副参謀
 アレクシス=ロードゥは魔術師である、ある国にその立場で雇われているが最近魔術師としての仕事はない。だがそれでも多忙だ。
 アレクシスは今会議室で地図を前にして座っている、そうしてそこで国王や将軍、そして軍師達に言うのだった。
「今現在我が軍は優勢ですが」
「それでもか」
「はい、今後を考えますと」
 地図の上には青い駒と赤い駒がそれぞれ置かれている、青が自国赤が敵国の軍勢を表している。
「平野への進出はです」
「避けるべきか」
「そう思います」
 こう国王に話した。
「敵は強力な騎兵隊を持っています」
「騎兵隊と平野で戦うことはか」
「避けるべきです」
「騎兵は平野で最も有利に戦えるからな」
「敵国の騎兵隊は大陸一です」
 アレクシスははっきりと言い切った。
「槍騎兵だけでなく弓騎兵、鉄砲騎兵にです」
「魔道騎兵もだな」
「あらゆる騎兵を揃えています、それも大勢」
「だから平野部への進出はか」
「避けるべきです」
 こう言うのだった。
「今は」
「今は、か」
「はい、この平野部は大陸の要地掌握すれば我が国は各国に戦略的に有利に立てます」
「だから掌握すべきか」
「ですが」
「問題は敵の騎兵隊か」
「彼等をどう打ち破るかです」
 このことが重要だというのだ。
「その対策を確立したうえで平野部に進出しなければ」
「我々は負けるか」
「兵の数では我が軍は三倍、ですが」
 それでもというのだ。
「騎兵は遥かに劣ります」
「それ故にだな」
「敵の騎兵隊に対する策を講じましょう」
「進出はそれからでいいな」
「左様かと」
 アレクシスは王に副参謀として話した、その後で参謀や将軍達もそれぞれの意見を述べたがアレクシスの言葉があり彼等も平野部に積極的に進出しようとは言わなかった。それでまずは騎兵隊への対策を出すことになったが。
 このことは参謀が王に任されアレクシスは今度はその参謀の補佐として対策を出すことになった。だが。
 参謀と二人で彼の部屋で対策を出す中でだ、アレクシスはふとこんなことを言った。
「何か最近」
「忙しいか」
「軍隊の仕事で」
 それでとだ、参謀にどうもという顔で言うのだった。
「そちらに」
「魔術師なのにか」
「最近魔術の本読んでないです」
「本すらもか」
「読むのは兵法書に歴史書に地理の書と」
「そういうものばかりか」
「完全に軍師になってますよ」
 参謀を助けてというのだ。
「軍のその一人になってますよね、私」
「そうだな、しかしな」
「それもですか」
「仕方ないだろう」
 参謀はこうアレクシスに返した、話を返しつつ彼女にお茶を薦める。眠気覚ましと気分転換の為にだ。
「それはな」
「今はですか」
「そうだ、今あの国を破ってだ」
「あの平野部を手に入れると」
「かなり大きいからな」
「はい、だからです」
「ここはだな」
「大陸に影響力を行使しましょう」
 国家戦略としてそうすべきだというのだ。
「ここは」
「そうだ、だからだ」
「私もですか」
「今は軍師の一人として頑張ってもらっている」
「魔術師であっても」
「そうだ、わかったな」
 アレクシスに茶を渡してから自分も茶を飲んで語った。
「それならだ」
「今はですか」
「働くことだ、敵の騎兵隊はだ」
「何としてもですね」
「徹底的に叩くぞ」
「そうして平野部を掌握しましょう」
「騎兵はどうして倒すかだ」
 それが大事だと言ってだ、参謀はアレクシスと敵の強力な騎兵隊を倒す策を考えていった。アレクシスはその中でだった。
 ある策を出した、その策は何かというと。
「大砲を使いますか」
「大砲をか」
「はい、敵の騎兵隊に集中してです」
「使うのか」
「そうしましょう、そして大砲だけでなく」
 アレクシスは参謀にさらに話した。
「弓矢や鉄砲、魔術を使ってです」
「攻撃するか」
「それはどうでしょうか」
「騎兵隊が攻めて来るよりもか」
「遠距離攻撃を総動員して」
 そのうえでというのだ。
「攻撃しましょう、敵の騎兵隊は弓や鉄砲も多いですが」
「魔術もな」
「そうした騎兵にもです」
「遠間からか」
「攻撃を仕掛けましょう」
「そうするか、しかし」
 ここでだ、参謀はアレクシスに話した。
「有効な対策だが」
「それではですか」
「決め手にかけるな」
「敵の騎兵隊に対しては」
「もう一つ欲しい」
 こう言うのだった。
「そしてそれはだ」
「参謀殿がですか」
「すでに考えている」
「それは一体」
「そうだ、あの平野には川が多いな」
「川ですか」
「川を使うべきだ」
 これが参謀の策だった。
「そうしてだ」
「川の対岸に布陣して」
