プロローグ「謎の手紙」
「なんだこれは?」
理科室にあるテーブルには一枚の紙が置いていた。
それは長い文に哲学的な文章で、正直読むに値するのか考える程に長い…。
(恐怖とは何だろうか…。
叱責された時、責められた時、いじめられた時、恐怖映像を見た時、生きている限り誰でも一度は体験した事があるはずだ。
恐怖を感じると身体の動き、思考能力を鈍らせる作用がある。
上司と部下の関係でも恐怖するあまり精神的に追い詰められ、鬱病に陥り自殺するなんてケースが昨今では話題になっている。では我々人類はどのようにして恐怖に立ち向かわなければならないか。
これを書いている私も昔はとても奇妙な人生を過ごした事がある。あまりに奇妙な話なので誰も信じはしないだろうが。まあ一旦その話は置いておき、小学生の時の話でもしよう。
誰でも一度は恐れた事があるであろう真夜中の小学校、昔の私もお化けなんかが出てくるんじゃないかと思いながらも警備員の人に鍵をもらい恐る恐る教室に忍び込んだ事がある。教室までは三階の最奥側と一人で行くのはとても勇気がいる。教室まで頑張って入った私は無事忘れたプリントを持ち帰える事が出来た。しかしその時に私を襲うお化けはおろか、ねずみの一匹すらそこに現れる事はなかった。
一件当然の事を言っているが、何が言いたいかいと言うと真夜中の薄気味悪い学校は幽霊の巣窟なんかでは決してなく、人間が勝手に作り上げた恐怖だけがつまったただの建物に過ぎないのだ。幽霊が出る、何かが襲ってくると思っていたそれは、結局の所全部私が勝手に思い込んでいた被害妄想にすぎなかったのである。では恐怖の実態とはなにか、それは恐怖そのものである。そしてこの事は当時小学生だった私だけに言える事じゃない、皆が抱えているその恐怖に対しても一様に言える事なのだ。恐怖に立ち向かう、私が最初いった言葉はこうだ。結論から言うならば恐怖に立ち向かう必要などは一切ないのである。恐怖は所詮恐怖、それが答えだ。そしてそんな恐怖の呪縛から解放される方法が一つだけある。その方法は―――)
「しね」