どこまで大きいのか
クラテリス=メリディエスはアルネブと一緒に宇宙の哀しみの星屑を集めてそうして星屑から哀しみを取り除くことを仕事にしている、宇宙の人達から哀しみを取り払って哀しみが消えた星屑達で宇宙を奇麗に飾っているのだ。
その仕事の途中にだ、アルネブはクラテリスに尋ねた。
「前から思っていることだけれど」
「何?」
「クラテリスって普段は小さいよね」
今は実際に小さい、アルネブと同じ位の大きさだ。
「けれど本来は」
「ええ。私は大きい種族だから」
クラテリスはアルネブにこう答えた。
「本来の姿は大きいの」
「巨人だよね」
「そうよ」
「本当の大きさは一体どれ位なの?」
アルネブはクラテリスに尋ねた。
「それで」
「内緒」
これがクラテリスの返事だった。
「そのことは」
「えっ、内緒なんだ」
「だって言ったら」
「言ったら?」
「アルネブがショックを受けるから」
だからだというのだ。
「内緒にするの」
「そうなんだ」
「私達の種族はとても大きいの」
「メリディエスの一族はだね」
「そう、だから」
「僕が聞くとショックを受けるから」
「だから言わない」
こう言うのだった。
「あえて言わない」
「そうなの」
「そう、それで」
「僕の前ではなんだ」
「手の平サイズが基本で」
彼の手の平に乗る位の大きさでというのだ。
「そして今が最大」
「うん、僕と同じ位の大きさだね」
「それ位で止めているの」
「もっと大きくなるよね」
「そうなれて」
「本来の大きさは」
「内緒」
またこう言うのだった。
「そういうことにするから」
「ううん、じゃあね」
「そう。この話はね」
「もうしないんだね」
「そうするから」
こう言ってだ、そのうえでだった。
クラテリスは実際にアルネブには年齢のことは内緒にしてだ。彼と共に哀しみの星屑を集める仕事を続けていった。
だが実家に帰った時にだ、彼女は一族の長老にこんなことを話された。
「御前は最近地球でよく仕事をしているな」
「はい」
クラテリスは長老にすぐに答えた。
「あそこには知的生命体が多くて」
「その分哀しみもだな」
「多いので」
それ故にというのだ。
「よく仕事をしています」
「そうだな、あそこでは昔からな」
「この仕事をしている人達がいますね」
「それであそこの人達とも付き合いがあったんだ」
「そうでしたか」
「ああ、それでご先祖様だが」
長老は酒を飲みつつこんなことを話した。
「一回こうした話をしたんだ」
「どういった話ですか」
「わし等は今は本来の大きさだな」
「はい」
クラテリスは二十五メートルの高さだ、長老はその彼女よりも頭一個分以上高く三十メートルはある。
「そうですね」
「これがな、昔地球にはな」
「恐竜がいたのでしたね」
「そうだ、恐竜になるとな」
長老はこの生物の話もするのだった。
「もうわし等よりも大きい種類もいたんだ」
「そうでしたか」
「相当に大きかったらしいな」
「恐竜のいる星はこの宇宙に他にありますね」
「ああ、しかしわし等の担当する星にはないからな」
「だからですね」
「わし等は知らないからな」
恐竜をその目で見たことはないというのだ。
「だからこう言うが」
「そうですか」
「ああ、しかしな」
「恐竜はですね」
「かなり大きくてな」
それでというのだ。
「襲われて怪我をする人がいたらしい」
「それは怖いですね」
「それで恐竜のずっと後に巨人が出たが」
「巨人。私達ですか」
「いやいや、ダイダラボッチという神様というかな」
「そんな巨人ですか」
「この巨人を見たご先祖様もいたんだが」
長老はクラテリスにこの巨人の話もした。
「これがもっとな」
「恐竜より大きかったのですか」
「わし等を踏みつぶせる位だ」
「えっ・・・・・・」
長老のその話にだ、クラテリスは思わず一瞬言葉を失った。そしてそのうえで長老に驚きから返ったうえで聞き返した。
「私達をですか」
「そうだ、地球の日本という国があるが」
「私とパートナーも何度も行っています」
アルネブもというのだ。
「あの面白い国ですか」
「あの国の一番大きな湖があるな」
「琵琶湖ですね」
「あの湖はダイダラボッチの足跡という」
