甦れ東北
宮城県といえばやはり仙台というイメージがあるだろうか。
この街は森の都と呼ばれ青葉城と伊達政宗が象徴だ、だが今この街に。
赤杢ぎばさ人呼んで渚の妖精ぎばさちゃんはいてだ、パートナーになっている神話生物の方のぎばさに言った。
「仙台もかなりね」
「ええ、そうね」
神話生物はぎばさにかなり不気味な声で応えた、声も姿も不気味だが実はぎばさと同じ位人気がある。不気味さがかえって受けているのだ。
「復興してね」
「傷が癒えたわね」
「いいことよ」
「福島も」
ここでまた言った神話生物だった。
「何とかね」
「復興してきて」
「あれだけの地震だったし」
「どうなるかって思ったけれど」
「それがね」
「この通りね」
ようやくと、とだ。神話生物が応えた。
「復興して」
「元の生活に戻っているかしら、いえ」
ぎばさはここで言った。
「そう思うにはね」
「まだ早いわ」
「そうよね。復興したかどうかは」
「まずは人の顔を見ることよ」
神話生物もぎばさに話した。
「人の顔が明るくて余裕があったら」
「そうだとしらね」
「復興が出来ているわ」
「そうよね、本当にあの時は」
震災が起こった時のことを思い出してだ、ぎばさは暗い顔になった。
「皆家族やお家を失って」
「何もかもがなくなって」
「暗くてね」
「大変な顔だったわ」
そうだったとだ、神話生物はまた言った。
「本当に」
「そうだったわね」
「そして今はどうか」
「皆どんな顔でいるのか」
「それを見ればわかるわ」
「そうよね、じゃあ」
それならとだ、ぎばさは神話生物に応えてだった。
仙台の人達の顔を見た、すると。
まだ暗いものは残っている、だがそれでもだった。
「かなりね」
「明るくなったわね」
「ええ、余裕もね」
それもというのだ。
「出てきて」
「いい感じになってるわね」
「ええ」
ぎばさは神話生物に応えた。
「そうなったわね」
「大変な状況だったけれど」
「東北全体がね」
震災が起こった東側、あの時のことはぎばさにとっても神話生物にとっても忘れられない。まさに絶望しかなかった。
だがそれから数年経ってだ、今は。
「何とかね」
「余裕が出て来たわね」
「復興がね」
「表情にも出てきて」
「よかったわ」
「そうね」
二人で話した、いい笑顔になっているとだ。
それで二人共自然と笑顔になりかけた、しかし神話生物はここで思いなおしてそのうえでこう言った。
「もう一つ見ましょう」
「そうね、あの地震はね」
「海で起こって」
そうしてというのだ。
「大津波を起こしたから」
「海がどうか」
「それも見ないとね」
「駄目よね」
「だから」
それでというのだ。
「ここはね」
「海の幸も見ることね」
「そう、ここは」
「私達は海の妖精だし」
「だから」
それだけにというのだ。
「ここはね」
「お店に入って」
「海の幸も食べましょう」
「それじゃあ」
ぎばさも頷いた、そうしてだった。
二人で今度は居酒屋に入った、海の幸は居酒屋に多いのでそうした。それでぎばさは魚に貝類にだった。
東北名物のホヤそして二人にとって欠かせないものであるアカモクも頼んだ。そうして食べてみたが。
頼んだものの味を確かめてだ、ぎばさは共に食べている神話生物に目を明るくさせてそのうえで言った。
「まだね、苦いものがあって」
「傷跡がね」
「残ってるけれど」
それでもというのだ。
「随分とね」
「戻ってきてるわね」
「ええ」
実際にというのだ。
「それもかなり」
「仙台も他の東北の地域も」
「酷い傷を受けたけれど」
人も場所もだ。
「それでもね」
「皆必死に頑張って」
「そうしたから」
このままでは駄目だ、必ず復興しようと決意し必死で頑張ってだ。
「そうしたから」
「ここまで戻ったわね」
「ここまで戻ったら」
「後はね」
「絶対にかつての様な」
「元気な東北に戻れるわ」
「完全に」
二人は確信した、海の幸を食べて。
「じゃあね」
「私達もね」
「仙台、東北の人達と一緒にね」
「頑張って応援して」
「やっていきましょう」
「ねばぎばだから」
二人同時に自分達の合言葉を出した。
「二人でね」
「このままやっていきましょう」
二人で話した、そうしてだった。
ぎばさは特にアカモクを食べて言うのだった。
「これが美味しいと」
「私達としてはね」
「本当に有り難いわね」
「私もそう思うわ」
神話生物もぎばさのその言葉に頷いて応えた。
「アカモクが美味しいと」
「それだけでね」
「嬉しいしね」
「随分違うわ」
「仙台そして東北のこともわかるし」
「とてもいいわ」
二人でアカモクを食べる、その海草はネバネバしていてそれでいてシャキシャキとしている不思議でかつ美味しいものだった。
蘇れ東北 完
2018・10・27
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