観光客達に
 日本には今現在世界各国から観光客達が来ていて葵桜玖耶さくやちゃんがいる静岡志についても同じだった。
 世界各国から観光客が来る様になったが多くの観光客達はこんなことを言った。
「静岡って東京の一部?」
「横浜のお隣よね」
「新幹線で東京からすぐだし」
「関東だよね」
「東京じゃないですし横浜のお隣でも関東でもないですよ」
 桜玖耶はそこはしっかりと言った。
「東海で名護屋には負けますけれど大都市なんですよ」
「えっ、関東じゃなかったの」
「東京の一部でもなくて」
「横浜の隣にもないの」
「はい、東京は東京都で横浜は神奈川県で」
 桜玖耶は地名から話した。
「どっちも関東で」
「静岡は東海だったんだ」
「名古屋のことは知ってるけれど」
「名古屋と同じ地域だったんだ」
「そうだったんだ」
「はい、そこは違っていまして」
 桜玖耶はさらに話した。
「とても素敵な都市なんですよ」
「あっ、それは確かに」
「奇麗な感じがして」
「食べものも美味しくて」
「凄く充実している感じで」
「戦国時代から栄えていまして」
 その頃からだと、桜玖耶は静岡のことをさらに話した。
「今川義元さんの下で凄かったんですよ」
「えっ、今川義元って」
 この名前を聞いて日本の歴史に詳しい外国人観光客が言うのだった。最近日本の歴史も世界にかなり知られる様になったという。
「確か桶狭間で負けた」
「負けはしましたが」
 即座にそれでもと言う桜玖耶だった。
「善政を敷いてそれまで順調に勢力を拡大した」
「凄い人だったんだ」
「名君だったんですよ」
 静岡の者として言い切る。
「優雅で上品で」
「そんな人だったんだ」
「そうです、お公家さんみたいな外見で」
 実際に今川義元は公家の髷と眉にしていて口にはお歯黒を塗っていた。
「徳川家康さんも可愛がっていたんですよ」
「いじめていたんじゃなくて」
「将来の重臣候補として育ててました」
 時分と同じ師匠につけてだ、太源雪斎という高僧にだ。
「随分厚遇してたんですよ」
「人質としていじめていたんじゃなくて」
「とんでもないです」
 今川義元はそうした人物でなかったというのだ。
「息子さんの氏真さんも家康さんと仲が良かったですし」
「いじめられていたと思ったら」
「全然だったんですよ」
 それこそというのだ。
「本当に」
「そうだったんだ」
「はい、それで」
 さらに言う桜玖耶だった。
「その人の頃から今までです」
「静岡は栄えていたんだ」
「徳川幕府の頃なんか」
 それこそというのだ。
「幕府の善政で凄く栄えていて」
「それで今に至る」
「はい」 
 その通りだというのだ。
「そうした街なんですよ」
「だからこんなに奇麗なんだ」
「人も結構多いし」
「美味しいお店も多いんだね」
「お茶と蜜柑とお蕎麦だけじゃないです」
 静香はというのだ。
「お米も美味しくてお料理も」
「いいんだ」
「この街は」
「そうした街なんだ」
「ですから楽しんで下さい」
 静岡に来たならばというのだ。
「是非共」
「そうか、じゃあな」
「静岡のことも聞かせてもらったし」
「それじゃあな」
「楽しもうか」
「全力でそうして下さいね」 
 真面目に言う桜玖耶だった、そしてだった。
 桜玖耶はガイドもしてそのうえで外国からの観光客達に静岡の名所や名店を紹介していった、それは日本からの客達についても同じだった。
 毎日静岡の観光の為に働いている、それよく三時には今は静岡の守護神の一人となっている今川義元と一緒におやつの桜餅と緑茶を飲みつつ話をした。
「最近本当に世界中からお客さんが来ますね」
「そうでおじゃるな」
 顔に白粉を塗って公家の恰好だ、顔立ち自体は整っていて気品があるがどうにも胴長短足なのが目立つ。
「近頃は」
「それで私もやりがいがあります」
「静岡を紹介してでおじゃるな」
「はい、次郎長親分のことも」 
 幕末から明治の有名なヤクザ者である。
「お話しています。ただ」
「ただ?どうしたでおじゃるか」
「森の石松さんは実在の方か」
「モデルとなった者がおるから実在と言えるでおじゃるよ」
 これが義元の考えだった。
「麿としては」
「そうでしょうか」
「そうでおじゃる、だから実在と思われても」
 その森の石松がだ。
「いいでおじゃるよ」
