出会い

実花は新入生、駅から高校までは、歩いて登校するのだが、新しいい環境に、まだ馴染めず。
通学路に何が有るのか、どんな風景なのか、まだ目には入らなかったが。
徐々に、何処にどんな建物が有り、何処にどんなお店が有るのか、毎日決まった処で、どんな人にすれ違うのか、朝の挨拶も、擦れ違う人の優しい笑顔に、大きな声で「おはよう ございます」と言える様に成る。

高校に続く道に、小さな可愛い洋館が有り「可愛い 素敵な家だな~・・・」と思いながら、その屋敷の前を通り過ぎる
何時も、人影は見えず ” 空き家 ” の様だ。

この屋敷は、最初に仲良く成った地元の友達が話してくれた。
今は、空き家で以前は、診療所だった。
その医院の医師は女医さんで、校医もしていたという、何年か前に離れ小島の(無医村)の診療所に引っ越して行ったという事だった。
それ以来、空き家と成っていた。

有る土曜日の朝、空き家の小さな洋館の門扉が開いていて中庭の手入れをしている女性がいた。
何気なしに、立ち止まった実花と女性の目が合い、実花は慌てて「おはよう ございます」とあいさっをする。
女性は「おはよう・・?・・」と言いながら 少し驚いた様な表情だった
「近所の子・・・?」と話しかけて来たので、
「いいえ・・・隣の町です・・・」
「そう・・・ご近所さんなら・・自己紹介をしなきゃ・・と思ったの・・・」
「そこの高校の生徒さん・・・?」
「は・ハイ・・一年生です・・・」
「あ・・ごめんなさい・・大丈夫 遅刻しない・・・?」
「あ・・ハイ・・行ってきます・・・」
ぺこりとお辞儀をして、走り出す実花に、
「慌てないで・・・気をつけてね~・・・」
そこまでは、ハッキリ聞こえたが、その跡の「行ってらっしゃい・・」と言う言葉は微かに聞こえた様な気がした。

その日は土曜日で午後の帰り道「小さな洋館」前を通ると、引っ越し業者のトラックが、前に止まり、
業者の数人が、家具などを運び込んでいた。
庭木の陰に、毛布のようなものが引かれ額縁らしき物が丁寧に梱包されていた。
もし 「絵画」だとしたら、インテリアとして部屋に飾る様な量では無い、
玄関で、業者の従業員に「ご苦労様・・・」と女性の声がして、業者の人達が出て来た。
その後を、朝で出合った女性が出てくる。
「それは片付け無くても 良いんですか・・・?」
「あ・・大丈夫 それは私が片付けますから・・・」
「そうですか・・・!・・それでは 失礼いたします・・」
トラックか帰っていった。

「あら・・・今日は早いの・・・ああ~・・土曜日か・・・」
「はい・・・あの~・・手伝いましょうか・・・?」
「お願い出来る・・・結構大変なのよ・・・」
「でも・・丁寧に運んでね・・・!!!
実花から手伝いましょうかと言った事だが 「丁寧に運んでとは・・」結構はっきり物を言う人だな~と思った。

一つ一つ丁寧に運び終わると。
「あなた・・・昼食は・・・・??」
「はい・・未だですが・・・運び終わったので帰ります・・・」
「昼食・・食べて行って・・・まだ・・頼む事が有るから・・・」
「この人、本当に結構図々しい人かも・・・?」と思った。

