巨乳撲滅運動
アドラジオン、本名芦原麻友の将来の目的は世界征服である。だがそれ以前に彼女がどうしても果たさねばならないと考えていることがある、それは。
「巨乳!巨乳をこの世からなくすのよ!」
「こいつまた言ってるよ」
「また巨乳のこと言ってるよ」
彼女が通っている某大学の機械工学科の面々は小柄で貧乳の彼女を見て呆れて言った。
「本当に巨乳嫌いだな」
「というか嫌い過ぎだろ」
「巨乳ってそんなにいいか?」
「あんなの飾りだよな」
「そんなの気にしなくていいだろ」
「気にしたら負けだよ」
「あんた達はわかっていないのよ」
麻友はその彼等に顔を向けて言った、外見は目不足故の目の下のクマが気になるが小柄美少女と言っていい。
「巨乳の害毒が」
「巨乳の害毒?」
「何だそりゃ」
「そんなのあるのか?」
「初耳だな」
「巨乳に惑わされて人類がどれだけ過ちを犯したか」
こう血走った目で言うのだった。
「それを思うと私はいてもたってもいられないわ」
「その過ちって何だよ」
「精々痴漢位だろ」
「悪いことだけれど人類の過ちか?」
「魔女狩りとか十字軍の方が酷いだろ」
「愚かな。魔女狩りも十字軍も確かに過ちだけれど」
それにより恐ろしいまでの酸鼻な事態が起こったからだ、このことは麻友にしてもわかっているこだ。
しかしだ、ここからが麻友が麻友たる所以だった。
「巨乳は人類を惑わし道を誤らせてきたのよ」
「具体的にどういうことだよ」
「そこがわからないんだよ」
「巨乳ってそんなに悪いか?」
「弾圧とか虐殺の方が問題だろ」
「実際にそれで酷いことになってるしな」
「巨乳派そのあらゆる弾圧や虐殺の元凶なのよ」
麻友の脳内ではそうなのだ、彼女の中だけで完成されている話である。
「そして私は巨乳撲滅の為に!」
「また変なことするんだな」
「マジックハンド開発したり」
「おかしなマシンの設計図描いたりか」
「そうするんだな」
「そうよ、悪を倒す為に」
まさにその為にというのだ。
「私は戦うわ!」
「どう見ても世界征服よりそっちを優先してるよな」
「ああ、ミスコン批判する団体みたいだな」
「フェミ言ってる学者みたいになってるな」
「ミスコン?フェミ?どうでもいいわ」
麻友はそんなことには一切興味がなかった。
「私にとっては。問題はあくまでよ」
「巨乳か」
「巨乳こそが問題か」
「そうなんだな」
「そうよ、私は今度はね」
その考えをここで言った。
「巨乳を傷つけずに中の脂肪だけを吸引して貧乳になる吸引機を開発するわ」
「巨乳を?」
「大きな胸をか」
「そうするっていうのか」
「そうよ、例えば日笠〇子さんや伊〇静さんがよく演じている巨乳キャラみたいな見ているだけで全部切り取りたくなる胸」
これまたあからさまに言う麻友だった。
「ああした胸は見ているだけで殺意抱くけれど」
「アニメキャラに殺意抱くなよ」
「幾ら何でも大人気ないだろ」
「それ掲示板荒らす奴と変わらないぞ」
「キャラを叩くのもよくないが演じている人は絶対に叩くなよ」
「演じている人は別だからな」
「私は演じている人は叩かないわ」
麻友もこのことは弁えていた、人間として最低限の常識だからだ。
「けれどね」
「胸はか」
「それはか」
「その吸引機で」
「そうよ、巨乳という巨乳を吸い込んでいって」
それを形成している脂肪をというのだ。
「この世から巨乳を撲滅してやるわ」
「本当にいかれてるな」
「文字通りのマッドサイエンティストだな」
「というか世界征服よりそっちだな」
「どう見てもな」
巨乳撲滅の方に執念を燃やしている、誰が見てもそうだった。そして実際に今麻友は巨乳のことしか頭になく。
その脂肪吸引機の設計図を徹夜で完成させた、そうして行った。
「よし、これでね」
「後は開発か」
「そうするんだな」
「そうよ、スポンサーを探して」
お金を出して開発の設備とそれを造る素材を提供してくれるだ。
「そうしてね」
「実際に開発してか」
「この世の巨乳全てから脂肪を吸い取って」
「それで世界から巨乳を消すか」
「自分達で勝手に陸も空も海も移動して」
そうしてというのだ。
「巨乳を見付けると襲い掛かり」
「そしてか」
「巨乳を消していく」
「そんな機械にするんだな」
「そうよ、その設計図が出来たのよ」
今そうなったとだ、麻友は徹夜明けの疲れがはっきりと出ている顔で叫ぶ様に言った。コーヒーの香りが身体から漂っている。
