サイボーグとなり
豊臣秀吉は四〇〇年以上の時を経て突如蘇った、自身が城を築き天下に号令する場所とした大阪を守る為に。
だが目覚めた彼は以前とは身体が違っていた、何とだ。
外見は変わらないが身体の中は機械、彼が知るところのからくりだった。目から冷凍ビームを出して両手首を外すことが出来そこからミサイルを撃てた。ミサイルは足からも撃つことが出来右手の指はマシンガン、左手の指は一本一本が手裏剣となり飛ばす傍からまた生えており手刀からナイフの刃が出て全てを切り裂いた。
空を飛び右手はさらに回転ノコギリになり左手は注射針にも変形する。刀を出すことも出来ればミサイルだけでなく手首をロケットパンチとして発射することも出来る。
体内には核爆弾まである、秀吉はそうした完全な戦闘用サイボーグとなり転生した自分自身について思うのだった。
「わしは何故こんな身体になったのだ」
「それは決まっている」
何処からか大阪城の最上階で肖像画の礼服姿でたたずみ思う秀吉に言ってきた。
「この大阪を護る為だ」
「誰じゃ、そなたは」
秀吉はその声の主に問うた。
「わしのことを知っておるのか」
「無論、わしは大阪を護る神々のうちの一柱じゃ」
「神とな」
「お主もまた神であるがな」
豊国神社に祀られている、その為秀吉も神なのだ。
「しかしその神々のうちの代表として今そなたに言う」
「わしの復活とこの身体のことをか」
「そなたは大阪の今の主である市長を助ける戦士の一人となった」
「戦士の?」
「左様、大阪二十六戦士の一人に選ばれたのだ」
神の声は秀吉に告げた。
「市長を助け戦うな」
「わしはその為に蘇り」
「我等が市長を助け悪と戦う為にだ」
「この身体になったのか」
「あらゆる悪と戦いそれに打ち勝つ力を与えたのだ」
大阪を害するあらゆる悪と、というのだ。
「機械の力はな」
「そうであったのか」
「嫌か、蘇り機械の身体となったことは」
「何を言うだぎゃ!」
秀吉は神に対して怒鳴って叫んだ、そこにある気概はまさに天下人神にさえも向かうことを恐れぬものだった。
「わしを誰だと思うておるぎゃ!」
「百姓から天下人になった者だな」
「そしてこの大阪を築いた者だぎゃ!」
秀吉は神に言った。
「そのわしが大阪を護るのは当然だぎゃ、そして大阪を護るのならば」
「その身体、力もか」
「喜んで受けそうしてぎゃ」
「大阪を護る為に戦うか」
「そうするだぎゃ」
まさにというのだ。
「この身体与えてくれて礼を言う、そして」
「大阪とそこにいる民の為市長を助けてか」
「喜んで戦うぎゃ」
「その言葉確かに聞いた」
神も秀吉の言葉を正面から受け取り言葉を返した。
「ではな」
「わしは大阪二十六戦士の一人として戦おう」
大阪を守護する為にとだ、秀吉は神に誓った。
「この機械の身体でな」
「それではこれから頼むぞ」
「任せてもらおう」
秀吉はこの時から大阪二十六戦士の一人しかも筆頭となり大阪の為に戦いはじめた、彼の活躍は多岐に渡った。
ある商店街でひったくりがあった、するとだった。
秀吉は何処からか両手を前に出した姿勢で空を飛んでその現場に来た、マッハ二十で飛ぶ彼の動きは誰にも止められなかった。
秀吉は飛びつつひったくりに迫り彼を捕まえると。
バックドロップを浴びせ気絶させて倒した、そうしてバッグをひったくられたおばさんのところにそのバッグを持って行ってだった。
おばさんにバッグを渡して言った。
「このバッグそなたのものであるな」
「はい、そうです」
「そうか、ひったくりは今わしが成敗した」
バックドロップを受けたひったくりはアスファルトの中に頭を埋もれさせて逆さに立ったまま気絶して秀吉の後ろで背景になっている。
「そしてバッグもだ」
「今ですね」
「わしが取り返した、しかしじゃ」
秀吉はおばさんにさらに言った。
「これからは油断するでないぞ」
「ひったくりにですね」
「そうじゃ、くれぐれもな」
このことを注意してからだった、秀吉は何処かへと飛び去った。そうして次の日にはいじめっ子共をだった。
一撃でビルの壁に埋め込ませてだ、こう言った。
「二度とせぬな」
「は、はい・・・・・・」
「痛いですから」
「もうしません」
「二度と」
「そうせよ、今度すればこんなものでは済まぬ」
壁画になっている彼等に言った。
「よいな」
「わかりました」
いじめっ子達も誓った、大阪の悪は秀吉により次々と成敗されていき街の治安はかなり改善されていた。
しかし普段の秀吉はどうかというと。
大阪城公園で子供達を集めてだ、彼は昔話に興じていた。
「それでわしがな」
「うん、高野山に行ってだね」
「そうしてだね」
「お参りをして」
「お米を出してもらってだね」
「そこまでしていらんと言ったのじゃ」
子供達に茶や菓子を出して共に飲み食いしつつ語るのだった。
「わしの力ではそれ位出来てもな」
「そこまでしてだね」
「太閤さんはいらないって言ったんだね」
「好きなものでも」
「そうまでしては」
「そうじゃ、力があってもな」
例え天下人として絶対的なものを持ってもというのだ。
「その力の使い方が大事なのじゃ」
「使い過ぎたら駄目なんだ」
「自分の思うままに」
「好き勝手に使ったら駄目なんだね」
「使い方を考えろ」
「そういうことだね」
「そうじゃ、そこはお主達も大人になったらな」
成長してそうなった時はというのだ。
