心霊探偵河島
河島洋平は河島探偵事務所の責任者である、彼自身は陰が極めて薄いがそれでも彼への仕事の依頼は尽きない。それは彼が猫でも犬でも誰でも見付けて浮気調査も事件の解決も全て完全に解決してくれるからだ。
それは今回も同じでだ、彼はある男から依頼を受けていた。
「実は私の妻のことで」
「浮気調査ですね」
「はい、それをお願い出来ますか」
こう言ってだ、冴えない外見の男は河島に答えた。
「是非」
「はい、では奥さんの写真を見せてくれますか」
「こちらに」
男はすぐに三十近くでやけに色気があり服も派手なミニスカートの美女の写真を出した。グラビアアイドルがそのまま年齢を重ねた様なスタイルだ。
「これが妻です」
「奥様の身辺をですね」
「はい、見て頂いて」
そしてというのだ。
「妻を調べて欲しいのです、結婚して四年になりますが」
「最近様子がおかしいと」
「いえ、実はです」
「それ以前からですか」
「結婚した当初から」
何かと、というのだ。
「様子がおかしいので。ずっと違うと思う様にしていましたが」
「我慢出来なくなった」
「はい、ですから」
「この度ですね」
「身元調査をお願いするのです」
「わかりました、ではこれより」
「妻の浮気調査をですね」
男は河島に頼み込む様にして言った。
「してくれますね」
「これから。それで奥様のお仕事は」
「専業主婦です、妻の実家の羽振りがいいので」
「お金には不自由していませんか」
「はい、それで」
「わかりました、では浮気調査をさせて頂きます」
こうしてだった、河島は依頼を受けてだった。
男の妻の浮気調査をはじめた、彼は男の住所も聞くとすぐにだった。
男が去ってから幽体離脱をして男が家に帰るよりも先に彼の家に魂を飛ばして向かった。するとその家では。
写真の女と老人の男が抱き合っていた、そうして。
ベッドの中でもつれ合った、そのうえで囁き合っていた。
「お義父さん、あの人が帰ってくるまでに」
「うん、今日もね」
「抱いて下さい」
「わかってるよ」
何と男の妻と男の父親が浮気をしていた、これには河島も驚いたが。
男が帰るまでにことを済ませ後は何もなかった。とはいかなかった。
妻は夫の父親だけでなく夫の弟とも同居していたが。
夫が寝てから彼の寝室に入ってだ、彼ともだった。
「いいわね、今夜も」
「いいよ、義姉さん」
今度は兄嫁と義弟であった。
「今日もしようね」
「そうしましょう」
河島はこのことにも驚いたがこれで終わりではなく。
妻は次の日夫が会社に出て夫の弟が大学に行くとだ、夫の父親と朝から交わった後で。
外に出てだ、出会い系で知り合った男とだ。
ホテルで関係を持っていた。
「奥さんと会うのははじめてだけれど」
「何かしら」
「いつもかな」
「ええ、いつもこうしてるわ」
こう言って自分から積極的に男と交わった、そして。
午後は声をかけてきた若い男と午前とは別のホテルに入りその後でスイミングスクールに行ってだった。
そこのインストラクターを自分から誘惑して子供用のプールに入ってから鍵をかけて関係を持った。そして夜はまた夫の弟とだった。
次の日は自分を囲んで絡んできたチンピラ達に自分から言って公園でこっそりと遊んでそうしてからだった。
部活帰りの中学生の子に声をかけて車の中で、それから何と熟帰りの小学生にもだった。その次の日は隣のご主人や出会い系の男と様々なコスプレで楽しんだ。
また次の日は夫の父親も家に出ていないので宅配の男を誘惑しその後は家に若い男の子を誘ってだった。とかくだ。
男の妻の男性遍歴は無茶苦茶だった、河島は一週間のうちにこの男の妻の浮気現場を一週間のうちにだ。
何と三十回も見た、相手はのべ二十人は下らずその相手にははじめて顔を合わせる相手も多かった。妻に憑いてその男性遍歴を詳しく調べると何と結婚してからこれまで数百人の男と関係していて自分の妹の夫や甥、夫の父親や弟以外の彼の親戚、夫の上司や同僚や取引先、夫の祖父や家の檀家の住職等最早きりがなかった。しかもどの相手も自分から誘っていた。
それでだ、一週間後事務所に来た男にこう確認を取った。
「あのですね」
「何でしょうか」
「お話して宜しいでしょうか」
こう前置きして言うのだった。
「詳しく」
「お願いします」
これが夫の返事だった。
「その為に調査を依頼したのですから」
「お金も払ってですね」
「はい」
「実は四年間のこともわかりまして」
結婚してからのこともというのだ。
「奥様の」
「そうなのですか」
「そのこともお話して宜しいですね」
「是非共」
