灰汁をすくいし夕げかな
出会ったときの夢を見たい 春の夜
夢見草想えば君のたなごころ
曇天に切手を選ぶ卯月かな
あのひとを思い出す春 青女論
永遠など無い4月 我の有り
陰月や 木々繁るほど憂き身かな
読書して メールしてみる 鎮月や
春の雨 前頭葉に滴りて
チューリップ 記憶にはない色で咲き
霧雨に愛を訊ねる桜草
異次元に繋がりかねない春ポスト
春眠を貪り生きてみたいもの
黄砂乗る 塵と芥と絹の夢
春陰や 胎内めぐりより浅し
見えますか ええ、見えますよ 春の星
花迎え水面喜ぶ信濃川
新年度 ゼッケンをつけかえてやり
燕の子 古巣懐かし 空を飛び
よくわからぬ葉をゆがいて食らう春
春雨や 雨は降れども雲光り
雨降りて 春もたけなわ もらい水
春盛り マカロンの口溶けに似て
キャベツの葉 間に桜の花びらが
永き日や 雲海で星の数かぞえ
ぬいぐるみに 梅の安否をたずねし夜
雨粒を 春の鳥の聲 斬りにけり
雨弾き エンドウの花 咲きにけり
親雀 米屋に不法侵入中
度しがたし 猫も私情も春雨も
喉仏 甘噛みしたい春の夜
苗植月も急いて行く 矢の如く
黄砂吹く セルの二枚目ずらしつつ
永き日や 掃除機の音も間延びして
グニュグニュビーと燕鳴く 晴れ昼間
越生川 梅に若葉を着せてやり
名も知らぬ花見て憂き身をやや忘れ
木洩れ日と葉揺らす風に溶けし我
菜の花や 水面覗いて誰を待つ
自動二輪 春に焦がれて走り出し
肩の荷がおりてる 東京電波塔
こてまりが シュークリームに見えてきた
照れ隠し お国訛りでにごす てふ
隅田川遊覧春海風唄い
吾妻橋 朱でおりかえす春の舟
五月呼ぶ 雨を含んだ雲治朗
一の市 春のキャベツが待っており
かき抱く 夢と希望と五月雨と
絶え間なき 時の流れと そうめんと
朝知り じっとしている芥子の花
淡きこと水の如しの薔薇に触れ
ガリガリくん いつかは季語になるかもね
愛の言葉を数えたい 春の雨
田に水を引いてのどけし 弥彦山
梅月や 忘れし我が 差し戻り
間瀬背負い 単車の走る春の路
どしゃ降りの雨で季節掃く皐月かな
子の寝息 姪の寝息と春コーヒー
仕合わせを一二三と数える 春とチョコ
止まぬ雨 絶えぬ祈りと思う蝶
早苗踏む暴風雨鬼の如くあり
濁り水 五月で晴れるならばなれ
ですから、と説明もどかし朧月
夏隣り タオルケットを腹に掛け
晩春や 涅槃のかをりもほどきとけ
ピンクグレープフルーツを搾る暮春
薫風や じんましん撫で 空に消え
君はもう泣いてないかな夏隣
綿飴はタンポポの綿毛粗目版
キャラメルを落としてしまい 夏隣
五月晴れ 来てほしいときに来ない晴れ
新緑や 時経るごとに 深く 深く
生きて腸まで届きそう 初夏納豆
つつじ咲き 蓮葉しばし凪ぐ夕べかな
後ろ手に 扉閉め挑む 夏 地平
五月雨や 夕げの準備に味噌を溶き
初夏似合う 空想科学の湧く季節
ピノを食べ 仲直りする 母娘
藤棚や 右へ左へ横恋慕
善し悪しもわからぬままに五月晴れ
炭酸水 夏のぶんだけ買い込んで
写月に棲みたる悪魔の我に似て
田の水面 風紋刻みて夕映えす
もんどりうって春過ぎて次が来て
暫時成ると気がつくごとに若葉照り
諦めがつけばついたでかほる藤
傑作を作った先から忘れる句
残像と 皐月の風と 恋歌と
自縄自縛に気づく繭 キムチ喰い
立小便 なさる殿方多い夏
青鞜の似合う季節や 若葉揺れ
薔薇咲いて 狂気の沙汰を思いだし
水鳥や 文目の裏で接吻す
存分に エスプレッソな建午月
青葉揺らす風に帽子も飛びにけり
