大阪オリーブ
 岸里瑠璃子は大阪生まれの大阪育ちで岸里駅から少し離れたところに住んでいる、そうした生粋の大阪人であるが。
 何かというとだ、料理を作る時も食べる時もオリーブを使うので母にも呆れられてこう言われている。
「あんたまたオリーブなの」
「駄目?」
 好物の湯豆腐にオリーブオイルをかけつつだ、瑠璃子は母に返した。
「こうしたら」
「駄目じゃないけれど」
「お豆腐にオリーブって合うのよ」
「いや、あんた何でもオリーブだから」
 それでというのだ。
「湯豆腐でも冷奴でもでしょ」
「だって合うから」
「焼き魚にもお刺身にもかけて」
「お刺身はそうしたらカルパッチョになるから」
「それでかけるの」
「ええ、たこ焼きもお好み焼きもね」
 勿論ソースもかけるがだ。
「そうしたらいいのよ」
「普通たこ焼きとかにオリーブはないでしょ」
「いやいや、これがいいのよ」
「瑠璃子って昔からよね」
「何でもオリーブじゃない」
 姉達も言ってきた、テーブルには同居している祖父母も父もいるが彼等は黙々として熱い豆腐を食べている。
「今だってそうだし」
「中華でも使うし」
「炒飯の油もオリーブオイルで」
「普通ゴマ油じゃないの?炒飯には」
「これが美味しいのよ」
 炒飯にオリーブオイルを使ってもと返す瑠璃子だった。
「お姉ちゃん達もしてみたら?」
「いいわよ、それは」
「炒飯にオリーブオイルなんて」
 姉達は妹の提案に引いた顔で返した、二人共湯豆腐はぽん酢で食べている。母は胡麻のたれをかけている。
「他の中華料理の油もオリーブオイルだし」
「和食でもね」
「洋食は言うまでもないし」
「特にパスタだとね」
 瑠璃子の大好物でよく自分で作って食べている。
「もうオリーブオイルないと作らない位で」
「使う量も半端じゃないし」
「何処までオリーブ好きなのよ」
「何かの料理番組みたいよ」
「いや、ああした風に使ったらね」
 実際に姉達が言った俳優がやたらオリーブオイルを使うことで知られている料理番組を意識している瑠璃子だった。
「美味しいわよね」
「あんたあの人並に使ってるわよ」
 母は笑って話す瑠璃子にむっとした顔で言った。
「オリーブオイルね」
「そうかしら」
「そうよ、そんなに使ってね」 
「いいかっていうの」
「何処までオリーブ好きなのよ」
「お醤油と同じ位かしら」
 日本人には欠かせないこの調味料と、というのだ。
「私的には」
「オリーブは調味料じゃないわよ」
「油よね」
「油を調味料並に使ってどうするのよ」
「だって美味しいから」
「そうした問題じゃないでしょ」
「そうかしら」
 こうしたことを言いつつだ、瑠璃子は湯豆腐をオリーブオイルで食べていた。とにかく瑠璃子はオリーブオイルをかけられるならどんな料理にでもかけて食べていて料理の油にも使っていた。
 瑠璃子のこのオリーブ好きは友人達もよく知っていてだ、一緒に遊んでいる時も彼女に笑って言う程だった。
「今日もお昼はパスタ?」
「オリーブオイルたっぷりかけたの食べるの?」
「そうするの?」
「ええ、そのつもりよ」
 そしてこう返す瑠璃子だった。
「やっぱりオリーブいいわよね」
「やれやれね」
「本当にオリーブ好きよね、瑠璃子って」
「部活の料理部でもオリーブオイルやたら使うし」
「それも大量に」
「美味しいし身体にいいし何にでも合うから」
 それで使っているというのだ。
「駄目かしら」
「いや、駄目じゃないけれど」
「たこ焼きにも使う?」
「お好み焼きにも」
「下にひく油もそうだし」
「かけて食べてもするし」
「マヨネーズみたいにね」 
 瑠璃子にとってはマヨネーズがオリーブオイルなのだ。
「何か違うんじゃ」
「というか瑠璃子からオリーブオイルの匂いする様な」
「そんな感じさえするわよ」
「あっ、それそうかもね」
 自分からオリーブオイルの匂いがすると言われてかえって笑って言う瑠璃子だった。
「私はね」
「そこでへこんだり怒らないの」
「かえって喜ぶの」
「そうなるの?」
「だってオリーブ好きだから、だからね」
 それでというのだ。
「そう言われて嬉しいわ、それでオリーブオイルを見てね」
「それで?」
「それで何かあるの?」
「オリーブオイル見て」
「それで」
「種類とかね、あと新しいか古いかも」
 そうしたこともというのだ。
「舐めただけでわかるわよ」
「オリーブオイルの目利き?」
「というかソムリエ?」
「オリーブソムリエなの」
「そうでもあるの」
「色々なオリーブオイル使ってきてね」
 これまでというのだ。
「そうしててね」
「それでなの」
「一口舐めただけでオリーブオイルの種類わかるの」
「あと古いか新しいかも」
「そうなの」
「それでどの料理にどのオリーブオイルが合うか」
 そうしたこともというのだ。
「わかる様になったわ」
「それ凄いわね」
「お酒の目利きみたいじゃない」
「ソムリエみたいよ」
