得意料理は何か
 土居ちゃんはフリーター兼ダンサーだ、自分が言うには職業はダンサーだが今はそちらの収入はかなり少ない。
 それでフリーター、アルバイトをして生計を立てている。今彼はコンビニの店員をして安アパートに住んでいるが。
 その土居ちゃんにだ、友人達は笑って誘いをかけた。
「今度パーティーしないか?」
「皆でな」
「それぞれ酒とか食いもの買って」
「楽しくやろうぜ」
「そうだな、たまにはな」
 土居ちゃんも友人達の誘いに笑って応えた。
「そういうのもいいな」
「誰かの部屋に集まって」
「それで飲んで食って騒いで」
「そうするか」
「麻雀なりトランプなり出してな」
「ああ、俺麻雀は知らないぜ」
 土居ちゃんは笑ってこちらはと断った。
「ポーカーなら知ってるけれどな」
「ああ、土居ちゃん麻雀駄目か」
「麻雀は知らないか」
「そうなんだな」
「あれはな、まあ飲んで食っては好きだしな」
 土居ちゃんにしてもだった。
「楽しくやろうぜ、ただな」
「ただ?」
「どうしたんだ、ただって」
「何かあるのかい?」
「いや、酒はめいめい好きに買ってな」
 そちらはそれでいいとした。
「ただ食いものはな」
「それも適当に買おうぜ」
「スナック菓子なりつまみなりな」
「まあ適当でいいだろ」
「そっちもな」
「それでいいか?まあ適当でいいか」
 男だけが集まるパーティー、言うなら飲み会だ。それならもう何でもいいかと土居ちゃんも思った。それでだった。
 全員酒も食いものも適当に買って仲間の一人の部屋に集まって夕方から飲みはじめた、土居ちゃんもこの日はアルバイトがなく夕方から楽しんだ。
 もう夜の八時には皆出来上がっていた、だが食いものがあった。
「あれっ、もうないな」
「柿の種もフライドポレトもないな」
「惣菜も全部ないぜ」
「皆食っちまったな」
 気付けばそうなっていた。
「結構買った筈なのにな」
「皆相当食ったな」
「じゃあ何か買いに行くか」
「近所のコンビニ行ってな」
 都会は何処でも少し歩けばコンビニがある、それでそうしようと思ったがここで部屋の主が仲間達に言った。
「冷蔵庫に食いものあったぜ、台所にもな」
「何あったんだ?」
「何があったんだ?」
「ベーコンにな」
 部屋の主は冷蔵庫の中を見てまずそれがあると言った。
「生クリームに大蒜、卵にチーズだな」
「オムレツか?」
「オムレツ作られるか?」
「卵あるしな」
「チーズ入れてな、オムレツに」
「そうしたら美味いよな」
「おい、卵そんなにないぞ」
 部屋の主は友人達にこう返した。
「一人二つとして十個はいるだろうけれどな」
「卵そんなにないか」
「じゃあ二個か三個か」
「それ位か」
「そうだよ、三個だよ」
 それだけだというのだ。
「そんなにないぜ」
「じゃあ何作る?」
「ベーコンと卵とじて焼くか?」
「スクランブルエッグにするか?」
「あまりないよな、それでも」
「三個位だとな」
「スパゲティは五百グラムが二つあるけれどな」
 部屋の主はスパゲティの量についても述べた。
「こっちはな」
「けれどソースないだろ」
「それじゃあどうしようもないだろ」
「スパゲティだけだとな」
「いや、食えるぞ」
 ここでだ土居ちゃんが皆に言った。
「美味いものがたらふくな」
「えっ、卵ないぜ」
「それでもかよ」
「今の食材で美味いもの食えるのかよ」
「ああ、今から作るな」
 土居ちゃんはこうも言った。
「早速な」
「それで何作るんだよ」
「美味いものっていうけれど」
「一体それ何だよ」
「まあ見てな、台所借りるぜ」
 こう言ってだ、土居ちゃんは。
 すぐにフライパンに鍋を出しまた板と包丁も使っただった。