「騎兵隊の機動力を使わせることをな」
「止めますか」
「そうしたいがどうだ」
「そうですね、そうしてですね」
「こちらは遠距離攻撃を仕掛ける」
 参謀はアレクシスのその策について述べた。
「そうしていくということでな」
「いいですね、遠距離攻撃だけでなく」
「そうだ、地形も活かしてな」
「そうしていけばいいです、ただ敵に迂闊に奇襲を許さない」
 アレクシスはこのケース述べた。
「このことにはです」
「気をつけていかないとな」
「そうです、騎兵隊は突撃の時の衝撃力も脅威ですが」
「機動力を活した奇襲急襲も怖い」
「あの国もそれで勝っています」
「相手も騎兵隊の利点は熟知している」
「ならばその利点全てに警戒して」
 アレクシスはそれならと話した。
「遠距離攻撃と川を使い陣の側方や後方に警戒を怠らない」
「そうして戦っていくべきだな」
「そうしていきましょう、そして」
「さらにか」
「はい、一度に勝たなくてもいいかと」
 一度の会戦でというのだ。
「徐々に勝ってです」
「平野における我々の勢力を拡大していくか」
「徐々に砦や城を築いて拠点を構築していき」
 そのうえでというのだ。
「攻めていきましょう」
「相手は騎兵隊を使うだけにな」
「一気に攻撃を仕掛けて勝敗を決したいでしょうが」
「我々はだな」
「彼等がそう考えているならです」
「逆だな」
「そうです、敵の嫌がる戦略戦術で戦う」
 アレクシスは参謀に笑って話した。
「そうしていくべきです」
「その通りだな、ではだ」
「はい、この方針で対策を進めていきましょう」
「そういうことだな」
 参謀も頷いた、そしてだった。
 二人で対策を整えてそうして王に話した、王はその対策をよしとしてそのうえで平野部に進出して。
 川の対岸に布陣して堅固な陣から遠距離攻撃を仕掛ける戦術で敵の騎兵隊と何度も戦ってそうしてだった。
 平野部を徐々に進んでいき砦や城を築いていき。
 平野部を掌握することに成功した、敵の騎兵隊は消耗してしまい彼等と戦うことが出来なくなっていた。
 それでだ、王は二人に言った。
「見事だ、これでだ」
「はい、我が国はですね」
「平野部を手に入れることが出来た」
 こう参謀に話した。
「見事な」
「はい、それでは」
「この平野部をだ」
 まさにそこをというのだ。
「次は維持していきたいが」
「ならばです」
「今度はこのことでだな」
「対策を講じていきたいのですが」
 参謀は王に話した。
「宜しいでしょうか」
「わかった、ではだ」
「次はですね」
「そのことについて考えてもらう」
 王も参謀に玉座から答えた。
「是非な」
「わかりました」
「ではな」
「はい、副参謀とですね」
 即ちアレクシスである。
「考えていき」
「策を出してもらう」
「わかりました」
 参謀は頷いた、そしてだった。
 実際に平野部をどうしていくかをアレクシスと話すことになった。だがここでアレクシスは彼と二人で平野部の地図を観つつ言った。
「またしてもですね」
「参謀の仕事でか」
「魔術師の仕事じゃないですね」
 このことをぼやくのだった、この時も。
「私の本職からはどんどん」
「だからこれもだ」
「仕事ですか」
「そうだ、だからな」
「もう不平不満はですか」
「言わないでな」
「今度はこの仕事ですね」
 アレクシスもわかっている、それで参謀に言葉を返した。
「それをしろっていうんですね」
「そうだ、いいな」
「わかりました。ではここに大きな城を築き」
「軍も置いてな」
「恒久的に治めていく様にしましょう、屯田もして」
 アレクシスは参謀に次々と述べていった、魔術師の仕事はずっとしていないことはとりあえず忘れてそちらに励むのだった。


副参謀   完


                2018・6・27

作者の作品一覧 クリエイターページ ツイート 違反報告
{"id":"nov153010955037798","category":["cat0001","cat0011","cat0012"],"title":"\u526f\u53c2\u8b00","copy":"\u3000\u30a2\u30ec\u30af\u30b7\u30b9\uff1d\u30ed\u30fc\u30c9\u30a5\u306f\u9b54\u8853\u5e2b\u3060\u304c\u6700\u8fd1\u306e\u5f7c\u5973\u306e\u4ed5\u4e8b\u306f\u3068\u3044\u3046\u3068\u3002","color":"#d8ff98"}