帰路
◇ ◇ ◇
長かった入学式も終わり、明日からの実力試験に備えるようにと、そのまま下校を迎え、燐慟は帰路に着いた。
夕陽が地上を照らしつけ、街全体を橙に染めている。
「──で、なんでお前がいるんだ」
仏頂面の燐慟の隣には、神咲家の子息がなに食わぬ顔で歩いていた。
「えー、別にいいじゃん、一緒に帰っても。友達なんだから」
「……友達、ねェ…………」
燐慟は、入学式直前で言われた蓮の言葉を思い出していた。
『神咲家には逆らわないんだろ? だったら俺に従えよ』
初日から面倒くさいヤツに目をつけられた、と今さらながら後悔の念に駈られる。
「明日は楽しみにしてるよ、リンドウ」
「俺は楽しみじゃない」
そう返せば、お得意の笑顔で笑いかけてきて、
「じゃ、また明日なリンドウ」
十字路を左に曲がっていった。
燐慟はその背中を、じっと見つめる。
──彼の実力は如何(いか)ほどだろうか、と。