大事件の足音

出入り禁止か許されてから、ツヨシが三日ぶりに部室に顔を出す。
部員達が ” ポカ~ン ”とした顔でツヨシを見ている。
「ちょつと・・・ツヨシ・・・出禁でしょう・・帰りなさい・・彩子先生が来ない間に・早く・・!」
「大丈夫だよ・・心配すんなよ・・・!・・」
「知らないよ・・叱られても・・・知ら~無い・・と・・・」
ツヨシは、みんなの顔を見ながらひとりひとり「ペコリ ペコリと頭を下げながらニコニコしている、部員達には、どうも納得いかない様で、美菜子とメガネ君は、部員達とは別の意味でツヨシの事を心配していた。 
そこへ彩子先生が入って来た。

「先生・・剛君が もう来てますけど・・・?」部員達が声を揃えて不満気に言った、うつむいて聞いていたのは美菜子とメガネ君の二人で、張本人の剛はと言うと平気な顔をして、誰の事なのかと言いたげで有った。
「はい・・静かにして・・ツヨシ君の出禁は 解除しました・・」
「エ~エ・・・!・・三日間ですよ 日曜日を外したら 二日間ですよ・・・!・・」
「君たち・・・無期限の出入り禁止と言う事は・・・無期限・・期限がないと言う事・・・判りますか・・・?」
美菜子が又、調子に乗るツヨシを睨み付けた、それを見て、静かに成るツヨシを見てメガネ君は、笑をこらえてた。

「剛君・・・十分反省して居る様です・・剛君・・反省しましたね・・・?」ツヨシは、美菜子の方を見ながら、
「ハイ・・十分反省しております・・ハイ・・・」一言、言うと、静かに座った。
部員の中には納得いかないと言う空気が流れていたのは事実である。
「はい・・静かにして・・いろいろな事が有り過ぎて わたし みんなの絵をまだ見ていません・・」いろいろな事が有り過ぎて、それはツヨシのせいだとみんなは判っている。
「だから みんな 自分の書きたい絵を描いて見せてください 一週間後の月曜日までに・・良いですか・・?」
「一週間後ですか・・・?・・・短すぎます・・・!」みんなそう思っていた。
「短いですか・・?・・今までに描いた絵で 気に入っている絵が有るでしょう・・それで良いのよ・・・」
「美術部員なんだから 今までに描いた絵が有るでしょう・・?」
昨日、ツヨシの絵を、彩子は見ているのだ、知らず知らずの内にツヨシに有利な条件を出している事に、未だ彩子は気付いていない。
美術部員としては、みんな其々自信のある絵は、有るには有ったのだ、メガネ君は別として、

「メガネ君は 大丈夫・・一週間で・・・?」美菜子がメガネ君を気使ってそう言うと、
「あ・あ・・・ありがとうございます・・・美菜子先輩・・・大丈夫です・・・ただ・・・・」何か気に成る事が有りそうだった。
「・・・何・・ですか・・?・・メガネ君・・・???」
「僕・・・絵は得意じゃ・・無いんです・・・と言うより・・下手なんです・・・?」それを聞いて女子部員の中に、
「大丈夫よ・・・美術部員の中にも ” ヘタックソ ” な人がいるし・・・!」ツヨシの事を指しているの有ろう、部員達のクスクス笑が聞こえた。

「わたしは 絵は 上手下手では 無いと思っています・・・上手下手ではなくそれは 個性だと思っています・・・」
「個性ですか・・・?」メガネ君が、その言葉を噛締める様に言った、部員達もその ” 個性 ” と言う言葉を噛締めていた。
ツヨシと美菜子は、その ” 個性 ” と言う言葉に教頭先生が美術部顧問で有った頃を思い出していた。
” 個性・個性 ”と 口癖の様に言っていた教頭先生は、ツヨシの ” 個性 ” を認めてくれる事が無かったのだ。
彩子先生の口から絵は上手下手では無く、個性だと言われても、にわかには信じられ無かった。