「そうした能力も備えたの」
「そうなの、好きだから」
 それでいつも食べているからだというのだ。
「わかるわよ」
「じゃあ今度大阪の料理部でね」
 友人の一人がここで瑠璃子にこう言った。
「パスタの大会あるわね」
「ええ、そうよね」
「それにうちの料理部も出るの?」
「それで私も出ることになってるの」
 料理部員であるからだ。
「部長さんにあんたは絶対に言って言われて」
「パスタ得意だから」
「あとオリーブオイルのこともガーリックのことも詳しいから」 
 実は瑠璃子は大蒜も好きでこちらを使った料理もよく作ったり食べたりいているのだ。ただしオリーブオイル程使いはしない。
「だから言われたの」
「ご指名受けたのね」
「そうなのよ」
「じゃあそっちもね」100
「ええ、頑張るわ」
 そのパスタ大会をだ、瑠璃子は友人に笑顔で答えた。そして実際に大会に部員の一人として出た時にだ。
 瑠璃子は部活で用意されたパスタ、スパゲティのその袋を見てだった。部長にすぐにこう言った。
「このパスタにはこのオリーブオイルです」
「それなの」
「はい、これが一番合います」
 そのオリーブオイルを出しての言葉だ。
「何といっても」
「そうなの」
「他のオリーブオイルよりもです」
「それなのね」
「はい、これを絡めて下さい」
「それでないと駄目なの」
「はい」
 瑠璃子は強い声で言い切った。
「ですから」
「そのオリーブを使うのね」
「パスタの種類はカルボナーラですし」
 このことはもう決まっていた。
「そのスパゲティでカルボナーラなら」
「そのオリーブオイルね」
「それでお願いします」
「わかったわ、それじゃあね」
 部長は瑠璃子のその言葉に頷いて答えた、そしてだった。
 実際に瑠璃子が言ったオリーブオイルを使ってスパゲティカルボナーラを作って出した、するとだった。
 見事大会で優勝した、部長は優勝した後で瑠璃子に対して満面の笑顔で言った。
「オリーブオイルがね」
「よかったですね」
「審査員の人達もそう言ってたわね」
 そうだったというのだ。
「オリーブオイルが合ってるって」
「はい、そしてそのことは」
「貴女が言ったからよ」
 まさにそのお陰でというのだ。
「有り難うね、優勝出来たのはね」
「そのオリーブオイルを出した」
「貴女のお陰よ」
「そうなんですね」
「ええ、やっぱりオリーブはね」
 それはというと。
「貴女ね、これからもオリーブオイルを使う時はね」
「今回の大会みたいにですね」
「お願いするわね」 
 瑠璃子に笑顔で話した、そしてだった。
 瑠璃子は料理部でもオリーブオイルの専門家の様に扱われた、だが彼女はこのことに天狗になることはなく。
 いつもの調子でオリーブオイルをふんだんに使って食べていた、ムニエルを焼く油についてもだった。
「オリーブオイルがね」
「いいっていうのね」
「ムニエルの時も」
「実際に美味しいでしょ」
 そのオリーブオイルで焼いたムニエルを実に美味そうに食べつつ姉達に話す。
「そうでしょ」
「まあね」
「確かに美味しいわ」
「そうでしょ、本当にオリーブオイルはね」
「いいのね」
「美味しいっていうのね」
「そうなの、私はオリーブオイルがあったら」
 それでというのだ。
「もうそれでかなりいけるわ」
「全く、何処のイケメン俳優さんよ」
「何でもかんでもオリーブで」
「実際お料理作る時もやたら使うし」
「殆どあの人じゃない」
「私使う前に使っちゃう?とか言わないし」
 その俳優の様にと返す瑠璃子だった。
「もう言う前にね」
「使ってるわね」
「それもいつもね」
「本当にいいから、オリーブオイル」
 それで焼いて作ったムニエルを食べつつの言葉だ。
「だからね」
「今もなのね」
「使ったムニエル食べてるのね」
「そうよ、こうしてね」
「和食も中華もオリーブオイルで」
「洋食は言うまでもなしね」
「カレーの時も使うし」
 野菜や肉を炒める時にだ。
「タイ料理だってそうだしね」
「タイ料理にも合うの?」
「そうなの?」
「私的には。今度部活でタイ料理作るけれど」
 その時にというのだ。
「その時も使うわ」
「そういえば前にうちで生春巻き作った時もかけてたわね」
「ベトナム料理の時も」
「東南アジアのお料理にも合うのね、オリーブオイル」
「瑠璃子的には」
「そうよ、だからこれからもね」
 瑠璃子は姉達に笑って話した。
「私は食べる時はいつもオリーブオイルよ」
「やれやれね」
「本当にオリーブオイル好きね、瑠璃子は」
「まあそれならね」
「楽しみなさいね、オリーブオイル」
 姉達はそんな瑠璃子に姉の笑みで言った、今もオリーブオイルの美味しさに笑顔でいる妹に。


大阪オリーブ   完


                 2017・10・24

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