一、夢
「君は誰…」
幼い声だった
まだ幼い自分の声…
幼い僕が見つめているのは一人の少女
今の僕から思うなら可愛らしさを残すあどけない少女
だが、声の主からするとちょっと年上のお姉さんという事になる
「何で僕を見てるの?」
その言葉で気が付いた、少女は先程からずっと僕の方を向いていた
大きな瞳を時折動かしてはいる
が、柔らかい瞳に映る僕の姿が自分でも信じられないくらいに神聖なモノに見える
「私はもうすぐあなたと会えるわ」
少女がそう話すと、僕は当然のように「待ってる」と応えた
その声は幼い声ではなく、普段耳に入れている愛嬌のカケラも感じられない二十代後半の自分の声だった