メガネ君は、その言葉に勇気付けられたようだった。
「先生・・・提案が有ります・・・コンテスト形式にしたらどうでしょうか・・・?」
「コンテスト 形式・・て・・どういう事・・・?」
「はい・・自分が好きな絵に 投票するんです・・・」 ” 個性 ” と言う物は 中々他人には理解できない事の方が多い 絵が選ばれ無くても、それで良いと言うので有る、其れも又 「一理」あった。
「ただし・・・個性だとは言っても・・・やっぱり・・ぼくの場合・・下手は・・下手ですから・・少し恥ずかしいです・」
「それなら・こうしたらどう・・?・・名前を書かずに 誰の絵か 判らない様に提出する・・」それなら、自分の絵は自分にしか判らないだろうと言うのだ、みんなが納得出来る提案では有った。

しかし、それでは彩子先生には、誰の絵であるか判らない事に成るのだが、話は益々別な目的に変わって行った。
彩子は、成り行きを部員達の自主性に任せた。
まとめた内容は、メガネ副部長が黒板に書いた。

一、絵には 無記名で提出する事。
一、提出された絵は 部長・副部長の二名で展示する事。
一、自分の好きな絵に投票の事 一人一票とする ただし (自分の絵に投票は可とする)。
一、彩子先生の投票も可とする(みんなと同じ一票とする)。
一、投票の多かった絵を ” 優秀賞 ”とする。
  以上。

「固いね~エ・・相変らず・・ネガネ君・・・」
「意見が有れば 先輩・・・手を挙げて・・・お願いします・・・」
「ファ~イ・・・議長・・・一つ提案有ります・・・・」
「何ですか・・・元村君・・・・」
「モトムラ君と 来ましたか・・・一番票数の多かった絵に対する ご褒美は無いのですか・・・?」
「ご褒美・・・それは・・・?・・」
「ファ~イ・・・議長・・・みんな一生けん命描いた絵に 一番に成っても ご褒美が無いんじゃ・・燃えないな~ァ・・」美菜子はツヨシを睨み付けて、メガネ君をかばおうと発言しようとした時、彩子先生が挙手をした。
「は・・ハイ・・先生・・?・・どうぞ・・・?」
「折角 票数を集めて・・?・・それで御終いと言うのも・・元村君の言う通り 寂しいかもね・・・」
「元村君は・・・ご褒美が有れば 真面目に絵を描くのね・・・?」
「それはもお・・一生懸命描きますよ・・・勿論・・・」
「そう・・では・・・元村君が一番だったとしたら 何をご褒美に貰いたいの・・・?」彩子は、これを機会にツヨシが真剣に絵を描いてくれるなら、美菜子の願いも叶うのだから、ご褒美目当てと不純では有るが良いチャンスに成ると思っていた。
だが、そのツヨシの望むご褒美は呆れたものだった。

「ぼくちゃんの欲しいご褒美は 彩子先生のヌードを描かせて貰う事ですかね~エ・・・・・」
この言葉に彩子は勿論、美菜子が顔色を変えて怒っていた。
部員一同「不純だとツヨシ」を攻め立てた。
騒然と成った、メガネ副部長の騒ぎを収めようと、大声を出している様だが収まる様子は無かった。
見かねた彩子が、激しく、手を叩き鳴らしながらみんなの前に進み出た。

「静かに・・・!!・・みんな・シ・ズ・カ・ニ・しなさい・・・!!!!」

大きな声で叫ぶと一応は静かに成った、そして、又、今度は彩子の言葉で騒然と成るので有る。
「みんな・・・聞いて・・・女性の裸を描きたいと思う事が何故不純なの・・・?」
「わたしは ごく自然の事だと思うけど・・・!」
「女性に対する憧れの気持ちだと思うけど・・・?」
どうしてこれ程、ムキに成ったのか彩子自身気が付か無かった、
女性のヌードが一番美しいと、美術授業で言った事が問題と成り、校長先生に注意され、教頭先鋭に嫌と言う程嫌味を言われたせいだろうか、そんな気持ちが彩子の気持ちを高ぶらせ意地に成ってしまったのかも知れない。
「ツヨシ君・・ツヨシ君の絵の 得票数が一番多かったら・・・良いでしょう・・・先生のヌードを描いて貰いましょう・」

先程のツヨシの発言の時より、騒ぎが大きく成った。 
「先生・・?・・正気・・ですか・・????」口々に叫んだ。
「正気です・・・でも・ツヨシ君が 一番に成るとは 限りませんからね・・・?」
「そうよ・・そうだね・・・元村君・・絵が下手だもの絶対 一位なんて無理よ・・むりだね・・・・」
「彩子先生・・・大丈夫ですよ・・元村君の絵が一番に成る訳が無い物・・・ね~みんな・・・・!」
みんな声を揃えて、一番には成れないと決めつけて笑っている。

