” 裸の王様 ”作戦

彩子の下宿に男子生徒が出入りしている、そんな噂が出始めた。
その高校生が、ツヨシで有る事も直ぐに噂に上がった。
若い女教師と高校生、そんな危険な匂いのする邪推が邪推を生み、一気に広まったのである。

噂と言うものは、いつの間にか、尾ヒレ・尻ビレが付く、ある朝、ツヨシが、彩子の下宿に入ったのを見た者と、何日か経ち夕方、ツヨシが帰った、そんな話が一緒に成って、” 女教師が男子高校生の同棲している・・らしい・・?? ” が、” 同棲している ” と言う話に成っていく、噂はどんどん大きく、怪しげな方向に、広がって行く。
噂を立てる者に罪悪感と言うものは無い、只々興味本位か、羨ましさから ” ゲス ” な思考を駆使して話が、組み立てられる。

そんな噂は、小さなこの町に広がるのに差ほどの時間は掛からず、学校では噂の真偽を確かめる電話や、真意を確かめる事もせず、頭ごなしに、怒鳴り付ける電話等、教頭先生以下教師全員が対応に追われていた。
校長先生は、関知してい無い訳では無く、直接学校に押しかけて来る、教育に熱心な・・?・・保護者の対応に当たっている。

彩子やツヨシに対する、風当りも相当なものであ有ったがツヨシは我関せず、その態度が余計にみんなの気持ちを逆撫でしている様である。
噂を更に大きくして流す者は、後ろ指をさして、ヒソヒソ話をする、直接話掛ければ、誤解も解けるのだが、噂を流す者達に確かめる者はいない。
だが満更、全てが作り話では無い、彩子の下宿に、ツヨシが通っていた事は確かな事実、二~三日の話である。

そんなツヨシを、案じている者は、美菜子とメガネの二人と、彩子だけの様だった。
彩子自身も批判にさらされていたが、自分の事よりツヨシが退学にでも成ればと、その事の方が気がかりであった。

早い内に対処しなければと、職員会の開催が決まった、その事も又噂と成り、保護者会の代表も出席を求めて来た。
校長先生は、内々で処置するより、その方が良いのではとの判断された。

職員会の開かれる日は、授業は生徒も先生も、集中力を欠いた時間か過ぎていた。
その日の16時から始まった、調査委員会は教頭先生の司会進行で始まった。
保護者の代表・教育委員会・教職員、それに、本校出身の画家、神河 竜二郎、画伯は、本校に入学すると同時に、美術部を創設した人物であり、校長先生とは同級生の間柄で、校長が要請したのか、美大の教授だった頃の教え子である、彩子の一大事と駆けつけたのかは、定かでは無いが、言わば自分の創設した美術部の不祥事で、その責任を感じての出席だと理由はどうでも付けれる。

教頭先生の内容の説明の中には、” 破廉恥な事件 ” ” 有るまじき行為 ”と言った、先入観を持たせるような言葉に対して、その都度、校長先生から訂正をする発言が有った。

説明が終わると同時に、彩子先生の退職とツヨシの退学を望む発言がが有り、特に保護者代表は声を揃え言葉を荒げた。
「この会議の目的は 噂が事実であるかどうか 事実で有ればその経緯を精査する事にあり 退職 退学を論じるには軽率すぎるのでは無いでしょうか・・・?」校長先生の、冷静さを求める発言に対し、自分の発言に何度も、訂正を命じられた教頭先生は。
「本校の名誉の為 この様な破廉恥な事件には、厳罰で臨むべし・・・!!」保護者代表の意見に賛同した。
「みなさん・・未だ、この噂が事実で有るかも解らない時点で 厳罰を論じるべきでは無いのでは 無いでしょうか・・?」
「校長は この破廉恥極まりない 教師と生徒の肩を持ちすぎている様だ・・!!・・話に成らん・・!!」
大部分の出席者が、同じ見解の様で有った。

「事実を知る為に 轟先生にも出席をお願いしておりますので 直接質問したいと思いますが・・・」
「当然だ・・校長の言う 真実を知る為にも本人い聞かなくては 本当の事は解らんからな・・・!!」
「ご出席のみなさんには言うまでも無い事と思いますが・・此処は教育も場で有る事 十分にご理解の上でのご質問をお  願いいたします 」
そんな校長先生の言葉が果たして、通用するのだろうか彩子が呼ばれて、会議室に入って来た。