 大蒜をベーコンを小さく刻んで切ったうえでフライパンで焼き鍋で水を沸騰させたうえでその中にスパゲティを入れた。
 そうしてその茹でたスパゲティにオリーブオイルをかけて大蒜とベーコンに生クリームとチーズそして卵の黄身を入れて絡めて胡椒で味付けした。
 そのうえでだ、友人達に笑顔で言った。
「出来たぜ」
「えっ、これって」
「おいおい、凄いな」
「カルボナーラじゃないか」
「それも本格的な」
「食材がそのままあったしな、特にな」
 土居さんは友人達に人数分の皿の上にそのスパゲティを乗せて話した。
「オリーブオイルあったしな」
「ああ、それな」
 部屋の主が彼に答えた。
「俺結構オリーブオイル好きでな」
「家にあるのか」
「それにな」
 部屋の主は土居ちゃんにさらに話した。
「オリーブオイルって何にでも使えるだろ」
「ああ、どんな料理にもな」
「美味いしな」
 それでというのだ。
「家にはいつも置いているんだよ」
「そうなんだな」
「それでな」
 さらに話す部屋の主だった。
「オリーブオイルは置いてたんだよ」
「それがよかったよ」
「そうなんだな」
「やっぱりパスタにはこれだよ」
 オリーブオイルだとだ、土居ちゃんも笑って話した。
「一番いいんだよ」
「だからか」
「ああ、オリーブオイルがあってよかったよ」
「そうなんだな」
「それで他の食材も全部あったしな」
「カルボナーラのな」
「出来たぜ」
 笑って言う土居ちゃんだった、だが。
 部屋の主だけでなく友人達は皆こう言った。
「ええと、ベーコンに卵に大蒜に」
「チーズに生クリームでか」
「カルボナーラか」
「それが出来るんだな」
「そうだよ、まさにそれがな」
 その食材達がとだ、土居ちゃんは皆に話した。
「カルボナーラの食材なんだよ」
「これで何作れってなったけれどな」
「まさかカルボナーラになるなんてな」
「想像もしていなかったな」
「いや、常識だろ」
 土居ちゃんは仲間達に呆れた顔で返した。
「御前等料理作ってないのか?」
「自炊はしてるけれどな」
「それでもな」
「カルボナーラ作るとかな」
「ないからな」
 友人達はそれぞれフォークを出しつつ土居ちゃんに答えた。
「スパゲティ食ってもな」
「ソーススーパーとかで売ってるだろ」
「スパゲティ茹でてそのソースかけて終わりだろ」
「あっためたそれをな」
「俺こういうの得意だからな」
 土居ちゃんは友人達に返した。
「スパゲティのソース作るのは、それで特にな」
「カルボナーラか」
「これ作るの得意か」
「そうなんだな」
「それもあるし好きだしな」
 だからだと言うのだった。
「作れるんだよ」
「そうか、凄いな」
「土居ちゃんの才能の一つだな」
「食材あればそこからスパゲティのソース作られるとかな」
「特技だな」
「まあカルボナーラは得意だしな、じゃあな」
 これからとだ、土居ちゃんは言ってだった。
 友人達に食う様に言った、その味はというと。
「あっ、いけるな」
「ソースの味いいな」
「胡椒の味も効いていて」
「しかも黒胡椒だしな」
「スパゲティも茹で加減いいし」
 アルデンテというのだ。
「大蒜も効いていて」
「オリーブオイルもいいな」
「土居ちゃん料理多いな」
「これ才能だぜ」
「そうか、美味いか」
 土居ちゃんは友人達の言葉に笑顔になった、そしてだった。
 自分のカルボナーラを食べた、すると実際に美味かった。
 それで全員でカルボナーラを食べて飲んだ、この日はカルボナーラのお陰で満腹になって酒も楽しめて実に楽しいパーティーとなった。


得意料理は何か   完


                 2018・8・21

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