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わたしがまだ、将来を待ち望んでいられるくらいに幼かった頃。
その日は、気分も晴れてしまうような晴天で、琵琶湖は青空に溶け込んでいたのを憶えている。
わたしはかわらけと呼ばれる小皿を握りしめ、神社の拝殿から鳥居を見下ろしていた。
ぱりん、と遠くで音が鳴った。
隣の観光客たちが次々とかわらけを放り投げ、その結末に一喜一憂していた。
ぱりん、と遠くで音が鳴った。
鳥居の周囲に散らばる陶器の残骸に、わたしは少しも目もくれなかった。
そんなもの、自分には縁もゆかりもないと思って疑わなかった。
わたしは腕に力と期待を込め、夢の欠片を鳥居めがけて投げつけた。
他のことは憶えていない。
かわらけが鳥居を潜ったのかも、それにどんな願いが込められていたのかも、その願いが本当に叶ったのかも、何も憶えていない。