展開されたページは、自動更新機能に由って表示された最新情報通知だった。簡便には取得出来ない裏情報ばかりを凝縮してくれたシドのデータベースだが、その中でも一般人では先ず御目に掛かれないシークレットサイトが現前している……。
シドの偽造IDと暗号認証は、会員制サイトを運営するホストコンピュータや管理者達迄をも完全に欺いているらしかった。ここは恐らく、政府関係者達のみがアクセス許可されている極秘サイトなのだろう……。シドはここの情報を読み解き、警察に追跡されていた僕の居場所を突き止め救助へ懸け付けてくれたに違いない。
そんな雑感が脳裏を掠めていた瞬間、画面上の中央に更なるユーザー認証画面が表示された。この認証を通過せずとも、現在表示されている内容は全般的に閲覧可能な様だが……? 一瞬気色ばんだが、僕はふと思い当る。
これは、会員制サイトの中でもより重要機密を扱う者達だけがアクセス許可された、限定的な裏サイトへの入り口ではないだろうか……? 極秘サイトに辿り着いただけでも情報価値は充分な物だったが、この裏サイトへ侵入出来るとすれば今後の計略に於いて更なる有益な情報を取得出来るかも知れない……。
表サイトと言えど、ここは本来一般人に対して存在を秘匿されたアクセス不可能なコミュニティだ。政府関係者以外には訪問経路が無いと言う性質上、この裏サイトへの入口が攻撃者やワーム等を誘引し、侵入後にどんな行動を取るか監視、観察する為のハニーポットで在る可能性は希薄だろう。但しハニーポット環境で無くとも、当然侵入した際の足跡から個人情報や現在地迄を特定される危険性は十分想定出来る……。僕自身は何れこの地下室から外界へ浮上しテロを決行するのみなので、身元の判明等に不都合は無いのだが……。しかし警察に現在地を探知されれば、アジトを提供し匿ってくれているシド及びクラブ関係者に嫌疑の手は波及して行くだろう。彼等に迄火の粉を降らせるのは本意では無い。
―危ない橋を渡るべきか? 試して見るだけの価値は有るが……。そんな逡巡の中、誘惑に駆られたのかパスワード解析を試行しようと両指だけが別の生物の様に鍵盤を這い始めた。
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