「ほ~~ォ・・・この先生か・・・??」興味本位に、ジロジロと眺める保護者もいた。
彩子は、まるで興味本位に集まった人達にその身をさらしている様な思い出有ったが、正にその通りで有る。
この興味本位の人達には、恐らく何を言っても通じ無いだろう、何か虚しいものを感じていた。

「担当直入に訪ねます・・?・先生の下宿に教え子を招き入れた・・・?・・それは事実ですか・・・?」
「はい・・事実です・・・」
「事実でしたか・・・先生が招き入れた生徒は・・・男子ですか・・・?」
「はい・・男子生徒です・・・・」
「何日・・何時から何時まで、男子生徒と同じ部屋にいたのですか・・・?」
「朝・・九時か十時頃から・・四時か五時頃まで・・」
「何日間 続きましたか・・・・」
「二日間です・・・」
「二日間・・?・・噂は毎日少なくとも一週間・・毎日と聞いていますが・・二日で間違い無いですか・・・?」
「二日間です・・・噂が何週間で有ろうと・・わたしは二日間としか 言いようが有りません・・・!」
まるで刑事事件の裁判の様な始まりだった。

見かねた校長先生が、
「日にちが問題では無く どの様な理由が有ったのか・・それを話して下さい どんな訳が有ったのですか・・・?」
「彼の絵に対する 才能を 伸ばしてやりたかった・・・そんな気持ちが有ったのでは・・・?」校長が彩子を弁護する。
「あの~・・・才能を伸ばす事を考えるのは・・我々野球部も同じです・・・投手は投手の打者は打者の才能を磨く為 サッ カー部で有ろうと 陸上部で有ろうと運動部では 個人指導は当たり前の事ですが・・・?」
美術部と体育系の違いは有っても、他人を育てると言う意味では同じ思いで接している。
そんな思いで、はっ減をしてくれたのだが。

「それは グラウンドでの事でしょう・・!!・・部屋の中で・・男女が・・・訳が違うでしょう・・!!」教頭のこの言葉に、野球部監督をはじめ運動部の顧問の先生方は。
「確かに・・・・・!・・」と 黙りこんでしまう。

「わたしの絵を 描いて欲しかったからです・・・」
「先生の絵をですか・・・?・・描いて欲しかった・・?・・わからんな~ぁ・・?・・顧問を轟先生に代わるまで この私 が顧問でしたが 彼の絵は幼児でも描ける様な絵だった 描いて欲しいと思う程上手でも無く 絵を描く事が好きだとも思え無かった それに わたしに対する態度は極めて無礼なものでした」
教頭のこの言葉は、彩子の ” 描いて欲しかった ” と言う言葉を、否定してしまった。
「まして ヌードを描いて貰いたい等と 破廉恥・・いや・教育者として有るまじき行為では無いですか・・・・!」
「ヌードでは・・・有りません・・・」彩子は、思わず嘘を付いてしまう。
この噂の責任は、教師である自分だけで良い、ツヨシを退学にさせたくない、その一心で有った。
その彩子の気持ちを理解する者は無い、参加者の彩子に送る視線は、冷ややかで軽蔑そのものだった。

才能が無いと決めつける、教頭に彩子の負けず嫌いの性格に火をつけた。
「教頭先生には 彼の才能が見抜けなかったのですか 何故 教頭先生が美術部顧問だった頃彼がその才能を押し殺してし まったのかを考えた事が有るのでしょうか・・?・・わたしの方から お尋ねします・・・!」
教頭は、教師失格と言う様なこの事だに、机を拳でたたくと同時に立ち上がった。

その時、会議室のドアが開き険悪な状況の中に、ツヨシが美菜子と一緒に入って来た、一緒にと言うより美菜子は、ツヨシの腕を引っ張りながら入って来た、美菜子はツヨシを止めていたのだが、ツヨシの勢いに負けて引きずられ一緒に付いて来てしまった様だった。
一瞬場内が静まり返った。

「君は・・・君達の来る場所では無い・・出て行きなさい 呼びもしないのに 出て行きなさい・・・!!」
教頭が怒鳴り、出席者も、” 何だ・・コイツラ・・? ” と言いたげだった。