「舐められたもんだね・・・ぼくちゃんの実力を 知らないいんだね~・・君たちは・・・?」
「その約束は 本当ですな~ァ・・彩子先生・・・?」
「大丈夫ですよ・・・・・絶対に・・元村君が一番なんて 有り得ませんから・・・」
そんなみんなの声に乗せられた訳では無いが、約束をしてしまう。
だが、彩子は前の日曜日、ツヨシの絵を見ているので、ツヨシが絵が上手だと言う事は判っていた。
画家志望の彩子は、美大授業で女性のヌードは勿論、男性のヌードも良く描いていたそれ程抵抗は無い。
だが、それは職業モデルの堂々とした、自身に満ちた態度から、そう思っているだけで自分がと成ると大きな違いが有る事をその時は気付いていなかった。

「では、ほかの人が 一番票数を集めたら・・好きな画家の画集をプレゼントします・・それで良いですか・・?」

美術部員に取っては、慌ただしい一週間だった、授業を受け、そして部活,、部活の時間に出品する絵を描く訳にもいかない
無記名で提出する意味が無く成るからである。
ツヨシが平然としているのは、以前見た美菜子のを描いた絵を出すのだなと彩子は思い、美菜子は自分の絵の事も気にしながら、ツヨシの事も心配していた。
メガネ君は、他人の事を考える様な余裕は無かった。
他の部員達も、他人を心配する余裕は無かったが、平然としているツヨシを見て、最初から絵を描く気が無いのだと思っていた。

瞬く間に一週間が過ぎて行き月曜の朝が来て、それぞれ ” そっと ”  美術室に自分の絵を置いて行った。
その絵を、休み時間の少しの時間を、美菜子とメガネ君とで美術室の掲示板に張って行った。

「みなさん・・凄く上手ですね~・・流石美術部員ですね・・・!!」一枚一枚感心しながら、美菜子に渡している。
「メガネ君・・・次の絵を早く渡して・・・時間が無いんだから・・・早く・・メガネ君・・・?」ネガネ君、数枚の絵を渡したところで、次の一枚に目を奪われ、渡そうとしない。
「メガネ君・・・?・・どうしたの・・・」脚立から降りて、その絵を見て美菜子も驚いた。
「こ・・これ・・・?・・誰の絵ですかね~え・・・?」
「誰の絵だろうって・・?・・それが解らない様に 無記名でって・・?・・メガネ君が言い出したんじゃないの・・・?」
「それは・・そうですけど・・この絵素敵ですよね~え・・・すごい絵だ・・・!!!」
その絵は、確かに素晴らしい絵であった、もうその絵に決まった様な気に成った、後は何か気が抜けてしまった。
最後に張った絵は、ネガネ君の絵だったが張るのも止めて欲しいと思った。

その放課後、何時もとは違い速く全員の顔が揃った。
展示されている絵が気に成り、授業の終わりを待ちかねて、授業に身が入らない部員もいた。
「ガヤガヤ」と「押すな押すな」と部室に入る、それ程多くは無い部員で有るが一度に全員が入ろうとすると一瞬では有るが混雑する、人気の有名画家の作品展の様だった。
部員達も、メガネ君の感激していた絵の前に集まり、目を奪われている様である。
「この絵・・・だれ・・ね・・誰よ・・・」と 顔を見合わせて騒いでいる。
溜息をつきながら見入っている女子部員もいた。

「さ~ァ・・みんな 席に着いて・・・!!・・」美菜子がみんなを席に座らせた、そこは彩子先生が入ってくる、彩子先生は、展示して有る絵の枚数が気に成るのか、絵を目で数えている様だったが、一枚の絵に目を止めながら、
「ハイ・・・部員全員提出したのね・・・関心・・関心・・・」彩子の本心は、ツヨシが提出するかを心配と言う程では無かったが、気にかけていた事は確かだった。

彩子が想像していた、ツヨシが描いていた美菜子の絵は無かった。
「美菜子の絵を描いていた事 内緒だよ・・・アイツ怒るから・・・怒ると コ・ワ・イ・よ~オ・・・」と 言っていたのは、満更冗談では無かった様だ。

