組織の正体と黒幕
 北村リズはかつては普通の女子校生であり今も表向きはそうである、だが家族旅行の際に謎の組織に家族と共に襲撃され両親は死に自分も瀕死の重傷を負った斎にその場に居合わせた教授によってサイボーグ技術を施されたうえで一命を取り留めた。
 それからは両親を殺し弟を行方不明にし自分に瀕死の重傷を負わせていた組織と組織に関わる政界の要人や財界等の経営者達を暗殺していっていた。だがその中で。
 リズはある政界の要人を暗殺して教授の家も戻った時にだ、教授にどうかという顔で話した。
「最近気付いたことですが」
「政界といってもだね」
「あの、今の政権やそこに近い人達は」
 これまで暗殺した中にはとだ、リズは教授に話した。
「いないですが」
「前の政権、そして今の野党とだね」
「野党に近い企業ばかりですが」
「そうだね、実は私は防衛省とも関係があるんだ」
「防衛省、自衛隊ですか」
「兵器の開発には関わっていないがね」
 リズに笑ってこのことも話した。
「どうも私の技術は異端らしくてね」
「サイボーグ技術とかは」
「自衛隊はそうした技術は好きでないらしいんだよ」
「如何にもありそうな話ですが」
「自衛隊は案外そうした系統の兵器は好きでないらしくてね」
「だからですか」
「私は自衛隊の兵器開発には関わっていないよ」 
 瀕死の重傷を負ったリズを助けるまでの技術を持っていてもというのだ。
「けれど医学等の分野ではだよ」
「関わりがありますか」
「そうだよ、そして案外防衛省や今の政権、与党はね」
「悪いことに関わっていないですね」
「いても君の家族に何かする様な」
 そうした悪事にはというのだ。
「関わっていないよ」
「そうですか」
「そう、けれど君もわかってきたね」
「はい、案外ですね」
「今の野党やマスコミ、知識人はね」
「色々関わっていますね」
「君を殺そうとしてご両親を殺めた組織にね」
 教授の目が鋭くなった、そのうえでリズに言うのだった。
「関わっているんだよ」
「裏業界にしても」
「まずマスコミだよ」
 この世界が問題だというのだ。
「マスコミは情報を集める、そしてその情報を報道出来るね」
「はい」
「そう、情報をどんどん手に入れて流せるけれど」
「その長せる情報をですね」
「自由に選べるんだ、何でも知ると強い」
 そのこと自体が力になるというのだ。
「マスコミは自分達が集めた情報を自由自在に流したり流せなくしたり出来るんだ」
「報道する自由じゃないんですね」
「逆に報道しない自由もあってね」
「お父さんとお母さんを殺した組織も」
 その実態もわかってきた、あるならず者国家と関わりの深い組織でその国の工作員上陸地点にリズの一家がいたので口封じに全員襲撃して射殺したのだ。
 そこに防衛省もっといえば自衛官達と共に博士が来て工作員や組織の者達を捕らえようとしてそれは出来た、だがリズの一家を助けるには間に合わなかったのだ。
「その存在もですね」
「名前は出てもね」
「実際に何をしているかはですね」
「関係者達もね」
 そういったこと全てがというのだ。
「わかっていてもね」
「報道しないことも出来て」
「実際に報道していないんだ」
「そういうことですか」
「そしてマスコミは知識人と縁が深くて」
「知識人にもあの国や組織との関係者がいて」
「多いね」
 リズはこのことも既に知っている、だからこそ言うのだった。
「そうだね」
「はい、私も何人も殺してきました」
「作家なり大学教授なりね」
「そうでした」
「そして野党もね」
「あの国や組織に関係ある人が多い」
「そうだよ、残念だが我が国にはああした連中もいるんだ」
「ならず者国家と関係の深い組織と人達がいる」
「そして君の家族を殺しおそらく弟さんは」
 教授はその目を鋭くさせてだ、リズに話した。
「死体はなかった、多分」
「組織に攫われていますか」
「そして最悪の場合は」
「あの国に」
「我々が戦っているのは組織だけじゃない」
 教授の声は厳しかった、そのうえでの言葉だった。
「あの国もだよ」
「一国が相手ですか」
「経済規模は極めて小さい国だよ、最貧国と言ってもいい」