男は弱いが確かな声で答えた、それを受けてだ。
河島は男に彼の妻のその遍歴を心霊写真、彼の特技の一つである幽体の時に観たりわかった事実をカメラに出す技術で男に証拠として出した。どの写真も決定的どころか決定そのものとなるハードなものばかりだった。しかもその数が膨大だった。
その写真達を見て男は何度も気を失った、その度に河島に起こされてだ。そうしてから腰を抜かして言った。
「あの」
「驚かれましたね」
「妻はその」
「浮気をしていました」
「浮気どころじゃないですよ」
男は河島に死にそうな顔で言った。
「私の同僚に上司に部下に親戚の男と大抵で」
「しかもですね」
「私の親父や祖父、弟ともじゃないですか」
近親相姦と言っていいレベルではなかった。
「何ですかこれ」
「何といいますか」
「お隣のご主人に近所の男の子、小学生にその辺りのチンピラとか檀家の住職さんとか」
「無茶苦茶ですね」
「これはもう」
「あの、どうされますか」
「どうしましょうか」
男は完全に思考停止していた、浮気は覚悟していたが流石にここまでは想像もしていなかったからだ。
「これは」
「私は探偵でして」
それでと言うしかなかった、河島も。
「ですから」
「家庭のことはですか」
「貴方がです」
まさにというのだ。
「お考え下さい」
「そうなりますか」
「はい、ただ」
河島は男に唖然としたまま言った。
「ここまで凄い方は」
「探偵さんもですか」
「知りません」
見たことも聞いたこともなかったのだ。
「とても」
「やはりそうですか」
「何人かと浮気している方はいました」
そうした者はというのだ。
「そうした人は。ですが」
「何百人はですか」
「一日に何度もですし」
「近親相姦もですね」
「ここまで凄い方は」
到底というのだ。
「なかったですから」
「そうですね、正直どうすればいいか」
「あのですl」
河島は男を気遣って言った。
「くれぐれも早まったことは」
「それはですね」
「しないで下さい、何しろです」
「何しろ?」
「これは貴方に見せた最悪の未来です」
「最悪の?」
「はい、貴方の中に幽体で入ってお見せした最悪の未来で」
こう種明かしをするのだった。
「浮気調査で衝撃を受けられる方も多いので」
「幽体で入られて」
「そしてこうしたものをお見せして事実が悪くても」
つまり浮気をしていてもというのだ。
「驚かれない様にしています」
「そうだったのですか」
「実はまだ一週間経っていません」
河島は男にこのことも話した。
「貴方は今私とお話をはじめたばかりです」
「そうでしたか」
「これも霊能力でして」
それの一つだというのだ。
「幻視の応用です」
「左様でしたか」
「ではこれよりです」
ここでまた言った河島だった。
「調査をはじめます」
「はい、あらためてといいますか」
「現実にです」
「では宜しくお願いします」
「結果がわかり次第ご連絡します」
河島はこう言って男の依頼を正式に受けて調査をはじめた、すると男の妻は浮気はしていなかった。だが。
その調査結果にだ、男は眉を顰めさせてこう言った。
「PCエンジンですか」
「はい、ご存知でしょうか」
「大昔のゲーム機ですね」
「そうです、そしてMSXです」
「それは大昔のパソコンですね」
「あとPC88です」
河島はこのパソコンの名前も出した。
「奥様は他にもファミコンも」
「私が子供の頃、いえ」
「もうその頃はですね」
「スーパーファミコンでした」
男の子供の頃はというのだ。
「ファミコンはもう殆ど」
「遊ばれていませんね」
「はい、とても」
「ですが奥様はそうした機種のゲームに凝られていて」
そしてというのだ。
「ご主人がお仕事の時は」
「いつもですか」
「ご自宅でそうしたゲームに励まれ」
プレイに熱中してというのだ。
「外にソフトを買いに行かれています」
「そうでしたか」
「中古ゲーム店に」
「だからですね」
「はい、よく外出もされて」
「不審な行動に見えていたんですね、僕からも」
「そうかと、そして揃えているソフトは」
それはというと。
「どうもかなりのものの様です」
「PCエンジンやMSXのですか」
「かなりのものの様です」
「そうですか、それで浮気は」
「一切されていません、ゲームに熱中しておられます」
「だといいですが」
このことには男はほっとした、かくして河島の今回の調査は終わった。そうして次の依頼を受けるのだった。
心霊探偵河島 完
2018・7・21
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