「呼びもしないのに・・て・・確かに呼ばれてませんよ・・・教頭先生・・・」
「だけと 張本人で有る 噂の男子高校生が 出席しないと始まらないでしょう・・・この会議・・?」
太太しい態度だった、美菜子が掴んでいるツヨシの腕を引っ張り、制止しようとするのだが、校長先生に発言を許可して欲しいと願い出る。

「良いでしょう・・本人の希望なら 拒む必要は無いでしょう・・・言いたいことが有るのなら 言いなさい・・・」
「ただし 言葉使いに気を付けなさい・・・良いですか・・・」
校長先生は、優しい笑みを浮かべながら、諭すようにツヨシの発言を許可した。

「今 噂で問題の絵を持って来た・・来ました・・これを見てから マルかバツか決めてくれ・・決めて下さい・・・」
彩子をモデルにした絵お持って来た、それを聞いた彩子の表情は ” 万事休す ”と言った表情をしていた。
これで、ヌードでは無いと言い切った、彩子の嘘がばれてしまう。

ツヨシが、風呂敷に包んだ絵を、机の上に置き、結び目に手を掛けて、解くかと思うと、結び目から手を放し、
「この絵を見る前に言っておく事が有ります・・・・」イライラしている、教頭を始めとする出席者対する、フェイント掛けられた様に思えた、教頭先生の ” イライラ ” は、頂点に達した。
「早くその絵を見せなさい・・・!!・・・皆さんをからかうような事は・・・辞めなさい・・・!!」
そして又、ツヨシの言葉は、教頭の気持ちを逆撫でした。

「カラカウ心算は有りませんよ・・・見る前に言いたい事は・・この絵は ” 下衆な者 ” には 見えません・・・」 
「も・・もお・・良い出て行きなさい・・・・何と言う無礼な 無礼な態度だ・・・・!!!」
彩子の表情が、益々暗くなった。
彩子は、ツヨシが退学に成る事を恐れていた、悪くても停学で収まる様に、自分は退職してもそれだけは避けたかった。
しかし、ツヨシの態度は、それを許さないかも知れない、気が気では無かった。

会場がざわつき、収集が着かない状態の中、今まで何一つ発言しなかった、神河 龍三郎画伯が立ち上がり。
「面白いね~・・・是非ともその絵が見たくなった・??・・わたしが ” ゲス ” かどうか・・・・?」
「・・・” ゲス ” には見えない絵か・・?・・」
笑みを浮かべて、ツヨシの傍に歩み寄る、その姿は迫力が有りさすがのツヨシをも、ビビらせた。
画伯は、さらに ” 下衆 ”と言う者は、下衆い ” 目を持ち・耳を持ち・口を持つ ” 色眼鏡で物を観て、根も葉もない事を聞き、それに輪を掛けて、他人に話すもの、もしも自分だったら、こうするだろうと邪推する、この場合、轟先生が自分だったら、教え子を部屋に誘い、善からぬ事をと邪推する、それは自分自身が ” 下衆 ” だから、下衆には下衆の考えか出来ない、と言ってのけた。

会場は静まり返り、誰一人として反論する者は無いばかりか、心あたりが有るのであろう、下をむいている者もいる。
「皆さん 絵を見せて貰おうでは無いですか・・・?」校長先生が、ツヨシの目を見て合図した、ツヨシは軽くうなずきながら、風呂敷の結び目を解き始める、ただ、彩子だけは、会場のみんなとは、違った意味で緊張していた。
美菜子の顔もこわばっていた、会議室に入るのを止めようとして、腕を掴んだが、ツヨシの力に引きずられる様に入って来てから、初めてツヨシの腕から手を放した。

風呂敷の結び目を、解くのに手間どったが、ワザとでは無く、ツヨシの手も少し震えている様だった、美菜子が見かねて手伝おうと手を伸ばしかけた時、絵が現れた、確かに彩子がモデルのその絵を見て、何故か美菜子の重かった気持ちが一気に軽くなつた。
その絵を会場の全員が見て、 ” おお~ォ ” ” ああ~ァ ”と 溜息の様な声を出して見入っていた。
” 万事休す ” そう思っていた彩子も、会場がざわつくものと思っていたが、静まりかえっている事に、” 何故 ” と思いながら、恐る恐る絵を見るのだった。