「ああ~それから・・聞いてみようと思ったのだけど・・・?」
その言葉に朝、実花の顔を見て一瞬 「あれ・・・?・・」と言う様な顔をされた事を思い出した。
「何ですか・・・?」
「あなた・・間違っていたら ごめんなさい・・・美菜子さん・・・小林 美菜子さんの娘さんじゃ~無い・・?」
「勿論 旧姓だろうけど・・・??」
正に、そのものズバリで合った 「なぜ・・何故・・???」 母の名前を知っているのか不思議に思った。
「はい・・ママの名前は 小林 美菜子ですけど・・・パパは婿養子なので・・・今でも 小林 美菜子ですけど・・」
「そお~・・やっぱり・・・美菜子さんにそっくりよ・・・!!!」
「顔も 話し方も 声も 仕草も・・・!!!・・そそっかしそうな処も・・・・」
どれだけ似ているんだと思う、それにそそっかしそうなと言うのは、余分だと思う、
「ああ~~ァ・・・まだ 名前聞いていなかったわね~・・・?私は 轟 彩子と申します・・よろしくね・・」
どちらが「ソソッカシイ」のか、と思う実花であった。
「小林 実花・・と言います・・」
「そう・・実花ちゃんか・・よろしくね・・・お母さんにもよろしく 伝えてね・・・」
ママとどういう関係かを言わずに、自分ひとり納得している彩子を見て、思わず笑ってしまった。

有り合せの食事だった、昼食が終わると額縁らしき物の梱包を解き始めた。
彩子が最初に大事そうに梱包を解いた絵は、彩子の若い時の肖像画だった。
彩子は、その絵を大事そうに、リビングの一番、目に付きやすい処に飾った。
「素敵な絵ですね・・・・・!!」
「ほほ~・・・?・・君にもこの絵の良さが 解るかね~・・・・?」
おどけた口振りで嬉しそうに、実花の腕を掴み、その絵の前まで引っ張り立たせた「余程大切な絵だな・・?」と感じた。

「この絵はね~~初めて・・・いや~二番目に、ダンナに描いて貰った絵でね~~・・わたしも初めてモデルに成ったんだよ・・・!!」
「初めてか~ア・・・道理で彩子さん 何か恥ずかしそうですね・・・?・・」
「そう・・初めて ヌー〇×△・・・・モデルに成ったから・・・・!!!」
「エッ・・・何ですって・・ヌー〇×△・・・ハッキリ聞こえなかったですけど・・ごめんなさい・・」
「初めて・・・モデルに成ったから・・・と言ったのよ・・・・」
少し慌てたように、
「ねえ・ねえ・・どう思う・・この絵・・・どう思う・・感想を聞かせて・・・思った事で良いから・・・・?」
そんなに急かす事も無いのに 「何か隠しているな・・・?」 と実花の感が働いた。
「そうですか~・・?・・初めて絵のモデルに・・・・道理で何処か恥ずかしそうに 見えますね~・・?」
「絵を描くダンナさんと モデルの彩子さんが好きどうしに見えますかね~・・・?」
「ハハッハ・・それは・・ダンナが書いてくれたと言ったからじゃ~無いかな~・・・・?」
「さあ~・・・さっさと片付けようか・・・」

首をかしげながら、実花は絵の片付に戻った。
一枚の絵の梱包を解くと、姿を現した絵に心を奪われる思いがした、その絵はにこやかに微笑む老婆が、20匹以上居るだろう猫達に餌を与えている絵だった。
暫く見入っている実花に、
「一枚一枚そんなに 時間を掛けていたら 日が暮れちゃうよ・・・!!!」
この「轟 彩子」と言う女は、悪気は無いのだろうが、どちらが手伝っているのか解らなく成る様な事をズケズケと言う
まして、実花とは今日有ったばかりだ、実花の見ている絵を覗きも見ながら、
「その絵 気に入った・・・???」
「わたし 猫が好きですから・・・!!」
「そうか・・実花ちゃんは ネコ派か・・・?」
その絵は、一人のおばあさんの周りに、20匹以上はいるだろう猫が囲んでいる。
おばあさんの笑顔と、猫達一匹・一匹の一瞬動きを止めた、喧嘩をしている二匹の猫の表情が、丁寧に見事の描かれていた。

「その絵のタイトル 実花ちゃんだったら どうつける・・・・??」その質問に暫く考えた実花は。
「わたしだったら・・・うんん・・おばあさんとネコ達・・・かな~・・・?・・」
「うんん~・・・平凡だね・・・!!・・・」
この様なズケッズケ物を言う、彩子にはもう慣れて来た、それどころか、ずっと以前から知っている様な気持ちに成って来てそんな言いようが、気にもならなく成っていた。

