プロローグ

僕は事故で死んだ。

 死因は自転車と車の交通事故だ。信号は青だったのに。事故ったこの場所は地元では事故がよく起こると有名な場所だった。

跳ねられた時は
「うわー、僕死ぬの?まだ死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない! やりたいこととか色々あったのに!! 」

とか色んなことを思っているうちに、いつのまにか意識が途絶え、気がついたら死んでここにいた。

 そもそもどうして死んだと確信したのかというと、今いる場所が病院でも事故現場でもなく、見たことのない素人目で見ても明らかに物理法則がおかしい場所にいるし、それにそもそも、事故ったばっかなのに体の痛みが全くない。

体が軽いどころか、重さが感じられないというか重量が無いような、ふわふわしたような何とも言えない感覚がする。
それにあんな事故り方で無傷な訳がないし多分死んでるんだろうなと思ったからだ。

 痛みで気絶してから死んだのか、それとも痛みを感じる前に死んだのかは知らない。

痛みは感じなかった。そもそも痛かったという記憶がないし。もしかすると痛すぎたショックでその記憶が飛んでるのかもしれない。

あの時は、一瞬でこんなに頭回るのかと思ったぐらい色々な思考や記憶が巡ったけど、あれが噂に聞く走馬灯だったのだろうか。

まぁそんなことはどうでもいいけど......。

でも、これからどうしよう。なんだかよく分からない場所に来ちゃったみたいだし。


「ここは異空間、どこの世界とも繋がっているけど、どこの世界でもない場所だよ」

どこからか突然人が現れた。

でもよかった。何か事情を知っていそうな人が来た。知らない人に話しかけられてこんなにホッとしたのは初めてだ。


「あの、あなたは?」

「私は、人間を魂を管理している者だ。人間からは神様と呼ばれていたり呼ばれていなかったりする。厳密には神様とも少し違うけど......。人間から見るとそう見えるだろうし、やってることも似てるしね。細かい説明すると長くなるし、難しくなって面倒だからしないけど」

「はぁ......」


 異空間というのも、今いる場所が変な場所だったから納得できるし、信じることはできる。死んだ後もこうやって意識はあるんだし。

神様のような存在もいてもおかしくないし、この人は本当のことを言っているのだというのもわかる。だけどどうしても胡散臭く感じてしまう。

「上井悠太くん。君に選択肢とチャンスをあげよう」

「もしかして生き返ったりできるんですか? 」

すると首を振りながら

「いいや、それはできない。君の死体はもう火葬されてしまっている。それでも生き返りたいんだったらなんとかするけど、肉体は戻せないから骨のまま生活することになる。それは嫌だろう? 」

骨のままで生活……想像してみたけどめっちゃ怖いし絶対目立つ。っていうかそれ以前に普通に嫌だ。食べ物とかも絶対食べられないだろうし。

「じゃあチャンスってどういうことですか? 」

「まずは、普通に現世に転生。この場合は今の記憶もなくなるし、赤ちゃんからのやり直しになる。スペックや環境だってほぼ運任せだ。」

彼女はそういって自分で言ったことをどこからか出したホワイトボードとペンで書いて説明しながら話していく。

「君は普通に転生する分のポイントは足りてはいるんだけど、この時代じゃかなり早死にしてしまってるし、転生するまでに3日くらい寝ずに簡単な同じ作業をやり続けないといけないことになってる。内容はランダムなんだけど例えば、石を積み続けるとか同じボタンを定期的に押すとか、内職みたいな内容のものだったりする」



「次に異世界転生だ。これは今の記憶を持ったまま転生できる。赤ちゃんからやり直す訳じゃなくて、現在の年齢のままそっちに行くことになる。転移といったほうがわかるかな。ただこれには条件がある」

「条件? 」

「他の条件はクリアしてるんだけど、君は異世界に転生するにはポイントが少し足りないんだ」

「えっ、この世界ってポイントシステムだったんですか!? 」

 ポイントって、まじか。

 善行だと天国へ悪行だと地獄へ行くとはよく聞く話だけど、あながち嘘じゃなかったのか。というか、もしかして生まれてからずっと四六時中監視されてたってことなのな?

