Ⅰ―ⅴ 湯殿Ⅰ
片手で扉を閉めたキュリオは、大事そうに小さな赤ん坊を両手で抱え直した。
そして部屋の奥へと歩みをすすめ、湯殿へと足を踏み入れた。
柔らかい布ぬくるまれた赤ん坊を優しくあやしながら上質な衣を脱いでいく。
「体が冷えてしまうな…」
そして、きょとんと瞳を丸くしている愛くるしい彼女を布から抱き上げると
白煙の中へとふたりの姿は溶け込んでいった。
片足を湯の中にいれると、ほどよい温かさがじんわりと体中を駆け巡る。
キュリオの力により癒しや浄化作用をもったこの湯ならば浸かるだけで十分なほど素晴らしい効能があるため、あえて体を洗う必要はない。
「お前は熱くないかい?」
手ですくったわずかな水滴を赤ん坊の体にかけてみる。
すると、きゃっきゃと声をあげて頬を染める彼女。
「あぁ、気持ちがいいね」