沖つ波 夏書に寄すは貞心尼
四つめの永久歯磨く早苗月
カーネーション 折れた茎切りまた飾る
曇天や 五月雨抱えし龍の腹
純不純 初夏の色恋に遠からず
雨音にまろみ帯びたる浴蘭月
枯れぬ間に 風に弾かるる 躑躅かな
トマトの芽 ぞうさんじょうろの水浴びて
新メニュー トロピカルパフェ 発売中
綾なして 伸び縮みする初夏の風
そうめんや つゆに氷を三つ入れ
初夏上野 遠足にはしゃぐ子供かな
バタフライ 狂気の端にとまりけり
陸橋を渡る黄色い薔薇と人
木立揺らす五月の風 吹きにけり
雷雨去り 穴子の名残 水溜まり
せざるを得ないことも保留 五月晴れ
夕顔や つるのばす先に 鉄格子
薔薇の咲く かどの床屋は喪中なり
夕立を連れ来る風に 網戸鳴り
揚羽蝶 匂袋に羽根休め
金環蝕 月と太陽が接吻す
蚕蛾や 絹に我が子の夢を見て
無くなった指輪に似てる五月かな
麦の秋 吐息に揺れる穂先かな
ぬくもりを夜風に託す写月かな
三つ四つ 口に放り込む苺かな
隠れ蓑 雨宿りには色が過ぎ
山彦や 青葉慕いて襷掛け
夏の香は 彼岸と此岸と近眼と
手に取りて愛でたし 赤き芥子の花
白き月 朱に交わりて薔薇となり
緑映え 照る太陽が夏を呼ぶ
落石注意の看板に藤絡み
かき氷 アイス買うより安上がり
新聞屋 梅雨用洗剤 くれて行く
夏の宵 文もて滂沱の雨降らし
夏めいて 手で影絵する母子かな
仮寝の夜 幾年を経て繭になり
緑なす サイクリングの帰り道
青簾 触れはせじとも風の行き
親鳥や五月雨の中 飛びにけり
雨濡れて 薔薇の深紅がなお深く
五月雨を子守唄にして寝る娘
青き峰 名前忘れし揚羽飛ぶ
初蛙 気合いを入れて鳴きにけり
空のほかすべて緑さす迦葉山
かきつばた 花花花 吉祥寺
吉祥寺 抹茶のおともに杜若
照り返す若葉も緑 迦葉山
五月朝 黄金に揺れし風呂浸り
新緑の峰に流れし雲の影
蛞蝓 ぐるぐるしないを選択中
降りそうで 早めに買い物済ます夏
雨音に浸り浸りて蓮眠り
涙する傍らに咲く罌粟の花
万緑や 思考能力を削ぎ取りて
夏帽子 ほころびを編む夕べかな
ミュール誘いしペティキュアを探す夏
醒めてまた夢の続きか花菖蒲
蝙蝠の声と戯る日暮れどき
浮き草や おそらの底で欠伸して
紫陽花や 落つる雨頬張り笑う
口吸わば月欠けもする夏の宵
紫陽花や リトマスめいて色づいて
蝸牛 ぐるぐる感が否めない
萍は日傘ですの と微生物
蛭とれば 血の滴りし白き脚
山紫陽花 足らぬ花弁に色気あり
蛙旅立つ道なりに水を撒き
御忍びで 夜の梅雨入りひたひたり
気付けば渦中恋も梅雨も人生も
大概の衝動は夜 語れ夏
「言の葉が自縄自縛」と蟻語り
うたう虫 夏はおひまをいただいて
蜘蛛紡ぐ 果てなき夢と明日の糧
酔うて候 オルゴールに似た音と
深酒や 後悔先に立たぬ夏
早乙女や 星占いで安堵する
閑古鳥 雨降らぬ間にも居座りて
魚梁壊れ おもうままゆくうおの群
ソフトクリーム10リッターなんぼかな
愛秘める G線上の夏の蝶
五月雨や じょうろが職安行くはめに
寝言して笑う娘や梅雨の夜
寝不足が解消すれば梅雨晴れ間
香水の粒子の数は星の数
母の香水つけたがる娘かな
アメンボウ 溺れ知らずで鳥喰われ
梅酒冷え 想い芳ばし雨の朝
こわいひと おもう間に熟す焼酎
おみくじに「持続せよ」とある 夏の午後
鮎釣るは 当たらぬ八卦とおのが感
木耳や 中華スープでひとっ風呂
田草取る 脚絆の祖母や懐かしき
仏法僧 ともに鳴きたや胸の内
緑陰や アッパーな奴もダウナーに
梅雨の風 猫も杓子も飛ばされて