修行中であるが
大阪幸雄はまだ小学生だが選挙で大阪市長に選ばれた、彼は就任する時に大阪を世界一の街にすると宣言した。
その宣言通り幸雄は大阪の市政に邁進した、その結果人口も産業も文化も何と東京を追い抜き日本一の街となった。
だが彼は満足していなかった、彼はいつも市長室で言っていた。
「日本一で満足したらあかんわ」
「目指すは世界一ですね」
「大阪を世界一の街にせなあきませんね」
「この街を」
「まさにですね」
「東京を追い抜いたのは通過点や」
それに過ぎないというのだ。
「目指すは何といってもや」
「世界一」
「それですね」
「人口も産業も文化も」
「全部世界一になることですね」
「ニューヨークも北京もパリもロンドンも超えてや」
そうした世界でも屈指の街達をもというのだ。
「大阪を世界一の街にするんや」
「そしてその為にも」
「市長はこれからも頑張っていきますね」
「大阪の為になる政治をしていって」
「そうして」
「その通りや、僕は大阪が大好きや」
愛してやまない、大阪で生まれ育っているが故に。
「この街はごっつうええ街や、けれどな」
「もっともっとよおなる」
「世界一の街になれる」
「そやからですね」
「日本一で満足せんと」
「目指すは世界一ですね」
「世界の誰もが凄いって憧れて好きになる」
幸雄は目を輝かせて話した。
「そんな街にするで」
「わかりました」
「ほな頑張っていきましょ」
「大阪を世界一の街にする為に」
「これからも」
「そうしてくで」
幸雄は市長室でいつもこう言って実際に大阪の街そして大阪市民達の為の政策を次から次に出して議会を通過させていた。そうして大阪の街は日に日に世界一の街に近付いていたが。
幸雄はまだ小学生だ、それで市長としての仕事以外にもやるべきことがあった。そのやるべきことはというと。
朝早くだ、幸雄は自分の部屋で寝ていると母親に叩き起こされた。
「もう朝やで」
「えっ、今寝たばかりやで」
「寝てるうちに朝になったんや」
夜が終わってというのだ。
「そうなったんや」
「そやかいな」
「朝になったら起きてや」
そうしてというのだ。
「御飯食べて歯を磨いて顔も洗って」
「学校やな」
「それに行くんや」
母は息子に行った。
「ええな」
「わかったわ」
「市長でもや」
「学校はやな」
「おろそかにしたらあかん」
それは絶対にというのだ。
「何があってもな」
「市長の仕事も小学校の方もやな」
「どっちもやってこそやろ」
「そや、大阪市長や」
幸雄は布団から出てパジャマを脱いで着替えつつ母に答えた、何と下着は大阪の文字が前に罹れた白地の褌だ。
「両立してこそな」
「そう言うんやったらや」
「学校の方もやな」
「頑張ってくるんや、ええな」
「わかったわ、それで今日の朝御飯何や」
幸雄は半ズボンの私服に着替え終わってから母に尋ねた。
「一体」
「茸の味噌汁とメザシや」
「その二つかいな」
「それと梅干や」
これもあるというのだ。
「あと納豆もあるで」
「納豆もかいな」
「食べるやろ」
「僕はな、けれどおとん納豆出たらな」
「無理に食べさせるわ、好き嫌いはあかんからな」
「それでかいな」
「お父ちゃんにも食べさせる、ほな着替えたからな」
それが終わったからと言うのだった。
「ええな」
「ああ、御飯食べるわ」
「そうして学校に行くんや」
息子を急かさせてだ、母も朝御飯を食べに行った。幸雄は両親や自分の弟妹達と共に賑やかな朝食を摂り。
歯を磨いて顔を洗ってから学校に行った、学校でも大阪のことを考えていたがそれでもまずはだった。
今は学校にいる、それでだった。
勉学に専念していた、彼は算数のテストの後でクラスメイト達に言った。
「今日のテストは助かったわ」
「知ってる問題出たんか」
「それでかいな」
「そや、これでも勉強もしてるさかい」
それでと言うのだった。
「知ってるとこ出てな」
「それでか」
「今日のテストは助かった」
「そやねんな」
「ああ、市長が勉強あかんとかな」
それこそというのだ。
「笑いモンやろ」
「それはな」
「やっぱり市長さんやとな」
「勉強も出来んとな」
「恰好悪いな」
「そやろ?そやからな」
幸雄は友人達に話した。
「僕ちゃんと勉強もしてるで」
「市長の仕事とか」
「合わせてかいな」
「学校にも出て」
「それで勉強もやな」
「してるで、あと戦うこともあるし」
大阪市長としてだ、このこともまた。
「それで格闘技のトレーニングもしてるで」
「大変やな、自分も」
「やらなあかんこと多いな」
「学校のことだけやなくて」
「街のこともあるしな」
「ほんま大変やな」
「それでもやるで」
