白き龍と赤き龍 
 蒼空龍子は白き龍の血を引く龍人だ、だが人間界において誰も彼女が龍人であることを知らずに暮らしている。
 その中でだ、龍子は家で妹に言った。
「よくね」
「私達が龍人だってっていうのね」
「ばれないわね」
 いつも一緒にいて可愛がっている妹に言うのだった。
「本当に」
「だってね」
「だってっていうと」
「外見は変わらないから」
 それでとだ、妹は姉に話した。
「力さえ出さないと」
「ばれないのね」
「ええ、ただ普通にね」
「普通になの」
「お姉ちゃんだと可愛い女の子よ」
「いや、可愛いのは」
 そう言われるとだった、龍子は顔を赤くさせて妹に言葉を返した。
「それはないわよ」
「いや、お姉ちゃん可愛いってね」
「学校でも評判なの」
「可愛過ぎて」
 そのせいでと言うのだった。
「声をかけられない位にね」
「可愛いの」
「そう評判よ」
 そうだと言うのだった。
「それでね、外見はね」
「可愛いかどうかはともかく人間と変わらないから」
「力さえ出さないと」
 それでと言うのだった。
「ばれないわよ」
「そうなのね」
「それでね」
「それで?」
「お姉ちゃんだと大丈夫だけれど」
 それでもとだ、妹は姉に念を押して言った。
「この世を乱す魔と戦う時以外は」
「わかっているわ、力は出さないわ」
 龍子もこのことはわかっていて頷いた。
「絶対に」
「ええ、迂闊に力を出して」
 龍子の場合は蒼い雷だ、それが彼女の力でその雷であらゆる魔を撃って倒しているのだ。
「ばれたらね」
「駄目だから」
「そう、それとね」
 妹は姉にさらに言った、二人で姉の好物の果物の盛り合わせ様々な種類の果物を食べながらそのうえで話している。
「一人で背負い込むこともね」
「駄目なのね」
「私だっているじゃない」
 妹は姉に自分を指差して言った。
「そうでしょ」
「駄目よ、貴女はまだね」
「力が目覚めて間もないからっていうのね」
「そう、だからね」
「大丈夫よ、私だって龍人よ」
 姉と同じ一族だからとだ、妹は言うのだった。
「だからね」
「一人で戦うことは」
「それは出来るだけ避けて」
 こう言うのだった。
「いいわね」
「そうなの」
「確かにお姉ちゃんは凄い力があるわ」
 白き龍、この世を護る龍人の力の中でもとりわけ強い龍の力を受け継いでいる。他には青き龍、黒き龍、黄色い龍、赤き龍がいる。
「けれどね」
「それでもっていうのね」
「そう、あんまりにもね」
 それこそというのだ。
「相手が強い場合は」
「貴女もいるから」
「二人で戦いましょう」
「それじゃあね」
 それならとだ、龍子も頷いた。それで妹が言う通り出来る限り二人で戦う様にした。
 その中でだ、龍子は学校帰りに龍人の長老から連絡を受けた。隣町に恐ろしいまでの強さの魔が出たというのだ。
 それでだ、龍子はすぐに隣町に向かおうとしたがここでだった。
 この時も一緒にいた妹がこう言った。
「魔が出たのね」
「ええ、隣町にね」
「わかったわ」
 妹は姉に真剣な顔で答えた。
「それじゃあ私もね」
「一緒になのね」
「ええ、行きましょう」 
 こう姉に言うのだった。
「そうしましょう」
「やっぱりそうなるわよね」
「そう、言ったでしょ」
「戦う時もよね」
「いつも一緒だから」
 それでと言うのだった。
「一緒に行ってそして」
「一緒に戦うのね」
「そうしましょう」
 姉に強い声で言った、そしてだった。
 二人は即座にだった、自分達の力を使ってそうして空を飛んだ、二人は隣町まで流星の様な力で飛んで。
 隣町に出た魔のところに行った、魔は中学校の中にいてその姿は漆黒の巨大な炎を吐く狼であった。
 その狼は一匹や二匹ではなかった、それこそだ。 
 何十匹もいた、龍子はその彼等を見て自分の隣にいる妹に言った。
「いいわね」
「ええ、数が多いから」
「二人で同時にね」
「魔達全てに向けてね」
「そしてね」
 そうしてと言うのだった。
「ここはね」
「一気に倒すべきね」
「そうよ、私は蒼い雷を放つから」
「私はね」
「貴女の術を放って」
「わかってるわ、私も」
 是非にとだ、二人は話してだった。
 そしてだ、魔達に対してだ。
 龍子は一旦空に舞い上がって全身に蒼い雷を宿らせてその雷を巨大な球にさせてそうして魔達に放った。妹もだった。
 その全身に紅蓮の炎を宿らせた、燃え上がる炎を魔達に向けて放った。二人の攻撃で魔はかなり減ったが。
 魔はまた出て来た、それで二人はさらにだった。
 攻撃を続け戦い続けた、戦いが終わった時には。
 二人はもう疲労の極みにあった、その中で龍子は妹をそっと抱いて支えた。そうしてこう言ったのだった。
「あと少しでだったわね」
「ええ、力尽きてね」
「倒れるところだったわね」
「まさかこんなに魔が多いなんだ」
「学校だからでしょうね」
 龍子は妹に冷静な声で話した。
「学校は色々なことがあるでしょ」
「ええ、それはね」
「負の怨念にも満ちているわ」
「いじめとかもあって」
「この学校も多分ね」
「いじめとかも多くて」
「それでね」
 だからだと言うのだった。
「これだけの魔がいたのよ」
「そうだったのね」
「そう、それでね」
「若しもよね」
「一人だったら」
「そうよね、若しもね」
 妹も言うのだった。
「私はお姉ちゃん一人だけだったら」
「負けていたわね。やっぱりね」
「ええ、わかるわよね」
「一人でいるよりもね」
「二人の方がいいわ。それに私はね」
 ここでこうも言った妹だった。
「お父さんの血を引いてね」
「赤き龍だから」
「お姉ちゃんが白い龍で」
 それでというのだ。
「白き龍と赤き龍で」
「二人でね」
「戦えばね」
 それでというのだ。
「今みたいに凄い相手でもね」
「戦えるのね」
「そうよ、だからね」
「これからも二人で頑張っていきましょう」
「ええ、そうしましょう」
 龍子は妹ににこりと笑って応えた、そしてだった。
 二人で自分達に家に帰った、二人は日常でも一緒だった。そうして夕食を食べて風呂に入って休んだのだった。


白き龍と赤き龍   完


                 2018・7・18

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