「けれど軍隊は」
「特殊部隊が多い」
 つまり工作員が多いというのだ。
「核兵器に化学兵器の噂もある、とんでもない国だ」
「その国が私達の敵の黒幕ですね」
「そう、あの国とは政府自体が戦っていくことになる」
 戦争には至らずとも外交でだ、そうなっていくというのだ。これまでもそうだったがこれからもというのだ。
「そして我々はだ」
「組織、その関係者達とですね」
「戦っていく、彼等とつながっているマスコミを軸として野党や裏業界や知識人達とね」
「わかりました、どうして私のお父さんとお母さんが殺されたか」
 このことをだ、リズはあえて教授に言った。
「最初はわかりませんでした」
「どうして、だったね」
「家族旅行をしていただけなのに」
 本当にその筈だった、幸せの絶頂にあった。
 だがその時にだ、突然襲撃を受けた。その時は何故自分達がそうなったのか全くわからなかった。しかし今は。
 わかった、それで教授に言うのだった。
「そうしたことがあったんですね」
「そう、彼等の手によるものだったんだ」
「そうですね、それじゃあ」
「これからも」
「彼等と戦っていこう」
「わかりました。お父さんとお母さんを殺したあの組織を許さないです」
「しかも彼等はあの国とつながってやがては日本を思い通りにしようとしている」
 自分達の好きな様にだ、日本をしようとしているというのだ。
「日本をあの国の様にしようとしているのだろう」
「あんなとんでもない国にしようとしているんですね」
「革命か何かわからないがそれを起こしたうえでね」
「だから私は余計に負けられないですね」
「日本の為にもね、そして私も」
 教授もだった。
「日本人だ、それなら」
「あの組織とですね」
「戦う、君とそしてポルトと共に」
「そう、僕達は一人じゃないんだ」
 リズの横にポルトが現れた、そのうえで言ってきた。
「だからね」
「これからもよね」
「そうだよ、何があってもね」
「私達は一人じゃないし」
「それぞれ力がある、その力を合わせて戦っていこう」
 教授はまたリズに言った。
「そうしていこう」
「はい、これからも」
 リズも頷いて応えた、そしてだった。
 次の任務のことが話されてからだ、トレーニングの後で。
 夕食となったがここでリズは博士に笑って話した。
「今日の晩御飯ですが」
「ああ、もうそんな時間か」
「実は任務の後で食材買ってきたんですが」
「何を買ってきたのかな」
「お葱とお豆腐、糸蒟蒻に白菜にエノキです」
「何か全部」
「鮟鱇も買ってきました」
 微笑んでだ、リズはこの食材もと話した。
「今日は鮟鱇鍋にしましょう」
「鮟鱇鍋だね」
「それを食べましょう」
「いいね、君は魚料理得意だしね」
「右手を使えますから」
 右手を鋭利な包丁に変えての言葉だ、サイボーグになったリズはその右手を刃や銃に変えることが出来その力で戦っているのだ。
「ですから」
「そうだね、じゃあね」
「お鍋にお餅入れますか?」
 リズは教授にこのことも尋ねた。
「そうしますか?」
「頼むよ。それで最後はおうどんにしようか」
「おうどんですか」
「冷蔵庫に冷凍うどんがあるから」
 教授はリズにこのことも話した。
「それを使ってね」
「わかりました、じゃあ早速」
「晩御飯をだね」
「作ります」
 リズは教授に朗らかな笑顔になって応えた、今の彼女の顔は普通の少女の顔だった。一度死線を彷徨い家族も失いサイボーグとなって組織やその関係者達と戦っている、しかし今の彼女の顔は本来の少女のものだった。
 リズは後に組織を壊滅させてならず者国家が崩壊した時にその国に捉われていた弟と再開することが出来た、だがそのことはまだ先のことだ。この時のリズはまだ戦っていた。そうして多くの死闘と暗殺を繰り返し血の海の中にいた。自身と家族、そして日本の仇である者達との戦いの中に。


組織の正体と黒幕   完


                 2018・8・19

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