「今ね、ではスポンサーを探すわ」
「問題はそれが見付かるかだな」
「何かここからも色々ありそうだな」
「というか見付かるか?そんなスポンサー」
「こんな変なのにお金や設備出す企業」
「そんな変り者の企業この世にあるのかね」
皆首を傾げさせた、このことには。だが麻友はこの方面でも努力を努力を思わないその行動力を発揮し。
企業という企業を回ってでも決意してだ、そのうえで。
遂にその企業を見付けた、彼女の脂肪吸引機と聞いてそれでこれならと思ってだ。実は企業回りをして二社目で見つかった。
その話を聞いた企業の社長は麻友自身と面会してすぐにこう言った。
「うん、いいね」
「私の発明はですね」
「脂肪吸引機、いいじゃないか」
「そうですよね」
「これを我が社で販売すれば」
「はい、この世から巨乳はなくなります」
「いやいや、肥満している人のお腹やお尻に付けて」
「えっ!?」
麻友は社長のその言葉に目を点にさせた、実は彼女は気付いていなかったのだ。
「それは」
「だからだよ、世の中肥満している人もいるじゃないか」
「それはそうですが」
「そうした人のお腹やお尻に付けて」
脂肪が付いているその場所にというのだ。
「そうしてね」
「その脂肪をですか」
「吸える様にすれば」
それでというのだ。
「一気にダイエット出来て健康にもなるじゃないか」
「それはその」
「まあその後の肌の問題もあるが」
脂肪に張り出され膨張している肌が縮小したるむ、その肌の問題はというのだ。
「まあそれはそれでね」
「別にしてですか」
「そうだよ、脂肪吸引機を売り出せば」
巨乳ではなく肥満を見てだ、社長は麻友に目を輝かせて言うのだった。
「これは我が社にとって大きな利益になるよ」
「左様ですか」
「是非採用させてもらうよ」
社長は満面の笑みで太鼓判を押した、実はこの企業は美容関係だ。麻友は企業選びには無頓着で最初は何とテーマパークに売り込んで当社に合わないと言われている。
しかしだ、その美容関係の企業の社長にはこう言われたのだ。
「これは世界中に売れるな」
「肥満対策として」
「うん、そうなるよ」
社長は満面の笑顔で言った、そうして麻友からその吸引機の設計図を高額で買い開発と製造を主導してもらった。
社長の予想通り吸引機は世界に爆発的に売れ多くの人の脂肪を吸引して彼等の肥満を救った、弊害は麻友の設計が完璧だった為なく事故がないことも好評だった。
特許を持っていた麻友にも彼女が所属している大学にも桁違いの収入が入った、だがそれでも麻友は言うのだった。
「何でこうなるのよ!」
「よかったな、お金入って」
「自分自身にも大学にもな」
「これはハッピーエンドだな」
「ああ、誰がどう見てもな」
周りはこう言った、しかし麻友は不満を爆発させて言うのだった。
「私は巨乳を撲滅したいと思っていたのに!」
「巨乳より肥満だろ」
「世の中そっちの方が問題だからな」
「それじゃあそれでいいだろ」
「お金も入ったし」
「私は巨乳を撲滅したいの!」
あくまでこう言うのだった。
「それなのに肥満なんてどうでもいいものに」
「そこまで言うなら自分で開発しろよ」
「今回のことでお金かなり入っただろ」
「自分の研究所とか作れるだろ」
「そうなったらだろ」
「そんなの法律で禁止されてるわよ」
ここでこれを出した麻友だった。
「無許可で色々造られないし大量破壊兵器だの変なのは日本厳しいし」
「いや、世界征服目指してるんだろ」
「それで法律言うか?」
「それ気にするか?」
「私の目的はまず巨乳撲滅よ」
麻友は真剣な顔で反論した。
「それが問題だから」
「怪しい研究所も立てられないってか」
「そう言うんだな」
「そうよ、ここはまた計画の練り直しよ」
かといって諦めることはしない、この辺りはマッドサイエンティストだ。マッドサイエンティストは諦めることはしないのだ。
「あらためてね」
「また巨乳撲滅の何か考えるか」
「そうするんだな」
「そうよ、今度は何を造るかよ」
麻友はその目を燃えさせていた、そうしてあらためて巨乳撲滅に動くのだった。彼女にとってそれは最早世界征服よりも遥かにそれこそ天と地程違うまでに重要で高位にあるものになってしまっていた。
巨乳撲滅運動 完
2018・7・20
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