「さてと・・みんな思う存分 良い絵に仕上がった・・自分の書きたい絵・・好きな絵が描けたかな~ア・・」
部員の中には「絵を描く時間が無かった」等の意見も有ったが、全員参加と成った事で ” 良し ”と 言う事に成った。
「それでは・・投票を始めます・・始めても良いですか・・・?・・先生・・?」美菜子が言った。
「そうね・・・始めて・・いい・・自分の好きな絵に投票するのよ・・・自分の絵でも 良い事に成ってるいるわね・・?」
「ハイ・・先生・・・規約では そうなっています・・・」
「・・・規約って・・・固すぎるよ・・・メガネ副部長・・・」ツヨシの言葉に投票前の雰囲気が和らいだ。

投票の結果は明らかだった、メガネ君が感心していた絵 部員みんなが見入っていた絵に、全ての票が集まったツヨシの一票を除いては。

女子部員の中には、ツヨシの入れた絵は誰もが失笑する様な下手な絵だったからで、ツヨシの部活で描いた絵しか知らないみんなは、ツヨシは自分の描いた絵に入れたのだと思っていた。

「見事に票がかたまったわね~エ・・・」彩子が、その絵に近ずいた絵は、彩子がキャンパスに向かい、絵筆の柄の先端を 唇に当て、鋭い視線をキャンバスに向けている絵だった。
彩子は美大でも、これ程の絵を描く学生は居なかったと、言うのが正直な感想で有った。
「先生・・・先生・・・」美菜子の呼びかける声に我に返った様だった。
彩子はその絵が、ツヨシの描いたものだと言う事は解っていた、その絵のタッチは、以前川沿いで見た、美菜子の絵の特徴は筆の運び、色の乗せ方等が、ツヨシの絵そのものだった。 
キャンバスを睨み付ける様な、彩子の表情と顔の緻密な描き方に対し、同体が省略して描いている様なツヨシ自身の人物画に対する、未熟さを表している様に思えた。
それは、ツヨシが、顔と同体が別人に成ると言っていた、その絵に対する悩みを、彩子がキャンパスを睨み付けている表情に、移し替えているのだと、思って見ていた。

再度、美菜子に投票を促されて、
「いや~ね~・・・これ・・・わたし・・?・・先生を描いて・・・良い点もらおう・・・と・・思ったのかな~ア・・?」
見入ってしまった、照れ隠しだった、それは 完全に ” 滑った ” 笑い声、一つ無く、静まりかえっていた。
「・・先生・・・も・・・先生も 投票を・・・お願いします・・・」メガネ君が、声を掛けたので彩子は救われた気がした。 

「先生の・・・一票は・・・50点・・・!!」急に、ツヨシが突然発言した。 
「先生も僕たちと同じ・・・一票ですよ・・・決めたじゃ~あ・・無いですか・・・」
「又・・・規約かよ~ヨ・・お前は固すぎるんだよ~・・・・!」
「固すぎると言われても~ォ・・みんなで決めた事じゃ~ア・・無いですか・・・」メガネ君、ツヨシに逆らうとは、大したものだとみんなが感心していたが、誰もそれに続く者はいなかった。
「一票か・・50点かは別にして 先生入れてください・・・・」美菜子が言う、
「そうね・・最初の規約・・・?・・通り・・先生も一票で 投票します・・?」
先生は美大卒自分たちとは、違う見方をするかも知れないと、みんな緊張気味で彩子の行く先きに、視線が集まっていた彩子は、既に投票をする絵は決めていたが一応みんなの手前と言うか、確認と言うか、先生と言う権威の為か、最初の絵から時間を掛けて見て行く、その間自分の絵の前に、彩子先生が立つと ” ドキドキ ” するものである、自信が無く ” 個性が強すぎ・・? ” だからと、最初から諦めているメガネ君も、みんなと同じ様にドキドキしていた。

全ての絵をしっかりと見て、彩子は自分を描いた絵に一票を入れた、自分が描かれている事に抵抗は無かった訳では無かっただが、この絵を外す事は出来なかった。

「では これで最優秀の絵が決まりました・・・5番めの絵を描いた人は 前に出てください・・・誰ですか・・?・」メガネ君の問いかけに応ずる者がいない。
「誰ですか・・・いない訳無いでしょう・・・?」何故か沈黙が続く、
「いない筈は無いけどな~あ・・・絵は全員提出してますから・・・・?」すると、突然ツヨシが立ち上がる、みんながまさかと言う様な顔をして ツヨシの 言葉を待った。

