3ー4
事件が起きたのは翌日の朝だった。
ストラは突っ伏していた机からゆっくり体を起こすと、目の前にあった本の付箋のページを開く。
『まずは心を開くことから意識しましょう。固い表情と短い返答では会話を拒んでいるように見えがちです。』
「ああもう!」
何で初対面コミュニケーションなんて本を夜通し見ているのだ、俺は!
つまりは相手のことを考え、接しやすい人になれ、そう言っているわけだ。なんとも当たり前な話だが、しかしこれができないと平和には程遠いと、ストラはがっくり肩を落とす。
「俺から話しかけるとして、何を話せばいいやら」
ストラがいくらでも話せる平和と戦争について、アインがそこまで食いつく様子は見られない。
と、すると領民とはどういった会話をしていたか、ストラは口をぽっかり開けたまま天井を見上げた。
「ああ…アインも、よく領民を褒めてるとか言っていたな」
褒めるか…テキパキしているな、とか?
うつむいて低く唸る。しばらくその状態で固まっていると、突然ドアが開いた。
「ストラ様!!大変です!」
階段を駆け下りてきたのか、息を荒くしてアインが叫んでいた。
「町に魔物が…!」