「あの大きな湖がですか」
この話にだ、クラテリスは思わず絶句した。
「それはまた」
「信じられないな」
「とても」
「しかしな」
「そう言われていますか」
「しかもあの国で一番高い山はな」
「富士山ですね」
クラテリスはまた名前を出した、先は湖で今度は山だったが日本の地名は長老より現在その国に行っている彼女の方が詳しかった。
「あの火山ですね」
「あの山に座ったという」
「あの高い山にですか」
「そうらしいな」
「一体どれだけの大きさですか」
それはクラテリスにも想像出来ないまでだった。
「それでは私達なぞです」
「踏み潰されるな」
「はい、それも相手が気付かない位に」
踏み潰したその方、ダイダラボッチがというのだ。
「大きいですね」
「それこそわし等は虫だ」
ダイダラボッチと比べればだ。
「もうな」
「そうですね」
「そうした巨人もいたらしいな、地球には」
「宇宙にそこまで巨大な種族は」
「聞かないな」
「五十メートルや百メートルはあります」
自分達の倍以上の大きさの種族の存在はクラテリスも知っている。
しかしだ、そのダイダラボッチ位の大きさはだった。
「ですがそれでも」
「高さにして何キロだろうな」
「わかりません」
「そうだな、しかしな」
「かつての地球にはですね」
「そこまで大きな巨人がいたらしいな」
長老も唸って言っていた、語る彼の方も衝撃を受けているのだ。
「地球、そして宇宙には」
「恐ろしいですね」
「全くだ、上には上がいるというが」
「大きさもですね」
「その様だな、噂では大きさを無限に変えられる恐ろしい種族もいるというが」
「若しやダイダラボッチというのはその種族が地球に来ていたのでしょうか」
「それはわからない」
そこまではというのだ。
「しかしな」
「この話はですね」
「知っておくといい」
「わかりました」
クラテリスは何とか冷静さを保ちながら長老に応えた、そのうえでアルネブと共に行っている仕事に戻った。
そしてだ、仕事の途中に彼に言うのだった。
「私の大きさは言わないけれど」
「うん、それはもうわかっているよ」
アルネブもそれは既にだった。
「だからね」
「そうね。けれどね」
「けれど?」
「宇宙はとても広いわ」
その広さたるや途方もないものだ、その中に無数の銀河系の様な何千億もの恒星が集まったものが存在している程だ。
「だから中にはね」
「宇宙の中にはなんだ」
「上には上がいるわ」
こう彼に言うのだった。
「本当にね」
「それどういうこと?」
「言った通りよ」
こうアルネブに答えた。
「今ね」
「上には上がなんだ」
「私の大きさなんて」
長老から話を聞いたダイダラボッチと比べればというのだ。
「何ということはないわ」
「そうなんだ」
「けれど内緒にするわ」
アルネブにはというのだ。
「貴方に言うには私は大き過ぎるから」
「言うと僕がショックを受けるからなんだ」
「そうよ。だからね」
それでとだ、クラテリスはさらに話した。
「言わないわ」
「そうなんだ、じゃあ僕はいいけれどね」
それでとだ、アルネブはクラテリスに笑って返した。
「それなら」
「そこで納得してくれるのね」
「僕はそれでいいよ。それでね」
「お仕事ね」
「ええ、お仕事だけれど」
アルネブは今度はそちらの話をした。
「今回もね」
「かなりよね」
「多いよ」
そうだというのだ。
「やっぱり知的生命体が存在していると」
「その分ね」
「哀しみがあるから」
「地球には沢山の知的生命体が存在しているから」
「人間をはじめとしてね」
「犬や猫といった生きものも哀しみを感じるし」
知能、それがあるからだ。
「だからね」
「哀しみが一杯ある星だから」
「哀しみを少しでも取り除いていこう」
「わかったわ」
クラテリスはアルネブのその言葉に頷いた、そしてだった。
アルネブの手の平位の大きさになってそのうえで地球での仕事をはじめた。今はダイダラボッチのいないその星において。
どこまで大きいのか 完
2018・7・27
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