「それ・・・その絵は・・美菜子の絵です・・・・!」みんなは、その言葉に納得している様子だったが、当の美菜子は一瞬キョトンとして、何を言い出したのかと、ツヨシを見ていた、みんなが美菜子を見て拍手を送るが、ただ何事か、何でツヨシが自分の絵だと言ったのかも解らず、混乱している様だ。

「美菜子先輩・・・流石ですね・・・展示している時も・・誰のかな~ア・・なんて・・とぼけて にくいね~え・・・!」
美菜子は、ちょっと待ってと両手を差し出し、何か言おうとするとツヨシがそれを遮る様に、
「美菜子の絵だよ・・・俺は 美菜子の絵を良く知っている・・だから美菜子の絵だ・・間違いない・・・」矢継ぎ早に喋りまくる。
「俺に言わせれば・・・この絵は まだまだだねッ・・・顔と体に違和感が有る・・・別人の顔と体に見える・・・!」
その言葉は、美菜子の絵だと言い切るツヨシは墓穴を掘ってしまった、みんなは、
「何よ・・!!・・偉そうに・・自分の絵は ” へたくそ ”のくせに・・・」
「ホントよ・・!!・・良く言うはね~エ・・偉そうに・・・!・・」と非難轟轟で有る。
彩子だけは、そのツヨシの言葉にを納得して聞いていた、その言葉でツヨシの絵で有る事を確信した。

「あ~あ~ツ・・・一番は獲れ無かったか~あ・・・気が抜けた・・・俺は用事が出来たので・・・帰ります・・先生・・」
さっさと部室を出て言ってしまった、自分勝手なツヨシに非難の目が集まった。

美菜子はいたたまれず、
「その絵 わたしじゃ~あ・・有りません・・・・」
「エッ・・・美菜子先輩の絵では 無いんですか・・・・?」
「わたしの絵では 有りません・・・」
「じゃ~あ・・誰の絵・・だれの絵ですか・・・・?」
「ツヨシの絵です・・・・?」みんなは信じられ無い、この絵がツヨシの絵なら、今までのツヨシの絵は何なんだろうと思う まるで別人の絵としか見え無いからである。
「どお言う事かな~ァ・・・?」みんなが理解できない。
一番、投票数が多いのに、どうしてツヨシは美菜子の絵だと言ったのだろうか沈黙が続く、

メガネ君がその沈黙を破り、 
「ツヨシ先輩は きっと 自分が一番に成ると 彩子先生とみんなに 迷惑が掛かる・・と思ったのだと思います・・・?」
どういう事なのか、もう十分みんなには迷惑をかけているのに、今更迷惑も無いものだと思う、それは迷惑の度合いが違う。
「もし ツヨシ先輩が 一番だと認める事は 先生・・の ヌードを描く事に成るでしょう・・・?」
「それは 問題に成るに決まっているでは無いですか・・?」
「彩子先生が モデルに成る事を断れば 先生が約束を破る事に成る」
授業で、彩子が「女性の裸身が 最も美しい」言った事でも大騒ぎに成ったのだ。
美術部の内輪のコンテストで、優勝した男子部員に、その賞として先生のヌードを描かせたと言う事に成れば、問題に成る事は確実である。

「でも・・?・・ツヨシ君が そんな事まで 考えるかしら・・今まで散々迷惑かけたのに・・?」女子部員みんなの思いだった。
「ツヨシ先輩の絵なら 下手だから 大丈夫だよ・・と彩子先生に、その約束をけしかけた、僕らにも責任が有る・・」
「嗾けた 訳では無いわ~・・・」女子部員が言葉を荒げて行ったが、確かにみんなにも責任が無い訳でも無い。
「ぼくは、推理小説が好きだから、ツヨシ先輩の言動を推理してみると・・・?そうとしか思えないですよ??・」

