† 三の罪――死神と演武(ワルツ)を(陸)
(……ならば――――)
突っ込むと見せかけ、剣を投げつけた刹那に、銃を構えつつ横滑りして回り込む。
魔力の出し惜しみはしない。こちらが全力である以上、彼女ほどの達人が見逃すことはないはずだ。
「く……ッ!」
銃を払い飛ばされる。それでいい。どうせ見切れないのなら、的を絞らせるまで――速度は凄まじいが、単発の攻撃を逆手にとってやろう。
通り抜けてゆく後頭部に、裏拳でも入れ――――
「な……!?」
まさに絶速。みつきは銃を弾いて弧を描く鎌の柄で、俺の左に合わせてきた。
上位三人とそれ以外の妖屠、と言われるだけあって、さっきのロジェストヴェンなんとかとは次元が違う。
空になった右手で咄嗟に二発目を叩き込むも、すでに彼女はいなかった。
(この至近距離でも喰らわねーって、動体視力とかそういう話じゃねーぞ……筋肉の状態か、それとも未来でもあいつには見えてるってのか)
この肉眼では捉えきれぬ応酬で、その場にとどまることは死を意味する。なるべく変則的に駆け回りながら全力で次なる手段を思索するが、みつきにとっては、止まっているも同然だ。
リズムの乱れた俺は、疾風のような斬撃を堪える一方だった。真剣なら何度か解体されているだろう。
「のっ、信雄! 多聞さん、このままじゃ……」
「桜花くん。妖屠にも魔力のパターンに応じて三つのスタイルがあるのは知ってるよね」
「え、まあ……って、今はそんなこと言っている場合じゃ――」
「軍人なんかがなりがちな、完成された戦士になりたいという望みを反映して、身体能力を激増させる騎士タイプ。人知を逸した脅威に対処できるようにと魔術を扱いやすくなる魔術タイプ。そして、緑川くんのように、何もかも護りたいという想いに対応しようとして器用貧乏になる万能タイプに別れ、相性がある」
「そうですけど、彼にできる打開策を考えましょうよ……」
「考えてるよ。つぶしが効くから同じタイプを選んだ先輩としてね。そりゃ純粋なかけっこじゃ騎士タイプでも頂点たる七騎士に勝ち目なんかないさ……ほら」
不意討ちすら通用しないとあっては、素手で戦い続けるのは無謀だ。魔力弾を斉射しながら俺は疾駆し、強引に曲がって剣の元へ――――