エンジェルオブニート
アルフェリアは天使である、だが人間の世界にいる今現在はあるOLの家にいてそうして就職はせず大抵同居人のアパートの中にいて暮らしている、所謂ニートである。
そのニートである彼女にだ、同居人のOLはある日一緒に夕食を食べている時に尋ねた。
「あんた天使よね」
「はい」
澄んだ奇麗な声でだ、アルフェリアは答えた。
「そうです」
「そうよね」
「それが何か」
「いや、あんたね」
一緒に食事を摂りつつ言うのだった、メニューは白い御飯に秋刀魚の塩焼きにトマトの味噌汁、菊菜のひたしに梅干しと完全に和食だ。
「こうして御飯食べてるわね」
「その通りですが」
「何かね」
アルフェリアにどうかという顔で言うのだった。
「天使らしくないのよね」
「そうでしょうか」
「だってあんたニートじゃない」
今の彼女のことをはっきりと言った。
「働いていないでしょ」
「天界では天使の職業にです」
「今も就いているのよね」
「そこからお給料も得ていて」
そしてというのだ。
「部屋代や食費も出させてもらっていますが」
「それはそうだけれど」
OLもこのこともあって彼女を家に住ませているのだ、もっと言えば彼女の人柄と人間界で家がなくて困っていて見ていられなくて住ませているのだ。アパートの大家にも住人が増えたことは話して許可を得ている。
「けれどね」
「家にいてですか」
「働いていないから」
「それはそうですね、ですが」
「ですが?」
「何かあればです」
秋刀魚で白い御飯を食べつつだ、アルフェリアはOLに答えた。
「私は天使として」
「この世界の人達を助けるのね」
「最近天界の神も軟化されまして」
「何気に上司批判してない?」
「他の宗教の神仏と眷族の方々とも協力していいとなりましたので」
「じゃあ日本の神様仏様とも」
「協力してです」
そのうえでというのだ。
「日本の人達も助けていいとなりました」
「黙示録で出て来る破壊と殺戮の天使じゃないのね」
「神も天界も軟化されてしましたので」
またこう言うアルフェリアだった。
「もうそうした天使は過去のことです」
「そうなのね」
「はい、そして」
アルフェリアはさらに言った、今度は梅干しを食べている。その酸っぱさは今の彼女のお気に入りの一つだ。
「今は人命、国土や産業の資源をです」
「優先しているのね」
「破壊や殺戮なぞとても」
「しないのね」
「私もまた」
「そうなのね、じゃあ若し日本で災害が起こったら」
「その時はです」
まさにというのだ。
「私は一時このお部屋をお暇させてもらい」
「被災地に行って」
「人達を助けます」
「それが天使としてのお仕事なのね」
「私はその為ここにいます」
「天界では就職していて」
「働いています」
実際にというのだ。
「そうしています」
「だからニートでないのね」
「ニートはお給料は」
「自分でネットとか株で稼いでいる人はいるわね」
ニートといっても様々だ、家の中にいてもそうしたことをして糧を得ている人も存在しているのだ。
「まあ基本お家に出ない人をニートと言うなら」
「私は今の日本ではですか」
「ニートになるわね」
「そうですか」
「けれどあんたが働く時って」
その時のことを冷静に考えてみた、それでOLは言った。
「日本にとってよくない時ね」
「災害が起こった時なので」
「そうよね」
「その通りです」
「そんな時は来て欲しくないわ」
切実な顔でだ、アルフェリアに言った。
「出来るだけね」
「全くですね」
「それ言うとあんた自衛隊の人達と一緒ですね」
「日本に何かあると出番だからですね」
「あの人達が働いてくれる時って」
普段は訓練と日常業務だけだがだ。
「いい時じゃないから」
「戦争はほぼないにしても」
「災害が起こった時だから」
今の日本の状況ではそうなる、自衛官の人達の出番の時は大規模な災害が起こって人々が困っている時だ。
それでだ、OLも言うのだ。
「あんたもね」
「出番はですね」
「ないに限るわね」
「そういうことになりますね」
「そうよね、本当にね」
実際にともだ、OLは言った。
「あんたの出番なくて欲しいわ」
「私もそう思います」
アルフェリアもその通りと答えつつだ、今はOLと共にテーブルに座って和食の夕食を食べた。そしてその後でだった。
風呂にも入り寝た、そして朝起きてニートそのものの日常を過ごしていたが服装や生活態度自体はしっかりしていた。
暫くはそうした日常であった、しかし。
OLもアルフェリアも起こって欲しくない事態が起こった、日本のある地域で大きな台風による大規模な水害が起こったのだ。このことをネットで確認してだ。
アルフェリアはOLに真剣な声で言った。
「暫くです」
「このお部屋出てなの」
「困っている人達を助けに行ってきます」
そうするというのだ。
「暫く帰りません」
「遂に出番が来たのね」
「はい」
その通りと言うのだった。
「そうなりました」
「そうなのね、絶対に行くわよね」
「私は天使です」
無表情だが確かな声での返事だった。
「ですから」
「そうよね、困っている人や地域を助けることがね」
「私の仕事ですから」
それ故にというのだ。
「これよりです」
「行って来るのね」
「そうしてきます。既に日本の神仏の方々も動かれています」
アルフェリアと同じ様な存在である彼等もというのだ。
「ですから」
「あんたもなのね」
「すぐに行ってきます」
「そうなのね、もう自衛隊の人達も出ることが決まってるし」
この人達もというのだ。
「あんたもね」
「頑張ってきます」
「そうしてね。じゃあ帰ってきたら」
その時のこともだ、OLは話した。
「何を食べたいの?」
「そうですね、では光りものを」
「あんた天使だから光るもの好きだしね」
「それをお願いします」
「光りものっていうと青魚のお刺身ね」
和食からだ、OLは述べた。
「じゃあ鯖か鯵の新鮮なお刺身をね」
「私が帰った時にですね」
「ご馳走するわ、頑張ってきてね」
「それでは」
アルフェリアはOLに笑顔で応えた、そしてすぐに被災地に向かい。
困っている人達の為に働いた、普段は人界ではニートである彼女もこの時は違っていた。まごうかたなき天界の天使達だった。
だが救助活動が終わるとだ、OLの部屋に戻って。
鯖の刺身を食べつつだ、OLにこう言われた。
「じゃあまたね」
「はい、何かある時まで」
「ニート生活ね」
「人の世界ではそうなります」
まさにというのだ。
「これから」
「そうね、けれど本当にあんたがニートでいる方が」
「日本にとってはいいことですね」
「何もないってことだからね」
だからだとだ、OLはアルフェリアに笑って話した。そして彼女が食べている鯖の刺身を一緒に食べるのだった。
エンジェルオブニート 完
2018・8・24
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