prologue 鏡が映すもの

 __鏡。
 生活の上でなくてはならない道具の一つで、昔から親しまれてきたもの。身だしなみを整える時や、自分の状態を確認するときなどによく使うものだ。便利な道具だと思うよ。自分で自分を見ることなんて、それこそ目玉が飛び出てでもいない限りできっこないことだもんな。
 ……でも、よく注意して見てみてほしいんだ。鏡が映しているのは、当たり前だけど人間だけじゃないんだ。周囲の背景なんかもちゃんと映しているし、光なんかも反射しているよな。霊なんかも見えるっていう人はいるが。
 ……鏡は、あらゆるものを無差別に、そして機械的に映し出すんだ。これだけは映さない、なんて都合のいい配慮はしてくれない。便利だけど、残酷なものだ。見たくないものでも否応無しに見せつけられるんだから、そう考えると酷い道具だ。
 ……なあ、他の誰かの道具を使うときって少し抵抗を感じるよな? 多分疑問を感じた人も多いだろう。何でかって言われると、それは多分その道具に持ち主の気持ちが籠っているからなんだよ。そいつの気持ちが籠ってて、そいつのモノになっているから、使いにくいんだ。
 それが信頼だとか、愛着であればまだいいんだと思う。だってそれは、決して悪い感情ではないんだから。でも、あれはそんな生易しいものじゃなかったんだ……。
 __何で、あんなことになってしまっているんだろう。何が何なのか今でも全く分からない。理解できないんだ。多分誰がこの状況に直面しても、きっと何一つ分からないだろうさ。
 いや、それは言い過ぎかも知れない。でも、少なくとも俺には理解できないんだ……。
 誰か、助けてほしい。誰でもいいから、ここから助け出してほしい。
 ……だから、今から何が俺とその周囲に起こっているのか、話しておこうと思う。
 どうか、最後まで聞いて欲しい。例え俺が助からなかったとしても、聞いて貰いたいんだ。

七ヶ瀬駿河
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七ヶ瀬駿河

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