相手がドワーフでも
 エルフとドワーフは仲が悪いとされている、それはエルフが森に棲んでいてドワーフが地下に棲んでいるからだと言われている。つまり属性が全く違う者同士なのだ。
 しかも外見も全く違う、エルフは美麗と言っていいがドワーフは厳めしい。
 しかしニアはそのドワーフ達についてよく森に来る仲良しの人間のバードに対して笑顔でこう話した。
「絶対にですよ」
「エルフとどらーふでもかい?」
「仲良くなれますよ、だって同じ人ですよね」
「人は人でもね」 
 それでもとだ、バードはニアにどうかという顔で話した。二人は今は森の大樹の傍で森の幸である果物達を食べつつ話をしている。
「属性が違い過ぎるじゃないか」
「だからですか」
「僕は無理だと思うよ」
 バードはその美麗な顔でニアに話した。
「流石にね」
「そうですか」
「とかくだよ」
「エルフとドワーフはですか」
「属性が違い過ぎるんだ」
 それ故にというのだ。
「だからね」
「仲良く出来ないですか」
「お互いに無視し合う」
 喧嘩にならないまでもだ。
「僕は冒険者のパーティーでも見てきたんだ」
「そうしたお付き合いをですか」
「エルフとドワーフが一緒のパーティーにいたら」
 その場合はというと。
「もう本当にね」
「仲が悪いんですか」
「お互い会話をしないよ」
「喧嘩はしなくても」
「そうした風になるから」
「じゃあバードさんもですか」
「思ってるよ、君達エルフとドワーフはね」
 どうしてもというのだ。
「仲良くなれないんだ」
「そうですか」
「幾ら君でも無理だと思うよ」
 誰とでも仲良くなれることで知られているニアでもというのだ。
「流石にね」
「そうでしょうか。だったら」
 ニアはバードに疑問に思っている顔で答えた。
「一度です」
「ドワーフと会ってかい?」
「じっくりとお話をして」
「それで仲良くなれなかったらかい?」
「私も信じるかも知れないけれど」
 バードも言うエルフとドワーフが仲良くなれないということをだ。
「それでもです」
「実際に話をしていないからかい」
「今はどうとも言えないです」
「そうか、そこまで言うんだったら」
 それならとだ、バードも話に乗った。それでだった。
 彼はニアにそのドワーフ彼の友人である者をニアのところに連れて来ると答えた、ニアもそれでと答えた。
 暫くしてバードは一人のドワーフを連れて来た、人間やエルフと比べて小柄だががっしりとした体格で濃い髭を生やした如何にもドワーフという者だ。
 そのドワーフは森に入ってきてニアを見てすぐにバードに言った。
「さっきも言ったがね」
「エルフとはだね」
「やっぱり仲良くなれないよ」
 こう言うのだった。
「流石にな」
「まあそう言ってもな」
「それでもか」
「実際に会って」 
 そうしてというのだ。
「判断してくれ」
「そういうことか」
「ああ、そうしてくれるか」
「あんたにはいつもいい歌を聴かせてもらってる」
 その誼でとだ¥、ドワーフはバードに答えた。
「それじゃあな」
「ああ、ちょっとそこのエルフの娘と話をしてくれ」
「そうさせてもらうな、だが無理だぞ」
 またこう言うドワーフだった。
「ドワーフとエルフの相性の悪さは本物だ」
「それでもだよ」
 ニアのたっての願いだからだとだ、バードはドワーフに言ってだった。
 自分が間に立つ形でニアとドワーフを会わせ話をさせた、すると最初は頑なな様子だったドワーフがニアの細かいところまで気遣いをして親切で謙虚、しかも温かい人柄が常に出ている言葉と気配りを受けて。
 一時間もすると完全に打ち解けた、それで彼はバードに満面の笑顔でこう言った。
「こんないい娘さんはだよ」
「いないかい」
「ドワーフでも人間でもな。まさかエルフにな」
「こんないい娘がいるなんて思わなくてか」
「わしは驚いたよ、この娘となら」
 まさにと言うのだった。
「これからもな」
「仲良く出来るかい」
「ああ、絶対にな」
 こう言うのだった、この状況にバードも驚きニアの心がどういったものかを知っていても彼女に驚きを隠せずに言った。
「凄いな、君みたいな心の持ち主だったらな」
「それならですか」
「それこそ誰でもだよ」
 まさにというのだ。
「君を好きになって仲良くなれる」
「そうなれますか」
「なれない筈がない」
 バードの言葉は太鼓判を押したものだった。
「君ならな」
「そうですか」
「そして僕もわかった、エルフとドワーフの相性は」
 悪いと言われているそれはというと。
「人による、君の様な人なら」
「ドワーフの人達ともですね」
「仲良くなれる、ではこれからは僕達三人は友達として」
 バードは既にニアと友達でドワーフとも友達だ、そしてニアとドワーフも友達になったからだというのだ。
「これからもな」
「仲良くですね」
「やっていこう」
「では今から森の果物を出します」
「僕はパンを出そう」
「わしは酒だ」
 バードもドワーフもそれぞれ出した。
「ではな」
「これから三人で友達になった祝いにな」
「三人で飲んで食べて楽しみましょう」
 ニアがにこりと笑ってそうしてだった、音頭を取ってそのうえでだった。
 乾杯をして仲良く飲んで食べた、ニアの心と誰とでも仲良くなれる力はエルフとドワーフの種族の垣根すら軽々と越えるものだった。


相手がドワーフでも   完


                    2018・10・17

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