Ⅱ―ⅴ 料理長・ジル
「ふむ。悪くはない」
腕組みをして盛りつけられた果物を眺める老人の言葉に、若い男は日に照らされたような明るい笑顔をみせた。
「ほ、本当ですかっ!?」
しかし、男が喜びの声を上げると…
「しかぁぁしっっ!!!
まだまだ儂には及ばぁああんっ!!!」
ガハハッと豪快に笑う老人を見た周りの料理人も、つられて笑いだす。まわりを包むこのあたたかい雰囲気は彼の人柄の良さによるものだ。
「ジル、いつもすまないね。あとで君の元に酒を届けよう」
品のある落ち着いた声が突如厨房の入口から発せられ、そこにいた全員の視線が一点に集中する。