「その辺りはいいですか」
「おおらかにでおじゃる、次郎長もでおじゃる」
 かつて静岡を治めていた大名としての言葉だ。
「今では静岡の守護神の一人でおじゃるしな」
「今川さんと同じで」
「うむ、仲良くせねばでおじゃるよ」
「それはその通りですね」
「さもないと名護屋に負けっぱなしでおじゃるぞ」
 ここでこうも言った義元だった。
「名古屋といえばわかるでおじゃろう」
「はい、私も」
 このことには真剣な顔で返す桜玖耶だった。
「もう四百年以上のことで怨みはないですが」
「麿もでおじゃるがな」
「戦国の倣いとして和解はしても」
「競争心はあるでおじゃる」
 つまりライバルと考えているというのだ。
「そうでおじゃるな」
「はい」
 桜玖耶は桜餅を食べつつ答えた。
「それはもう」
「静岡ならば」
「清水生まれですよ」
 このことから言う桜玖耶だった。
「こっちは」
「任侠の血がでおじゃるな」
「それもありますから」
 桜玖耶は自分にはと言った。
「ですから」
「負けん気はあるでおじゃるな」
「負ける気はないです」
 それこそという言葉だった。
「絶対に」
「ではでおじゃるよ」
「はい、これからもですね」
「名古屋に勝つ為に」
「頑張っていきます」
「麿もそうしていくでおじゃるよ」
 義元はお茶、緑茶を飲みつつ桜玖耶に応えた。
「これからも」
「静岡の為にも」
「まことによいところでおじゃる」
 この静岡市はというのだ。
「もっともっと世界の人達に愛されるべきでおじゃる」
「本当にそうですね」
「折角蹴球も強いでおじゃる」
「そこでサッカーとは言われないですね」
「麿の嗜好でおじゃる」
 蹴球と言うことはというのだ。
「それはでおじゃる。しかし」
「それでもですね」
「うむ、蹴球も強くて」
 そしてというのだ。
「この緑茶も蜜柑もお蕎麦もあるでおじゃる」
「過ごしやすい気候と奇麗な街並に」
「しかもでおじゃるよ」
 義元はここで少し声を強くさせて言った。
「静岡には最高のものがあるでおじゃる」
「富士山が」
「あの山を見てもらうでおじゃる」
 世界各国から静岡に来た人達にというのだ。
「是非にでおじゃる」
「そうですよね、富士山もあります」
「名古屋にはないでおじゃる」 
 ここでも名古屋だった。
「あの山は」
「勝算はありますよね」
「充分にでおじゃる」
 義元は言い切った。
「観光で名護屋に勝てるでおじゃる」
「ですから」
「これからも頑張っていくでおじゃる」
「静岡の為に」
「静岡に偉人は出ない」
 義元はこの言葉をここで出した。
「そう言われてるでおじゃるな」
「とんでもない間違いですよね」
「麿がいるでおじゃる」 
 他ならぬ自分自身がというのだ。
「そして竹千代は三河生まれでおじゃるが」 
「今の愛知県ですね」
「そうでおじゃるが」
 しかしというのだ。
「育ったのはここでおじゃる」
「静岡ですからね」
「そして人生のかなりの部分を過ごしたでおじゃる」
 今川家の家臣だった時だけでなく駿河を領土にして豊臣秀吉に関東に転封させられるまでそして大御所になってからもだ。
「即ちでおじゃる」
「あの人もですね」
「静岡と言ってもいいでおじゃる」
「サッカーも有名ですし」
「決してでおじゃる」
「名古屋、愛知にもですね」
「負けていないでおじゃる」
 桜玖耶に強い声で話した。
「絶対に」
「はい、それでは」
「必ずでおじゃる」
「静岡を名護屋以上に観光都市に」
「そうしていくでおじゃる」
「私もその為に」
 静岡を護る妖精としてとだ、桜玖耶は義元に応えた。
「これからも働いていきます」
「その意気でおじゃるよ」
「ではおやつを食べたら」
 緑茶と桜餅のそれをというのだ。
「そうしたら」
「また働くでおじゃるな」
「そうします」
「麿もそうするでおじゃるよ」
「静岡の守護神として」
「次郎長達にも声をかけてでおじゃる」
 そうしてとだ、彼等は話してだった。
 おやつの後も働いた、桜玖耶は笑顔で静岡の為に働くのだった。この街を心から愛しているが故に。


観光客達に   完


                  2018・10・26

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