やはり言葉を掛けるのは、神河 画伯で有った。
「どうやら・・・わたしは ” 下衆 ” では無かった様だ・・・・!!」
「下衆には見えない絵 つまり、下衆にはこの絵の良さが解らない・・?・・そういう意味だったのか・・?」
「素晴らしい・・素晴らしい絵だと思います・・・わたしには・・・この様な絵は描けない・・・!」
「純粋で モデルの思いを素直に描いている・・少なくとも この絵を見て 不愉快に成る人は 居ないと思いますよ 」
「どうですか 教頭先生・・・皆さん・・・・??」教頭も教育委員も保護者代表も無言で有った。
勿論、プロの神河画伯が褒めるこの絵を貶すものはいないだろうし、確かに噂の様な不純と思える絵では無く、誰が見ても、素晴らしい絵で有った。

白いブラウスを着た、彩子の肖像画であつた、そのモデルの表情からは、下世話な事を想像する事の出来無い程、モデルの表情は、優しく、純粋そのものだった。
一気に会場の雰囲気を変えてしまった、この絵は、それだけの力のある絵だった事は間違いは無かった。
長い沈黙が続いた。

「どうでしょうか・・・?・・どなたか 未だ噂を信じ 二人に罰を望まれますか・・?」
校長先生の言葉に、反論する者は、誰もいない。
「では この件に着いては 校長である私に、一任頂けますか・・・?」
「意義は無いようですので 轟先生には 本校校長として、厳重注意 処分と致します」
「本校生徒 元村 剛君には 今後の高校生活に悔いの無いように・・・解りましたね・・・」
「それでは これで散会いたします お忙しい中ご出席頂き 貴重なご意見を賜りまして 真にありがとうございました 」
  
職員会議は、校長先生の計らいも有り円く収まった。
彩子は会議室を後にする、出席者全員に頭を下げ最後に成った。
神河 龍三郎画伯は、教え子で有る彩子に軽く手で合図を送り、会議室を出た。

神河 龍三郎画伯の後を追いかけた彩子は、今日出席してくれた、恩師で有る画伯に感謝の気持ちと、聞きたい事が有り、神河画伯を追いかけた。
神河も、その事を気付いているかの様に、窓から見える校庭を眺めながら、ゆっくりと歩いていた。
「先生・・・今日は・・・今日は、ありがとうございました・・・・!」声を掛けると神河は、彩子の顔を見る事無く。
「少しも、変わらないな~あ・・!!」校庭を暫く懐かしそうに眺めている。
「アッ・・・彩子君の事では無い・・・この学校の事・・・・」
「君は・・立派に先生に成っている・・あの男子生徒を守ろうと必死だったよ・・・だが・・・ちょっと苦しかったな・・」
彩子がその事に触れようとすると。
「あの男子生徒の絵は、本当に素晴らしい絵だ・・・プロのわたしが、プロのモデルを描いても、あれだけの絵は
  描け無いだろう・・・・!・・勿論未熟さは有るが・・・・!」
「一つ、教えて頂けますか・・?・・・」画伯を追いかけた、もう一つの訳は、そのツヨシの描いた絵の事だった。
「何を教えれば良いのかね・・?・・」
「はい・・あの絵は、顔と体は、同じ人物の絵でしょうか・・?」それは、ツヨシが自分の絵をそう批判していたからだった。
「・・・気味の悪い事をいうね~・・・?・・顔と体が同じ人物か・・・?・・」
「どういう事か解らないが・・?・・違和感は無い・・・彩子君そのものだ・・・」そう言われて、緊張した彩子の表情が、笑顔に変わった。

プロの画家である神河と、プロのモデルを描いても、ツヨシの様なあの絵は描けない、と言った意味を、技術的には、まだまだ未熟な点が多々有る、そう前置きして話始めた。
プロ同士の画家とモデルが向き合っても、あのような絵は描けない、それは、ツヨシが描いた肖像画のモデルの表情で有る。
何処か不安気で、どこか恥ずかし気で、その顔は、ほんのりと赤味が差し、それでいて描き手に向ける視線には、慈悲にも似た、温かい眼差しを感じたと言う。
「まるで ” ビーナス ” が、恋人を見詰める様な・・・・・??・・」
「言い換えれば あの絵を見ている者に対する、ヴィーナスの恋しげな視線・・・あれは・・みんなを黙らせる 魔力が有る・」
「ほめ過ぎ・・ほめ過ぎ・・・・・?・・」神河画伯が、笑いながら 彩子の顔を見て。
「ヴィーナスの事だよ・・・あの絵の事だよ・・・?・・彩子君が・・赤く成る事は無いじゃ無いのか・?・ハッハッハ・・」
「でも・・・高校生ですよ・・・年下ですよ・・・そんな・・・恋人を見る目・・だなんて・・」
「歳なんて関係ないよ・・・関係ない・・・」
「そうそう あの絵に違和感は 無いか・・?・・と言う、質問だったね・・・?」
「それは あの高校生の絵に対しての悩みだね・・・?」