「ダンナはね そのおばあさんと 話をしている内に ” 孤独 ”と言う タイトルが浮かんだんだって・・・?」
「おばあさん・・・?・・こんなに沢山のネコに囲まれて 嬉しそうなのに・・・??・・ですあか・・??」
「ダンナがね このおばあさんに近ずいて行くと 睨みつけるんだって・・・!!」
「ネコが・・・ですか・・・?」
「ネコじゃ無くて・・・おばあさんが・・きっと文句でも言われると思ったのね・・・?」

「すごいですね・・・何匹いるんですか・・・?」そお訪ねると、おばあさんホットした様に、
「28匹・・います・・・」
「そうですか・・・28匹・・・大変ですね・・・?・・」
「暫く 話し込んで 帰ってきたそうだけど・・・」
「おばあさんきっと 近所に迷惑かけてるよな~ァ・・て・・・・?・・」言っていたわ・・寂しそうに、
「そうか・・・近所迷惑か~ァ・・・?・・・」
「それに・・ネコ達・・野良猫でしょう・・・生まれて直ぐに捨てられた・・・子もいるでしょう・・・?」
「孤独・・か~ア・・・そうかも・・・?」
「ごめんなさい・・遅くなると お母さん心配するでしょう・・もお・帰りなさい・・・」
「お礼に 好きな絵を持って帰って・・そこの絵は駄目よ・・ダンナの描いた物だから・・」
「そっちの絵は わたしが描いた物だから・・・気に入った絵が 有ればね・・・?]

実花には、気に入っていた、バラの絵が有った。
「このバラの絵 貰っても良いですか・・・?」
「ええ・・良いわよ・・その絵で良ければ・・どこが 気に入ったの・・・?」
「・・・・毎日・・お世話をしなければ・・枯れてしまいそうで・・・?・・」
「嬉しい事を 言ってくれるね・・・・!・・・活き活きとして見えるて 言う事かな・・・?」
「はい・・最初に見た時から 素敵なバラだな~ぁ・・と思っていました・・・!!」
「そう・・・その絵一番気に入った・・・?」
「はい・・・どれもみんな素敵です・・・・!!」
「ええ~ィ・・・みんな持って行きな・・・・!!・・・」
「エエ~エ・・・ほんとうですか・・・・?・・」
その実花の言葉に彩子は、声のトーンを下げて「冗談よ・・・・!・」と返した。

「気を着けて帰るのよ・・」
「それから 何時でもお母さんといらっしゃい・・・まだ・・片付ける事が いっぱい有るので・・・」
「は~い・・又 手伝いにきます~・・・・」

帰る途中、実花はネットで「轟 彩子・・画家」と、検索してみた。
すると「轟 彩子 新進画家」「東京で個展・・夫婦(二人)展を開催期待の夫婦画家」等々、記載されていた。
「凄い人と知り合いになれたもんだ」と思うと同時に、母と昔からの知り合いだったのかと、今日巡り会えたのが何か運命の様に思えた。

家に帰って、母に話すと「轟 彩子」と名前を言っただけで、母は興奮気味で、 
「それから・・・!・」「それからどうしたの・・・それから・・どんな事を話したの・・ママの事を何か言ってなかった  の・・・?」
と矢継ぎ早に聞いてくる。
「ママ・・・落ち着いてよ・・・引っ越しの手伝いに 来て欲しいて・・ママと一緒に・・・」
「ああ・・明日行きましょう・・・明日・・・」
「明日・・わたしは今日行って来た ばっかりよ・・・?」
「引っ越しの 片付けでしょぅ・・早く行かなきゃ・・・役に立たないでしょうよ…!!・・明日・・明日決まり・・」
「落ち着きなさい・・・!!・・ママと轟 彩子さんの関係を教えてよ・・・?」
「だから・・さっきから 何度も 言ってるじゃないの・・・ママが高校の時の 美術の先生よ・・・!!」
実花の母から何度か話を聞いた事が有ったように思う、何時も何度も聞く話だと、気にも留めずにいた先生が「轟 彩子」だったのだ。
「ママ ” トドロキ ” だよ・・?オドロキ先生と言って言ったでしょう ” トドロキ ” だよ・・・?」
「ニックネームだよ・・・何時も オドロク発言・・オドロク行動・・だから ” 轟 ” じゃあ無く ” 驚き ”・・?」
母はもう、明日先生を訪ねる心算でいた。