「しかと守るのじゃ、よいな」
「強くなってもだね」
「好き勝手したらいけないんだね」
「ちゃんとしたことに使わないといけない」
「そういうことだね」
「そういうことじゃ、しかし今の菓子は美味じゃのう」
秀吉はみたらしを食べつつこうも言った。
「幾らでも食べられるわ」
「うん、じゃあね」
「皆で食べようねみたらし」
「太閤さんが一杯買ってきてくれてるし」
「沢山食べようね」
「わしはケチなことはせんぞ」
明るく笑って言う秀吉だった、その笑顔は実に愛嬌があり親しみやすく大阪の子供達も好きになっていた。
「こうして飲み食いする時はじゃ」
「沢山食べるんだね」
「それも皆で」
「そうするんだね」
「そうじゃ、皆たらふく食うのじゃ」
そのみたらしをというのだ。
「よいな、わしもそうするからな」
「うん、それじゃあね」
「皆で楽しく食べてお茶も飲もうね」
「太閤さんの面白いお話を聞きながら」
「そうしていこうね」
「子供はよく学びよく遊びよく笑うことじゃ」
団子を食べつつ言う秀吉だった。
「それが子供じゃ」
「うん、じゃあね」
「太閤さんと一緒に食べるよ」
「それで力の使い方も忘れないね」
「そのことも」
「そうせよ、力はあってもみだりに使うものではない」
またこう言う秀吉だった、彼は悪者がいない時はいつも子供達や若者達、他にも様々な老若男女と親しみ合っていた。そうして大阪の為に働いていた。
だがその秀吉と一緒に串カツを食べて飲んでいるおっさん達がふと彼に聞いた。
「太閤さん今奥さんいるんだって?」
「大阪城の近くに住んでいるって聞いたけど」
「奥さん誰なんだい?」
「ひょっとしてねねさんかい?」
「決まっておろう、ねねじゃ」
その通りだとだ、秀吉は焼酎を美味そうに飲みつつおっさん達に答えた。
「そして捨丸と拾も一緒じゃ」
「そうか、やっぱりな」
「太閤さんの奥さんはねねさんだよな」
「ねねさん以外にいないよな」
「やっぱりそうだよな」
「大阪の神様達が三人も一緒に蘇らせてくれたのじゃ」
秀吉一人では寂しいと思ってだ、神の配慮である。
「そうしてくれたのでな」
「今はだね」
「ねねさんと一緒に住んでるんだね」
「それもお子さん達と一緒に」
「家族四人で」
「そうじゃ、家でのわしはじゃ」
今度は串カツを食べる、二度漬けはしない。
「これでもマイホームパパじゃぞ」
「おっ、天下人でヒーローでもかい」
「家じゃマイホームパパかい」
「それはいいな」
「そのギャップがいいな」
「家じゃいいお父さんか」
「うむ、ねねとは今もアツアツじゃ」
こうも言う秀吉だった。
「そして捨丸と拾が可愛くて仕方ないわ、ただな」
「ただ?」
「ただって何だい?」
「どうしたんだい?」
「どっちもねねの子ではないのじゃ」
このことも言う秀吉だった。
「これはお主等も知っておろう」
「確か淀殿だったよな」
「あの人が母親だったな」
「秀吉さん愛人いて」
「それでだったね」
「今で言うそれじゃ」
側室をおっさん達にわかりやすく話した秀吉だった。
「わしには多くの愛人もおってのう」
「それどうなの?」
「俺他の女ちょっと見ただけでかみさんに言われるぜ」
「俺もだよ」
「俺浮気ばれて離婚されかけたことあるぞ」
「昔はよかったであろう」
立場のある者が側室を持ってもと言う秀吉だった。
「だからわしもよかったであろう」
「まあ昔はな」
「そうだったな」
「昔は本当にそうだったな」
「実際にな」
「それでわしも茶々との間にじゃ」
淀殿を本名で呼んで話す秀吉だった、焼酎が実に美味いと感じつつ。
「捨丸と拾をもうけたのじゃ」
「それで今も一緒に住んでるんだな」
「大阪城の近くに」
「ねねさんと一緒に」
「淀殿は蘇っていなくても」
「そうじゃ、わしは大阪とお主達の為に戦うが」
大阪を護る二十六戦士の一人としてだ。
「戦いが終わって家に帰るとな」
「もうマイホームパパか」
「それが今の太閤さんなんだな」
「そういうことじゃ、サイボーグでじゃ」
それと共にというのだ。
「マイホームパパであるのじゃ」
「忙しいね、太閤さんも」
「折角生き返ってきたのにな」
おっさん達は秀吉の話を聞いて共に飲み食いする彼に笑って話した。
「大阪と俺達の為に戦ってくれてな」
「サイボーグになって」
「しかも家じゃお父さんでな」
「ははは、仕事と家庭は両立せんとのう」
その両方をとだ、秀吉はそのおっさん達に笑って話した。
「だからじゃ」
「こうしたこともかい」
「いいんだな」
「いいというかそれが楽しそうだな」
「そういえばそうだな」
「実際楽しいぞ、今日もこれからマイホームに帰って家族サービスじゃ」
あえて今の言葉を剽軽に使って言う秀吉だった。
「ねねと子供達と仲良くじゃ」
「じゃあ俺達もそうするか」
「家に帰ったらな」
「家族サービスするか」
「そうせよ、暖かい家があってこそわしも戦えるのだからのう」
天下人であった時の様にとだ、秀吉はおっさん達に焼酎と串カツを楽しみつつ話した。そうして家に帰ると酔っていることをねねにちょっと言われてから家族サービスに励んだ。天下人ではなく大阪と大阪市民を護る戦士からお父さんの顔になって。
サイボーグとなり 完
2017・12・22
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