点と面

 「お前いい性格してるぜ」
「…は?」
 友人が唐突に言う。何のことだかサッパリわからない。まず褒められてるのか貶されてるのかもわからない。
「何つーかさ、あざとい?いや目ざといか。よくそこまで女子の心がわかるもんだな」
「わかんねえよ。ただ見てると何となくな」
「そこ、それ、それがすげえんだよな」
 何が言いたいんだこいつは…。
「っつか、それと性格は関係ないだろ」
「あるある。むしろそういう性格だから、目ざといのかもな。サバサバしてる癖に、実は色んな所で気が遣えてるっつーかさ、器用な感じ」
 器用…ねぇ…。
 そんなに器用なら、俺は人の行動を注意深く見たりなんかしないだろう。あいつが見ている俺の一面は、俺の中のほんの一部でしかない。さらに言えば、女子が利用しているであろう俺の立ち位置は、俺の性格から出来た一点でしかない。
 そう考えると、性格は点と面で出来ていると思う。
「やべえ、俺すげえ事に気がついた」
「なになに、モテ期でも来てるんじゃねえかって?お前には100年早いぞ」
「それもう俺死んでると思う。
 ちげえよ、性格の話。性格を構成している何がしについてだ」
「してその心は?」
「謎かけじゃねえよ。
 性格は点と面で出来てるんだ。お前が俺の事をサバサバしてるっつったのは、俺の性格の一面だろ?その一面の更に一点に、女子が使ってる気遣いの部分があると思うわけよ」
 友人はへぇ、と腰に手を当てつつ、口を開いた。
「でも気遣いはサバサバには入らねえだろ。そりゃあ人間にゃいくつも面があるだろうし、違う面があっても良いと思うが、分類はもっときっちりやったほうが良いぞ」
「マトモな事言ってやがる。でも一つ言ってやるとだな」
「おう」
「分類分けをするメリットが俺たちにはない」
「それな」
「あ、谷君おはよ!」
「おはよう滝川さん。ちょっと髪型変わったね」
「おー!よくわかったね!彼氏も気付かなかったのに!」
「たまたまだよ」
 何時ものように挨拶をしていると、じっとりとした目が俺を射抜く。
「何だよ」
「やっぱり良い性格してるぜ、お前」

如月厄人
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如月厄人

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