メガネくんの推理とは。
ツヨシは何故自分の絵を 美菜子の絵だと言ったのか・・? 自分の絵が一番に成らない様な言動は、自分の絵に投票が集まり、先生が投票すると言う時、突然 「先生の一票は 五十点にしよう」と言った事、事前に先生もみんなと同じ、一票でと決まっていたのにそれは。
「ツヨシ先輩の絵は 彩子先生を描いた物です 自分を描いた絵には 投票しないだろうと とつさに無い知恵を絞ったので す・・・ 先輩は・・・他の絵に先生が投票すれば・・その絵が50点で一番に成る・・一番に成ったら ツヨシ先輩の絵 が 二番目 で 先生の約束は 無かった事に成る・・」

「メガネ君・・・先輩に対して・・無い知恵を絞って・・・・失礼でしょう・・・・!」と美菜子が立ち上がり、強い口調で抗議したがみんなの笑いを誘ってしまった。
「そこは問題じゃ~無いでしょう・・・今は・・・?」彩子先生の一言に、美菜子は、気まずそうに、席に座る。
「・・・すいません・・・言い過ぎました・・・」
「じゃ~あ・・何故 わたしの絵だと言ったの・・・?」
「それは ツヨシ先輩と美菜子先輩の中なら・・解ってもらえる と思ったのでは無いでしょうか・・・?」
「わたしなら・・?・・ツヨシにそこまで頭が回らないわよ・・・バカなんだから・・・・?」
「それに あたしとツヨシの中・・て・・どういう事よ・・・!」と言いながら、悪い気はしていない様だ。

「美菜子先輩・・・ぼくが無い知恵をと言ったら・・おこりましたよね・・それがツヨシ先輩と美菜子先輩の中と言う事です よ・・・」
美菜子に返す言葉が無く頬を少し赤く染まった、二度目の失言である。
それ程、美菜子は動揺していた。

「自分の絵でも無い物を 優勝だと言われても・・プライドが傷つくわ・・!」
その言葉を聞いて、とっさに、と言うより、うっかり、
「私もモデルに成る事を拒否された様で ・・・プライドに傷が着くわよ・・・・・?」彩子の言葉に、全員がキョトンとして彩子先生に視線が集まった、本音が出てしまったのかも知れない。

「何ですか・・それ・・・解ら無いな~ア・・・女心は・・・?」
「とにかく・・・ツヨシ先輩は 迷惑にならない様に 嘘を着いたのだと思います・・それに 顔と体のバランスが悪いとか なんとか・・・訳のの解らない事を言って・・・ケチをつけていたし・・・」

「それは・・・本当に 美菜子の絵だから 悔しかったのでは無いの・・・だって・・自分の下手な絵に 自分で一票入れて たでしょう・・・」
「その下手な絵・・ぼくの絵です・・・・」その言葉に、女子部員の一人が慌てて、ネガネ君に誤っていた。
「ぼくは嬉しかったです・・・誰も気にかけてくれなかった ぼくの絵を じつと見つめて 真剣な目をして投票してくれたんですから・・ぼくは嬉しかったです」

「とにかく ツヨシは 一位を辞退したものとみなします・・・それでは もう一度 投票しなおしますか・・・?」
美菜子部長の提案だったが、女子部員の中には、次点のメガネ君が今回の最優秀賞にすれば良いのでは、と言う意見が多くその理由として、最優秀賞を辞退した、ツヨシが一票を入れたと言う事、それはこれ程みんなが認める素晴らしい絵を描く、ツヨシが認めた絵なら、きっと何かを訴える物が有るに違いないとの事だった。

「わたしもツヨシ君が メガネ君のその絵を ” じ~っと ” 見ている真剣な顔を見ました 「わたしも見た・・」「わたしも・・・」と言う声に彩子先生が、
「それじゃあ~ア・・・メガネ君の絵を 最優秀賞とします・・メガネ君・・好き画家の画集を進呈します・・・」
「僕ですか・・・ぼくの絵で良いのですか・・・?」

後日、美菜子がツヨシに聞いてみた「メガネ君の絵・・・どこが良かったの・・・?」ツヨシは暫く宙を見つめて。
「何処を見ても・・・・良い処は無かった・・・だが・・一生懸命描いている 姿が浮かんだ・・・そこかな~ァ・・・」

美菜子は何か嬉しかった、みんながツヨシの事を認め始めたのだと思えたからだ。











元野 敏
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元野 敏

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