そして次の日の日曜、朝は早くから、実花は起された、美菜子が早朝からバタバタするので、たまの休みに父も早朝に起こされ良い迷惑だ。
「今日は 実花と出かけるから ゆっくり休んでいて・・・・昼食は適当に食べてね・・・!!」
「なんだよ~お・・婿養子は・・・辛いもんだな~ァ・・・・!!」と、ポッチャリお腹をカキながら、又、寝室に戻って行った。

電車を降りてから、彩子先生の家に近ずくと、柄にも無く美菜子は緊張しているのか、急に無口に成った。
玄関に着くと 美菜子は 実花に声を掛ける様に 目で指図し自分は 実花の後ろに回った
「何よ・・・先ほどまでの元気は何処へ行ったの・・・?・・・」
「余計な事は 良いの・・・早くしなさい・・・」
「モ~オ・・・彩子先生・・おはようございます・・・実花です・・・」
奥の方から「どうぞ・・入って・・・」と声がした。

「ま~あ・・美奈ちゃん・・・おばさんに成って・・・!!」
「先生に そのまま返します・・・・」
挨拶もしないで、こんな会話から始まり 「女三人寄れば 姦しい」 と祖母が言っていたが、二人でも十分「姦しい」
実花の入るすきが無い。
一気に二十何年分の思い出を二人はまくしたてた。
「ね~ぇ・・・ね~ぇ~・・少し落ち着いて話たら・・それじゃ~・・何が何だか 解らないよ~・・?」
「そ~お~そ~お~・・・少し落ち着きましょう・・・実花ちゃん・・・コーヒーを入れて・・お願い・・・」
「これじゃ~・・誰のお家か・・・?・・解らないよ・・?」

「カップは~と・・・?・・・ああ~ァ・・有った・・」初めてのキッチンしかも未だ、片付けも出来ていない、他人の家で 一つ一つ探しながらコーヒーを入れる。
「ね~エ・・?まだ・・喋り過ぎて 喉が ” カラカラ ”早くしてね~・・・ハハハッハ・・」 彩子が言うと美菜子も、
「ホント・・ホントに・・早くしてよ・・・」
「二人とも・・勝手な事・・・言って・・・!!・・・モ~オ~・・・」
実花のそんな独り言など気にも掛けず、彩子と美菜子は喋り続けている。
「はい・・・お待ち・・どう様でした・・・!!!」実花が少し強く言って二人の前にコーヒーを置いた。

「はい・・・お二人さん・・良い大人なんだから・・” ありがとう ” を言いましょうね・・・?」
「ハ~ア~・・酸欠に成りそう・・ああ・・実花ちゃん・・ありがとう・・?・・で・・何か言った・・?」
彩子がそう言いながらコーヒーを一口飲んでいた。
「少し・・濃いね・・・」ママの一言に呆れて、言葉も出ない。
「なあ~に・・このおばさん達は・・・・!!」
「直ぐに あなたもこんなおばさんに成るのよ・・・直ぐに・・・」そのママの言葉に、益々機嫌が悪くなる実花であった。

「ママは・・・手伝いに来たの それとも暇つぶしに来たの・・どっち・・わたし部屋の片づけをしますから・・ど~ぞ
 ごゆっくり・御喋り・・なさってくださいませ・・・!!」
「おお~~怖~ァ・・」
後片付けに取りかかったのは、もう正午に近い時間で直ぐに昼食、そして又長い御喋りの時間である。
その長い御喋りは、実花の母である、美菜子が高校二年生の時 「轟 彩子・美菜子・美菜子の幼馴染の 「元村 剛」の三人が巻き起こした、平和で平凡な高校の創立以来の大事件を巻き起こした、その顛末である。










 


元野 敏
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元野 敏

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