サボテン
柳翠は名前の通り緑が好きだ。
それで家にも緑を多く置いているが友人は彼女の家の中を見ていつも彼女自身に対してこう言っていた。
「緑があるとね」
「気持ちいいですね」
「ええ、目がね」
身体のこの部分にというのだ。
「落ち着くわ」
「そして目だけでなく」
「心もね」
「はい、ですから私も好きなんです」
翠は友人に微笑んで答えた。
「緑が」
「植物だけじゃなく」
「色もです」
「じゃあ好きな宝石は」
「エメラルドです」
緑に輝くそれだというのだ。
「何といっても」
「やっぱりそうですよね」
「見ていて落ち着きますし」
エメラルドを見てもというのだ。
「ですから」
「そうよね」
「とにかくです」
「緑が好きなのね」
「そうです、食べるものよ」
「ううん、植物もなのね」
「はい、それに」
翠は友人にさらに話した。
「色自体が」
「だからお部屋のカラーリングもなのね」
「緑にしています」
この色で統一しているというのだ。
「まさに」
「そうなのね」
「そうです、落ち着いて落ち込んでいる時も」
「その時も緑の中にいると」
「徐々にでも」
これは翠の感性からの言葉だ。
「癒されるので」
「そうなのね」
「一度貴女もです」
友人に優しい微笑みで話した。
「緑に囲まれてはどうでしょうか」
「そうしているとなの」
「はい、落ち着いて」
「落ち込んだ時も」
「癒されます」
「そうなのね、じゃあね」
それならとだ、その友人は翠の言葉に頷くものを感じてだった。
試しに自分の部屋にサボテンを置くことにした、それを翠に話すと翠は友人にこの時も優しい微笑みで述べた。
「いいことですよ」
「サボテンもいいのね」
「はい、サボテンも緑色で」
それでと言う翠だった。
「植物なので」
「いいのね」
「いいことです」
「それじゃあね」
友人は翠がいいと言ったのでそれでだった。
それならと頷くサボテンを育て続けた、サボテンはあまり水をやらなくても済むし育てることが楽だった。しかも。
確かに見ていると落ち着く、そして落ち込んでいる時に見るとこれまた翠の言う通りに自然と癒された。
それでだ、翠の家に行った時に彼女に話した。
「サボテンと一緒にいると」
「落ち着きますね」
「不思議とね」
「緑の植物ですから」
翠の微笑みはいつも通りだった、優しいものだ。
「だからですよ」
「落ち着かせてくれて癒してくれる」
「自然と」
「そう考えると」
まさにとだ、友人は言った。
「植物、緑は素晴らしいわね」
「本当にそうですよね」
「実は今度ね」
「今度といいますと」
「お部屋のカーテン古くなったから」
それでというのだ。
「新しいカーテンにしようって思ってるけれど」
「ではそのカーテンは」
「色はね」
それはというのだ。
「緑色にして」
「その色にですね」
「あんたみたいにね」
翠は当然として部屋のカーテンも緑色のものにしている、ベッドも緑色のものにしているので本当に緑尽くしだ。
「そうしてみようってね」
「思われてますね」
「どうかしら」
「本当にいいと思います」
翠はこの時も反対しなかった。
「では」
「ええ、緑色のカーテンにして」
「気持ちよく過ごされて下さい」
「サボテンに加えてね」
カーテンもというのだ。
「そうするわね」
「では」
「ええ、後はね」
「後はといいますと」
「翠は服もいつも緑色だけれど」
「はい、これもいいですよ」
「緑色の服だとなのね」
実際に翠は服もいつも緑系統のものだ、今もそうした色である。
「落ち着くのね」
「そして落ち込んだりしてもです」
「癒されるのね」
「そうです」
「じゃあ全部とはいかないけれど」
翠の様にというのだ。
「少しでもね」
「緑色の服をですか」
「着ていく様にするわ」
「それもいいと思います、本当にです」
「緑色は人にいいのね」
「目にも心にも。自然の色ですから」
森や林、そして平原の草木の色だというのだ。
「悪い筈がないです」
「そうよね。じゃあ」
「はい、貴女もですね」
「緑色、増やしていくわ」
生活のその中にとだ、友人は翠に話した。その笑顔で自然と翠のそれと同じく優しい微笑みになっていた。緑の中にいて。
サボテン 完
2018・10・24
ミラクリエ トップ作品閲覧・電子出版・販売・会員メニュー