昔の有名な画家でも、「トラ」を描いた掛け軸で、まるで猫を描いたようなものが有る、どんなに有名な画家でも、トラを見た事が無く、人の話を聞いて、トラは猫を大きくした様だと聞いただけでは、本当のトラは描けない。
トラの骨格、筋肉の付き方、毛並、そして肝心な顔、目・口・トラが吠えた時の迫力を観察して描いた、トラは真さに生き生きとした絵に成る。
「多分・・彩子君のヌードを見て描いた、だから・・あの絵に・・他人の・・?・・と言う違和感は無いのだろう・・?」
「彩子君は ヌードでは無いと言い張っていたが・・あの男子を 守る為だったのだろう・・・?」
「わたしは プロだよ・・プロには解るね・・それくらいの事は・・・」恩師には、全てお観通しだった。
「でも何故・・・服を・・ブラウス 描き足したのでしょうか・・・?・・」確かに、描いている時、絵具が乾くまで彩子の部屋に有った時には、裸婦画だった。
何か恥ずかしい様な、照れくさい様な、変な気分だった。
「それは・・・あの高校生の ” おとこ ” が出たのだろうな~・・・彩子君の裸を 他の人の目にさらしたく無かったの だろう・・・そこが未熟なところで・・残念なところだな・・・?」と、半ば冗談交じりの言葉に、彩子にはそのツヨシの気持ちは、嬉しかった。
「わたしが あの絵の題名をつけるとしたら・・・ブラウスを着た ヴィーナス・・・だろうか・・・?」

「ありがとうございました・・・!」彩子は、それ以上、恩師である神河と居ると、どんな事を指摘されるか解らないと思い
別れようとしたが、それも見通されて居る様に。
「校長に誘われているんだが 彩子君も校長室で コーヒーでも頂かないか・・・?・・」
「・・!・・い・いいえ 折角ですが・・帰ります・・・・!・・・」
「そうか・・・?・・残念だな~・・・・・・・!・・」と 窓から見える校門を指差した。
彩子は、深々と頭を下げ、走る様に校舎を離れた。

フウフウ言いながら、校門で待っていたツヨシに駆け寄った。
「そんなに 慌て帰る事無いよ・・・?」
「待っていたでしょう・・・?・・・」息を整えながら、彩子が言ったが、
「別に・・・待ってた・・訳じゃ無いよ・・・」
「美奈ちゃんは・・・美菜子さんは一緒じゃあ~無いの・・・?」
「美菜子は 駅前のお好み屋で待ってる・・・」
「そう・・あの絵はどうしたの・・・?」
「美菜子が持って行った・・・?・・アイツ・・変なんだよな~ァ・・・今まで ” ツンケン ” してたのに・・?」
「そう・・?・・今日 元の美奈ちゃんに戻ったのか~ア・・・?・・心配してたのよ きっと 美菜子さん・・??」
確かに、ツヨシの絵を見てからだろうか、機嫌が良く成った事に、間違いは無かった。

「オドロキ先生も・・・お好み屋に行こうか・・・・?・・メガネも待ってるし・・・」
「ありがとう・・・出も止めておくは又噂に成ると・・・?・・困るから・・・」
「そうか~ァ・・・解った・・・じゃ~・・・」立ち去ろうとして数歩歩き、思い出した様に彩子の元に駈け寄ると、カバンの中からスケッチブックを取り出し。
「これ・・・オドロキに返す・・・」。
「オドロキに返す・・・?・・どう言う事よ・・??・・」
返すと言うが、スケッチブックを貸した覚えが無い、それに ” オドロキ ” とは、先生を省いたのか、走り去るツヨシの後ろ姿を見送り、首を傾げた。
返すと言う、スケッチブックを何気無く開いて、その瞬間彩子の顔が真っ赤に染まった。
顔から ” 火 ” が出るとは正にこの事である。
それは、全てのページには、あらゆるポーズをした、彩子のヌードのデッサンだった。




元野 敏
この作品の作者

元野 敏

作品目次
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