幸雄は友人達に強い声で答えた。
「大阪を世界一の街にするで」
「日本一やなくてやな」
「世界一やな」
「この街をそうするんやな」
「大阪城と通天閣に誓ってな」
そのうえでというのだ。
「僕やったるわ」
「その意気や」
「市長頑張れ」
「僕等も応援してるからな」
「頑張って大阪を世界一の街にしてくれ」
「勉強も修行も頑張ってな」
「そのうえで」
友人達も幸雄に言った、そうしてだった。
幸雄は彼等の言葉を励みにして学校の勉強にも励み格闘技の鍛錬にも励んだ、そして当然ながら市長としての仕事にもだ。
励んでいた、そして大阪に脅威が訪れた時は自ら作業服になって前に出るのだった。
「今日の脅威はジャビット団か」
「はい、また連中が東京から来ました」
「大阪を攻撃しに来ましたわ」
「今度は海から船で押し寄せてきてます」
「それも大挙して」
「懲りん奴等やな」
幸雄は市の職員達の言葉を聞いて言った。
「ほんまに」
「何度も何度も来ますね」
「やられてもやられても」
「大阪に攻めてきますわ」
「それで今度の敵の指揮官ですが」
その者の話もした。
「襟立女です」
「蜥蜴みたいな顔して白い作業服着てます」
「その作業服の襟立てて恰好つけてるつもりです」
「しかもヘルメットは前後逆に被ってます」
「物凄い人相の悪い女です」
「もう凄まじく気に障る声で喚いています」
その襟立女がというのだ。
「一番でないと駄目なのかとか言って」
「そうしてきています」
「そのうえで大阪まで攻めてきています」
「ジャビット団の今回の指揮官です」
「わかったわ、ほな二十六戦士の人達はジャビット団の連中を頼むわ」
兵隊である彼等をというのだ。
「それで僕はや」
「はい、その襟立女をですね」
「倒してくれますね」
「そうしてくれますね」
「そや、何かめっちゃ嫌な奴みたいやけどな」
このことは幸雄も話を聞いてわかった。
「そいつを倒してや」
「そうしてですね」
「そのうえで、ですね」
「敵を倒して」
「そのうえで」
「そや、ジャビット団を撃退するで」
こう言ってだ、そのうえで。
幸雄は二十六戦士達と共に大阪港に向かった、すると多くの船にジャビット団の者達が乗っていた。
そしてその先頭にだ、蜥蜴をさらに目付きを悪くさせた感じの顔の白い襟を立てた作業服を着たショートヘアの女がいた。
その女がだ、先頭の船の船首で叫んでいた。
「一番じゃ駄目なんですか!?ヤジも飛ぶ位の酷い話ですよ!」
「あれか、ああいう大人になったらあかん様な」
幸雄はその襟立女を見て戦士達に問うた。
「そんな奴やな」
「ええ、本当に」
「見るからに酷い女ですね」
「それじゃあ僕達はジャビット団倒します」
「そして市長は」
「ああ、あの女倒すわ」
こう言ってだ、幸雄は二十六戦士達と共にだった。
上陸してきたジャビット団の者達と戦った、幸雄は襟立女と対峙した。襟立女は幸雄と対峙すると早速奇声を発した。
「ホンレーーーーーーーーーーッ!!」
「二重国籍女撃退アッパーーーーーッ!!」
幸雄な奇声を発した襟立女にいきなり必殺技の一つを繰り出した、するとその一撃をかわすことが出来ずまともに受けてだ。
襟立女は遥か東京まで吹き飛ばされた、そして国会議事堂の前に頭から逆さまに突き刺さってしまった。
襟立女が率いていたジャビット団の者達は皆二十六戦士達に倒された、こうして大阪の平和は守られた。
だが幸雄は市長室に帰って半ズボンのスーツ姿に戻ってから言った。
「今回の敵はやっつけたけどな」
「はい、またです」
「また脅威が来ます」
「大阪を脅かさんとする脅威が」
「また来ます」
「そやからや」
だからこそと言うのだった。
「次の脅威にも向かってや」
「そうしてですね」
「退けていきますね」
「大阪を守る為にも」
「そうしていきますね」
「そうしてくわ」
幸雄は市役所の人達に強い声で言った、襟立女は幸雄の一撃でその実力に相応しく呆気なく倒された。だが大阪の脅威はまだまだ続く。大阪を世界一の街にする為に戦え大阪幸雄、負けるな大阪幸雄。
だが朝はだ、いつも通りだった。
幸雄は母に叩きお起こされてだ、母に聞いた。
「今日の朝御飯何や?」
「今日は昨日のお好み焼きの残りと御飯や」
「朝からお好み焼き?贅沢やな」
「残りもんやけどな」
「よし、ほなそれ食べて今日も頑張るわ」
朝はまず御飯からだった、幸雄は朝は他の大阪の子供達と変わらなかった。まだまだ修行が必要な子供の一面も残っていた。
修行中であるが 完
2018・2・23
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