 四六時中じゃないとしても定期的に見られてたのか......。
だとしたら、もっとこう 何かちゃんとしていればよかった。

「異世界に才能や異能力的な力の補正も無し転生するだけなら、足りないポイントはあと5ポイント、くじで能力を選ぶのならあと10ポイント。ちなみにくじはピンキリだけど外れ能力はないよ。自分で能力を3つ指定できる上にチート能力付きならその10ポイントと+αである事をしなければいけない」

 ポイントはさておき、チートとか能力って聞くと、何だか好きだったラノベとかアニメとか漫画を思い出す。

死んでしまったから最終話が見れないと思うとすごく残念だ。

「死んでしまって幽霊なのにどうやってポイントを貯めるのかというと、生きてる人間にお礼を言われるような事をする。所謂善行でも、呪ったり陥れたり世間から見れば悪い事でも、その人間がそれをして欲しいと思っていればポイントになる。」

「1人に対して1ポイント。ルールは人を殺してはいけない。それだけだ。ちなみに+αでする事は、1人に面と向かってお礼を言われる事だ。まずは、普通に転生するか異世界転生するかどうする? チートか能力なしか、くじかは後から決めてもいいよ」


 普通に転生した場合、ただでさえ同じ失敗を繰り返したり、人生のターニングポイントで選択ミスしまくってきたんだ。

記憶がなくてもその性質は受け継がれるかもしれない。

 しかも僕は普通の運はともかく、くじ運だけはとてつもなく悪い。おみくじで大吉よりも凶や大凶を引いた数の方が多いくらいだ。

とんでもない劣悪環境になる可能性もある。もちろん奇跡が起きて凄くいい環境で育ったり、スペックが高くなる可能性もある。

 昔からファンタジーが好きだったし異世界にも興味があるし少し楽しそうだと思う。

今のスペックでは無理そうだし、チートかくじかは後から決めてもいいって言われたし、能力とか魔法とか超能力って昔からずっと憧れていた。

 一瞬だけ迷った。

「異世界転生がしたいです」


「わかった。じゃあまず、流石に幽霊で普通の人には基本触れるどころか見えないから大変だろうし、おまけで人の悩みとかが分かるようにポイントを集める期間だけ心を読む能力を貸してあげる。呪い方とかは教えないよ。自分で試行錯誤してやってね。さすがにそこまではサービス出来ないし。はい、あとこれ渡しとくね」

 どこからか何かを取り出して渡してきた。

「ありがとうございます」

「終わったらこれで連絡してね。霊体用の携帯電話みたいなやつだよ。普通の人には見えないやつだから、これだけ浮いて見えるわけじゃないから安心していいよ。使い方は携帯と同じだから、じゃあいってらっしゃーい! 」

そう言って、いつのまにか空いていた穴に落とされた。しかも落とされたそこはかなり上空だった。

なんか、『幽霊なら浮けるしそもそも死んでるからもう死なないし大丈夫だよー』と穴の方から叫んでる声が聞こえる。

 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ何これめっちゃ怖い! 

死なないって頭では分かってるけど、死にたてだし生前の感覚がそんな急に変わる訳がない。大丈夫って言われたけどめちゃくちゃ怖い。

というかこれどうやって浮くんだよ、くっそーさっき聞いときゃ良かった!

そうこうしてるうちに結局浮くことが出来ず普通に落下した。

肉体がないせいか痛みはない。ただ、何か体がぐちゃぐちゃになった。すぐ再生したし、血も出てなかったけど。

 こうして僕は異世界転生するために幽霊になってポイントを稼ぐ幽霊生活が始まった。

風上らむね
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風上らむね

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